IF タフネス ~タフなわたしは悲観しない~ 5

「俺は今日一日砦へ出向なんだが……おまえはどうする?」


「どうって……砦でなにかあるんですか?」


「今日は一年に一度の闘技大会だ」


 毎年グルノール砦で行われる、黒騎士たちの昇給試験のような大会らしい。

 闘技大会というだけあって、不慮の事故や怪我もあるので、毎年三人ほどセドヴァラ教会の薬師が出向しているそうで、今年はジャスパーが行くことになったのだとか。

 

 本来学者であるジャスパーが出稼ぎのようにグルノール砦へと行くのは、私を引き取ったからだ。

 独り身であればセドヴァラ教会内に部屋が用意されて、そこで生活をしながら研究ができるのだが、私という被保護者を持ったことでセドヴァラ教会の外に部屋を借りることになった。

 その余計にかかるようになった生活費を稼ぐために、以前は一日中研究をしていたセドヴァラ教会内でも、薬師としての仕事もしているのだとか。

 

 こんなジャスパーの事情を知っているので、私の答えとしてはひとつだ。

 

「わたしはいつも通りですね。ここで内職の仕事アルバイトです」


 メンヒシュミ教会へ通うのは、二日に一回。

 それも半日だけだ。

 次の授業までは一日半やることがないので、子どもでも働ける仕事をしている。

 

 具体的に言うと、セドヴァラ教会内で雑多な仕事をさせてもらっていた。

 もちろん、薬になど素人が、それも子どもが手を出すわけにはいかないので、私に振られる仕事は、誰にでもできる簡単な仕事だけだ。

 昨日の仕事は秋から作られるのど飴用のハーブの収穫作業で、今日はおそらく石鹸の個別包装作業だと思う。

 そろそろ乾燥させていた石鹸が完成する、と昨日誰かが言っていた。

 

 セドヴァラ教会内で作られた石ブロックサイズの石鹸を十等分にし、一つひとつ紙で包む。

 まだこれでも大きなサイズだと思うのだが、ここではこの大きさが基本の石鹸サイズだ。

 もっと小さい方が使いやすい気がするのだが、使いやすさを求めるのはセドヴァラ教会の仕事ではない。

 色や香りをつけても売れるのでは? と言ったら、そういう商売っ気は商人がすることだ、と石鹸を切りながら薬師が教えてくれた。

 セドヴァラ教会の石鹸は実用性重視かつ、貧民でも買うことができるよう値段を抑えるため、色や香りを故意につけることはしないのだ、と。

 

 チマチマとした仕事の給金を、せめて生活費の足しに、とジャスパーへと渡す。

 そうすると、ジャスパーは給金を小さなツボの中に入れ、それをまた私へと返してくる。


 子どもが生活費など気にするな。

 自分の稼いだ金は、自分のために貯めておけ、と。


 さすがにおんぶに抱っこすぎる、と文句をいうと、養父ちちなのだから、養子の生活に費用を出すことなど当然だ、と普段は嫌がる『養父』という肩書きを出してくるのだから、ジャスパーもだいぶ私に絆されてきた。

 こうやって私たちは家族になっていくのだろう。

 

 家族といえば、ロイネとテオと歩いていたら、親子に間違われた。

 それだけならちょっとむず痒い勘違いと流したが、二つ下のテオと双子と間違われた。

 これは少し許せなかったので、発言者の足を踏んでやったら、テオの実父だったようだ。

 

 ロイネといろいろあって、その後復縁した。

 

 これでロイネ親子とはお別れかと思ったら、父親がロイネの部屋に住み着くことになったようだ。

 テオとセットで、私にまで父親風を吹かせてくるのがくすぐったい。

 夫が父親風を吹かせるということは、ロイネは私の母親か、と突っこんだら、ロイネはとっくにそのつもりだったようだ。


 私には知らないうちに二人目の母がいたらしい。


 ありがたいことだが、黒騎士三人組まで父親を自称し始めたのは若干暑苦しかった。

 

 

 

 

 

 

 収穫祭が近づくある日。

 いつものようにセドヴァラ教会へと出勤しようとドアを開けたら、どこから入り込んだのか黒い犬がいた。

 ぴったりと私のあとを付いて歩く黒犬に、犬を拾ってきたのか、と私が大家さんに怒られた。

 解せぬ。

 

 追い払っても、追い払っても戻ってくる黒犬に、いつも誰かは必ず部屋にいる黒騎士に相談したら、迷い犬として砦で保護してくれることになった――のはいいのだが、いつもあとをつけて来る黒犬が、黒騎士が捕まえようと集まってきた時に限って姿を隠す。

 これは偶然というよりは、解っていて隠れているのだろう。

 諦めた黒騎士が解散するとまた姿を現すところが憎らしい。

 

 大家さんの誤解は、いつの間にか解けた。


 というよりも、締め出しても毎日のようにどこかからか侵入して私の部屋の前で座っている黒犬に、大家さんの方が絆された。

 黒犬の忠犬っぷりにコロッといったようだ。


 その場を発見した私は驚いて固まってしまったのだが、大家さんが黒犬にお肉の塊をあげているのを見てしまった。

 それも、滅多に見せないようなすごい笑顔で、だ。


 完全に私の怒られ損である。


 大家さんは犬好きだったようだ。

 怒られた私としては納得がいかなかったが、大家さんもこれについては自覚があったようで、砂糖の載った甘いパンをくれたので、この件は水に流しておく。

 甘いパンは正義だ。

 

 収穫祭は美味しかった。

 夜はワーズ病犠牲者のための慰霊祭があるということでジャスパーは今回も一緒に祭りを回れなかったが、アパートの子どもたちと一緒に回ったので寂しくはない。


 美味しかったのは、黒騎士三人組の一人が保護者として同行し、いろいろと奢ってくれたからだ。

 黒騎士は稼ぎが良い、と事前にロイネから聞いていたので、ここぞとばかりに奢ってもらった。

 ジャスパーからも遠慮なく奢ってもらえ、と誘導されたので、お持ち帰り用に焼き栗をポケットいっぱいになるまで買ってもらった。

 普段は手を出さない嫌なにおいの串焼きも、他者ひとの財布と思えば挑戦できる。

 苦手なにおいの串焼きは、やはり苦手な味がした。

 

 夜はジャスパーに誘われて慰霊祭に参加する。

 ワーズ病の犠牲者たちの安らかな眠りを祈る、鎮魂の祭祀だ。


 死の神ウアクスの司祭が祭祀を行い、魂鎮たましずめのと呼ばれる犠牲者の名前の書かれた蝋燭に火を灯し、それが消えるまで一晩中見守る。

 私は以前からのグルノールの街の住民ではないが、参加していいのか、と聞いたら、グルノールの街がどうのというよりも、今回のワーズ病で死んだ人たちをまとめて送ることが目的なのだそうだ。

 だから、ワーズ病で両親が死んだ私も、慰霊祭には参加資格があるのだ、と。

 

 個人用よりも一回り大きな魂鎮めの灯を司祭様から受け取り、メイユ村みんなの鎮魂を祈る。

 個人用の魂鎮めの灯には、私の両親の名とダルトワ夫妻の名を書いて、ジャスパーと一緒に見送った。


 この国の葬送スタイルは、故人を偲びつつの宴会だ。

 賑やかに騒いで見送ろう、ということらしい。


 魂鎮めの灯を囲んで故人との思い出を語るものらしいのだが、見送るのは私とジャスパーである。

 ほとんど私が両親とダルトワ夫妻との思い出を語っていた。

 

 ……そして驚くべき事実が判明。

 

 さすがに私ばかりに語らせるのも、と途中からジャスパーも気になったのだろう。

 普段はあまりメイユ村でのことは聞かせてくれないのだが、今夜は違った。

 今夜のジャスパーは子ども時代の話を少し洩らし、結果として、あの村長の身内であることが判明した。

 

 ……そら、村に寄り付かないよね。自分の父親が幼馴染を売ったとか。

 

 これはこれ以上突っこんで話を聞いていいものだろうか。

 非常に珍しくも気を遣って話を逸らすべきかと悩んでいると、久しぶりの顔がやってきた。

 キラキラと輝く金髪の黒騎士アルフだ。

 

「やあ、こんばんは」


「えっと……アレフさん!」


「惜しい」


「あれ?」


 違いましたか? と嘯いて記憶を探る振りをする。

 セドヴァラ教会で一度会っただけなので、名前を間違えて覚えていても不思議はないだろう。

 むしろ、一度会って以降、数ヶ月会っていない人間の名前を子どもが覚えている方が珍しい。

 

「確か、『ア』で始まったと思います」


「そうだね」


「ア……ア……アレクさん?」


「遠ざかった気がする」


「あれー? じゃあ、アドルフさん!」


「よし、判った。わざとだな」


 わざと人の名前を間違えるような子どもはこうしてやろう、とアルフが手を伸ばしながら一歩私へと近づいてくる。

 その足元から、悲痛な鳴き声が上がった。

 

「キャウンッ!!」


「ひゃあっ!?」


 足元から聞こえた黒犬の悲鳴に、驚いて私まで悲鳴をあげる。

 いつもの黒犬は、今夜も私の傍にいたらしい。

 近づいてきたアルフに足か尻尾でも踏まれたのだろう。

 珍しくも大きな声で鳴いた。

 

「クロ、大丈夫ですか?」


「いつの間にかいるな、イヌ」


「ああ、それが報告にあった……」


 はて、報告? と黒犬を撫でながらアルフを見上げる。

 ちなみに、『クロ』は私が呼んでいる名前で、『イヌ』はジャスパーが呼んでいる名前だ。

 ロイネは『お犬様』で、大家さんは『ゴディバ』と厳しくも美味しそうな名前で呼ぶ。

 みんな好き好きに適当な名前で黒犬を呼んで可愛がっていた。

 

「報告って、なんですか?」


「……迷い犬を保護してほしい、と黒騎士に依頼を出していただろう」


 その報告があがっている、という説明で私は納得したのだが、ジャスパーが微妙な顔をしている。

 ということは、本当は違うのかもしれない。

 おまえはなんでも言葉通りに受け取りすぎだ、というのは近頃私がよく受けるお小言だ。

 

 ……ということは、言葉の裏を考えろ、ってことだよね?

 

 なにが隠されているのだろうか、とアルフの言葉を反芻する。

 黒犬について、黒騎士に報告が行くのは、ありえない話ではないだろう。

 黒騎士三人組に相談したことだったが、黒犬の捕獲には他の黒騎士も協力してくれていた。

 

 ……あれ? そういえば、あの三人組については前にジャスパーが妙なことを言ってたような……?

 

 なんだっけ? と少し古い記憶を探る。

 今の生活は毎日が充実しすぎていて、興味をもったり、楽しかったりした記憶以外はすぐに出てこない。

 

 あたりさわりのない会話をしてジャスパーがアルフを追い払ったあと、結局思いだすことができなかったので、帰路でジャスパーに直接聞いてみる。

 アルフのなにがおかしかったのか、と。

 

「……おまえ、本当に前世の記憶があるんだよな?」


「実は、最近ちょっと自信がないです」


 日本のことや雑多なことは覚えているのだが、大人であったという自覚は薄くなった。

 まるで本当の子どもになったような気分だ、と。

 

「本物の子どもは、まず『自分は子どもだ』なんて言わないけどな」


 普通の子どもは、まず自分のことを大人ぶる、と指摘を受けて、そういえばそうかもな、と納得する。

 私も子どもの頃は――もちろん、前世の話だ――自分はもう大人と同じだと思っていたような気がしなくもない。

 

「あの人のところに行ってる報告ってのは……まあ、犬の捕獲も嘘じゃないだろうが――」


 情報源は同じアパートの黒騎士三人組で、報告内容は私の動向だ、とジャスパーは続ける。

 以前『三人揃っている姿は見かけないはず』と言ったのは、そのせいだ、とも。


 一人は陰から私の動向を見守っていて、もう一人は緊急時の連絡係、そして最後の一人は休憩中だ。

 三人でローテーションを組んで私を見守り、一人は影に隠れているので、私の視界に入る人数は常に二人という計算になる。

 

「……わたし、なんで目を付けられてるんですか?」


 アルフの前では日本語を話したり、転生者だなんて話はしていないはずだ。

 せいぜい、大人の話を理解している子ども、ぐらいの認識であろう。

 それなのに、黒騎士を三人も見張りに付けられているとは思わなかった。

 

「谷の魔女が死んだことで、ニホン人の……それでなくても転生者探しに躍起になってるんだよ」


 セドヴァラ教会内も似たようなものだと続いたので、首を傾げる。

 セドヴァラ教会にはほぼ毎日行っているが、そんな話は聞いたことがない。

 そう伸び伸びと答えたら、おまえは鈍すぎる、と頬を抓られた。痛い。

 

「わたしは、名乗り出た方がいいですか?」


「そうしなくていいように、俺がニホン語を習ってるんだろ」


 日本語を読める者が大人か、子どもか。

 それだけで周囲の扱い方は変わってくる。


 大人であればそれなりに知恵があるので慎重に付き合う必要が出てくるが、なにも知らない子どもであれば都合よく使える――実際はその子どもも転生者なので、大人と同等の知恵はあるはずなのだが――ように思われてしまうのだ。

 

「……ジャスパーは日本語、覚えられそうですか?」


「六年後にご期待ください、といったところだな」


 六年というのは、日本の小学校の期間だ。

 日本の義務教育について話してあったので、この数字が出てきたのだろう。

 日本の義務教育は小学校と中学校の九年間なのだが、そこは指摘しないでおく。

 学校の授業とは違い、一日に学ぶ時間が決められてはいないが、ジャスパーは仕事から帰ってきてから就寝時間までを日本語の学習に使っている。

 六年よりも、もう少し早く日本語が読めるようになる可能性はあるだろう。

 

「……先は長そうですね」


転生者おまえがいなかった時期からは飛躍的にニホン語の研究が進むだろう」


 まるで読めなかったものが、六年後には多少読めるようになっているかもしれないのだ。

 研究者としては、充分な成果と言えるかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 ――そんな話をした数日後。


 メンヒシュミ教会から帰ったその足でセドヴァラ教会へ行くと、渋い顔をしたジャスパーと、満面の笑みを浮かべた薬師たちの集団に迎えられた。

 普段はお出迎えなどされないので、すぐにこれが異常事態だということは判る。


 いったいなにが、とジャスパーを見上げると、非常に不本意そうな顔をしたジャスパーが、うちの子のままでいるか、ロイネの家の子になるか、と言い始めた。

 ロイネのことは好きだが、すでに私の保護者はジャスパーだと思っているので、これには「わたしを捨てないで、ジャスパー養父とうさん」と茶番を演じておく。

 と、ジャスパーはますます苦りきった顔をした。

 

 ……あれ? ふざけてる場合じゃなかった?

 

 なにかあったのか、と聞くと、ジャスパーよりも先に綺麗に髪を固めた薬師が前に出てきた。

 普段あまり交流のない薬師だが、さすがにこの人は知っている。

 グルノールのセドヴァラ教会で、一番偉い薬師だ。

 メンヒシュミ教会と同じように、教会内で一番偉い薬師は『導師』と呼ぶ。

 

 導師の説明によると、今回のワーズ病収束に向けて多大な貢献をしたセドヴァラ教会に対し、イヴィジア王国の王家が報いてくれることになったらしい。

 その報いというのが、王家に保管されていた偉人の研究資料の写本を作らせてくれる、というものだ。


 セドヴァラ教会は大喜びでこの話を受けたのだが、王家から指定された写本師はなんとジャスパーだった。

 近頃日本語研究に対して目覚しい成果を出し始めたジャスパーに写本をさせれば、魔女の死で失われた秘術の復活も早まるだろう、と。

 

「えっと……? ジャスパーが王都に出張する、ってお話ですか?」


 こんなに小さな子どもの保護者に対して、なんて無茶を、と素で突っこみを入れる。

 が、セドヴァラ教会の薬師、それも日本語を研究している学者といった世俗から少々どころではなく離れている薬師たちには、この冷静な突っこみは通じなかった。

 それどころか、偉人の研究資料は王都で写本されるのではなく、すでにこのグルノールの街にある城主の館に運び込まれているらしい、と大興奮だ。

 

「あれ? じゃあ、ジャスパーは出勤先が変わるだけでは?」


 それのどこに問題があるのだろう、と再びジャスパーへと視線を向ける。

 そうすると、ジャスパーはこの話の問題点を要点だけ教えてくれた。

 

 まず、セドヴァラ教会にはかつて偉人の研究資料や処方箋を焼失させた前科があるため、写本作業は騎士に見張られた部屋で行われることになる。

 そして、写本の過程で記憶した半端な知識を、半端なまま外へと持ち出せぬよう、写本師も写本が終るまでは城主の館に拘束されることになる、と。

 

「写本って、どのぐらいで終りますか? 十日ぐらい?」


 十日ぐらいなら一人でも留守番できる気がする。

 そう指を折って数え始めると、その手をジャスパーが握った。

 読めない文字を筆跡まで真似て写しとる作業は、十日やひと月では終らない。

 おそらくは年単位の仕事になるだろう、と。

 

「そんなにですか!? セドヴァラ教会は、こんな子どもから一年以上も保護者を取り上げるつもりですか?」


「もちろん、おまえのことは先方も『知っている』。俺にはまだ十歳にも満たない養子こどもがいる、と。そうしたら――」


 そうしたら、ジャスパーの写本作業の間は被保護者わたしも一緒に城主の館に住めばいい、と先方は言ってきたようだ。

 

 ……わぁ、ジャスパーが酸っぱい顔してる理由がわかったぁ。

 

 セドヴァラ教会がジャスパーを送り出す気満々でいる理由も、ジャスパーが複雑な表情をしている理由も、綺麗すっきり理解できた。

 先方とやらの後ろには、おそらくアルフがいる。

 私を転生者と疑っているらしいアルフが。

 

 

 

 

 

 

 結局、ジャスパーの助手という名目で城主の館へと行くことになった私には、セドヴァラ教会から子どもサイズの白衣が贈られた。

 私が普段着ている服は中古服で、少しくたびれている。

 城主の館内を歩くのに、これではすこし問題がある、と思ったようだ。

 白衣を羽織っておけば、中の服がくたびれていても問題ない――という程度の配慮が、実に薬師たちらしい。

 

 ……広いなぁ。

 

 城主の館と呼ばれる建物は、玄関ホールに入っただけで軽く眩暈を感じる広さだ。

 パン屋を兼ねるアパートの玄関とは、比べるまでもない広さである。

 

 壮年の家令のあとに続くジャスパーの後ろを付いて歩くと、やっぱり付いてきた黒犬が私の後ろを歩く。

 黒犬までジャスパーの家族と括られているらしいあたり、やはりあの黒騎士三人組は私の監視で間違いなかったようだ。

 

 ……裏庭も広っ!

 

 窓からチラリと見える裏庭に、庭師と思われる男性が二人いる。

 そのほかにも、客人から見えないようにと隠れてはいるようなのだが、子どもの目には見つかるところに女中メイドがいた。

 

 二階の執務室前に到着すると、家令がジャスパーの到着を報告する。

 開かれた扉の中へと入っていくジャスパーの背中を見送って、ふと気が付いた。

 

 ……あれ? おまけの私まで街で一番偉い人に会う必要ってないよね?

 

 アルフがどう思っていようとも、私はただの子どもである。

 普通に考えて、仕事で訪れたジャスパーはともかくとして、そのおまけの私まで顔を合わせる必要はないだろう。

 前世風に考えるのなら、市長宅に仕事で招かれた大人と、その被保護者だ。

 大人が挨拶をするのは当然だろうが、子どもまでは――

 

 ……いや、家の中に迎えいれるものとして、顔ぐらいは確認するか。

 

 そう思い直し、ジャスパーの後ろに続く。

 日当たりの良い窓辺に設置された執務机に座っていたのは、日の光に金色の髪をキラキラと輝かせたアルフだった。

 

 ……あれ?







■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □


強制終了。

楽しくて、いつまでも書いていられるので、とりあえず強制終了します。

ほとんどモノローグでザクザク進みすぎる。


結局、レオナルドのいない世界になったっぽいです。

たぶん、このティナだとテオが後悔をもつ理由が発生しないというか、逆になりそうというか……一緒に川遊びまではいけるかもしれないけど、飛び込み台から突き落とすのはティナの側だな、と。

あと、レオナルドが間に入らないと、たぶんこじれない(待て)

結果、テオは神王を動かせないだろうな、と。


このルートでたぶん未来が変わる人たち箇条書きで。


悪童テオ → 狼の餌にされて終了

ミルシェ → 娼婦デビュー

エルケ&ペトロナ+ルシオ → 登場せず

ニルス → 写本中は城主の館に閉じ込められるティナの家庭教師としてワンチャン登場


アルフ&アルフレッド → 入れ替わり解消のタイミングが遅くなる(婚期がずれる)

フェリシア → 次期国王

第7王女&第8王女 → 王爵になってブイブイ(死語)言わせている

ジゼル → 出てこない

ベルトラン → たぶん来る

アリスタルフ → ベルトランがティナを引き取れなかったらストレス死

ディートフリート → 暴君のまま育ち、クリストフの都合でどこかへ婿に出される


カリーサ → 死なない変わりに生きがいに出会えず、マンデーズ館から出ない

アリーサ → 望んだ相手との子どもは産めず

サリーサ → 何かのタイミングで自立して家庭を持つ


カミール → 精霊の世界と強制的に繋ぐまではできるが、さすがに放置はできないと神王に仕事されて死の神ウアクスの元で封印。転生できなくなる。精霊の世界との繋がりは解消。

神王 → ティナと知り合わないため恋人探し続行

精霊関係 → ティナが心身ともに健常に育ち、遭遇する余地がない。


サエナード王国のみなさま → 少なくとも戦が一回減るため、貴族の子弟生存ルート。むしろ、有能王子が失脚していないので幸せかもしれない。


帝国のみなさま → ティナ関係なく、そのうち瓦解する


カーヤ → 生存

テオの母親 → 生存

しつこい商人 → グルノールでは問題を起こさないが、この手のタイプはどこかでやらかして捕まる

ゴドウィン → 罠に嵌められ失脚

偽ゴドウィン → 口封じに殺される


ジェミヤン → 桃色絵画という新たな芸術に出会えず、彼的には大いなる損失


ジャスパー → ???

ここまで変わってくると、完全に形にしないとどうなるか判らない。

良い方向へは変わっているはず。ティナにちょいちょい『現実』ってもので殴られて、アルメルで立ち止まってばかりはいられないので。

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グルノールの転生少女 ~ないない尽くしの異世界転生~ ありの みえ@療養中 @arinomie

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