第9話 美女と美少女(どっちも上司)をテイムしているッ!?
防衛戦から一ヶ月が過ぎた。
侵攻していた人間の国へ一方的に条約を締結させ、多額の賠償金を手にし、捕虜を返還した。
これによって、魔界に攻め入る人間の国はなくなるだろう。
俺とルーチェ様の特務魔物課の評価もあれを機に上がっていった。
特に、ゲコルとペガサスの汎用的な兵の使い道は、警備などに使えると評判だった。
人々のルーチェ様を見る目も変わったらしく、魔族軍に仕える女性兵が増えていったらしい。
女性兵は、ルーチェ様を見かける度に尊敬の念を込めて挨拶しているのを隣で見ていた。
女性といえば、魔王様はというと、男性でいた時より支持率が上がった。
力が強い以前に、頑固そうな男性より、凛々しい少女の魔王様の方が親しみやすい、とかなんとか。
それでも、変わっていないことがある。
それは――。
「ザック。おはよう」
そう言いながら、俺へ子供のように甘えながら抱き着いてきた。
――魔王様、人前でそういうことしないでくださいって毎度言ってますよね?――
「良いじゃないか。おれと君の仲じゃないか」
変わってない点というと。
俺に対する接し方と上半身はマントで羽織っているだけ。
いや、違うな。
前より接し方が馴れ馴れし過ぎる。
公衆の面前でも、こうやって抱きついてくるんだ。
――よくありませんって。女の子がそうやって抱きつくなんて――
「なんで?」
無垢な瞳で俺を見つめている。
畜生、可愛すぎる……ッ!
――そういうのは、恋人同士でするものであって――
「……わかったよ」
ようやくわかってくれたか――。
「じゃあ、宣言しようッ! おれはこのザックと正式に結婚を前提に付き合うッ!」
ええッ!?
わかってくれてなかったッ!
むしろ、関係進んじゃってるじゃんッ!
公衆の面前で婚約宣言しちゃってるしッ!
――ま、ま、魔王様ッ!? なにふざけたことをッ!?――
「ふざけてないよ。おれは君に惚れているんだから」
――はいッ!?――
「どうせ、何年かしたら、結婚のことを考えなきゃならんのだ。だったら、おれが見初めた男で下心のない素直な君の方がいい」
――いやいやッ!? あなたは魔王様ですよッ!? もっと真剣に考えてッ!――
それを訊いた魔王様がクスッと笑った。
「なら、本気を見せればいいんだな?」
魔王様の手が俺の頬を撫でるように掴む。
そして、可憐な唇を舌で一回り潤した後、一回つぐんでパッと開いた。
魔王様のしようとすることがわかる。
魔王様が男勝りな部分を捨て、乙女の顔になっている。
可愛い。
そう思っていると、いつしか互いの顔の距離が近くなり――ッ!
「ちょっと、魔王様ッ! あたしのものに、なに手を出しているんですかッ!」
駆けつけたルーチェ様が俺を魔王様から引き剥がした。
乙女の顔をした魔王様がキリっとルーチェ様を睨みつけた。
「そういえば、お前にはそういう立場を与えたのだったな?」
「ええ。ですから、あたしのものに手を出さないでくださいッ!」
魔王様が舌なめずりして怖い笑顔をした。
「なら、ルーチェッ! お前を本日付けで――ッ!」
魔王様が言いかけた瞬間、俺が宙に浮いた。
感覚があるのはルーチェ様とつないでいる手だけだ。
そっか、超スピードで走っているんだ。ルーチェ様。
俺が地面に足が付いたころには、いつもの地下室、スライムたちを飼っている部屋に辿り着いた。
「まったく、あのおれっ娘は……ッ!」
ルーチェ様がバタンとドアを閉めて俺に近づいた。
すると額にキスしてきた。
――ルーチェ様?――
彼女の顔は火照っている。
「あたしが天界から堕ちた理由はね、こういうことがしたかったの」
――こういうこと? もしかして、恋愛を?――
「天界って、こういうことを許してくてくれなくてさ。願望抱いただけで、堕とされちゃったわ。四天王になっても、あたしの夢は叶わなかった。あんたを生み出すまでは、ね」
なるほど、ルーチェ様の言葉はわかった。
だが、なんで俺なんだ?
――でも、俺は、大層な男ではありませんよ――
「あんたは前世で気が弱い男だったけれど、真っ直ぐな男だった。だから――」
ルーチェ様が舌を出して俺の頬を舐めた。
「あたしが貶める男はあんたが良かったの」
――ルーチェ様……ッ!――
俺は抗うことができなかった。
きっと抵抗しようとしてもルーチェ様を押し返すことができない。
それに見惚れてしまったのだ。
彼女の恥じらいを捨てた、甘くて美しい顔を。
そんなことを考えているうちに彼女に唇を奪われた。
口の中に舌を入れられて、為す術なく犯されていく。
ひとしきり口を責められると、彼女は唇を離し、舌を出して俺を誘惑した。
「続き、する?」
その時、ドアが乱暴に開けられた。
開けたのは魔王様だ。
「ここにいたか、ザックッ!」
「もう、しつこいですよッ! あたしのものって言ったでしょッ!」
「お前は母親のようなものだろッ! おれはこいつのことを愛してんだぞッ!」
「あたしだってそうよッ! こいつを愛してるんですッ!」
「どうやら、おれの命令を聞く気はないようだなッ! 謀反だぞッ!」
「捉え方はご勝手に。あたしは譲らないッ!」
二人はしばらく目線で火花を散らしていると、互いに取っ組み合いのケンカに発展した。
「なによッ! この泥棒猫ッ!」
「いい加減、ザックを寄越せッ!」
互いに殴り合い、引っ叩き合い、引きつり合いながら、戦っていた。
すげぇ、キャットファイト……っていかんッ!
――二人とも、こんなところで暴れたらッ!――
スライムたちがルーチェ様と魔王様に飛びかかってきた。
そう、スライムは食べ物以外に好物があるのだ。
動物の排泄物が。
う○こを思い浮かべるだろうが――。
「きゃあッ!?」
「ひゃあッ!?」
汗が染み込んだ衣服も対象なのだ。
ひんやりとした感触のスライムが二人を襲った。
みるみる、二人の服が溶けていき、スライムがどいた頃には二人は一糸纏わぬ姿になっていた。
美白と褐色の裸を見てられなかった。
とにかく、二人のケンカは収まったんだ。
部屋を出て、なにか代わりの衣服を――ッ!
部屋を出――られないッ!?
いつの間に閉まってたんだッ!?
ドアが開かないッ!?
建てつけは悪くなかったはずだぞッ!
噓だッ! こんなタイミングなんてッ!
「あんた……素っ裸の女を置いてどこへ行くのよ……?」
そう言うと、裸のルーチェ様が俺を床に叩きつけた。
無論、二人は素っ裸だ。
――い、今から、二人の衣服を取りに行こうとッ!――
「逃がしはしないよ、ザック。こうなった以上、とことんまでやろうじゃないか」
魔王様が倒れた俺の衣服を乱暴に脱がし始めた。
――魔王様ッ!? なにしてんですかぁぁぁぁぁッ!――
そもそも、二人の前で裸にされたら俺のおっきくなったモノが――ッ!
「あらあら、ちゃんと育ってるじゃないの……」
「いいねえ。楽しみだよ……」
そう言うと、二人の目つきがケルベロスよりも鋭くなり、口も大きく開けて舌を出している。
ルーチェ様の舌が俺の右腕をなぞるように舐め、魔王様の舌は腹から胸にかけて舐めている。
――二人ともッ! 正気に戻ってッ!――
舐めるのをやめたルーチェ様と魔王様が、舌から涎を垂らしながら言ってくる。
「なに言ってるのよ? あたしたちは充分正気よ――」
「だって、おれたちはな――」
そして。二人同時に叫ぶ。
「「あんた(お前)をじっくり食べるんだからッ!」」
その言葉を最後に、二人が俺に襲い掛かってきた。
二人は俺の身体をあらゆる手で性的に食べ始めていた。
前世で叶わぬ形で卒業する羽目になるなんて。
しかも、二人を相手で。
その後、俺の姿を見た者は……。
目を覚ますと、地下室にいた。
それもそうだ。
俺は女二人とその場で行為に及んだのだから。
ルーチェ様が右肩に、魔王様が俺の胸で、二人とも裸で眠っていた。
起きたくても、起きることができない。
スライムたちは元気のようだ。
むしろ、スライムたちが起こしてくれたのだが。
汗とかを吸い取ってくれたのだろう。
しかし、ハッキリと意識を取り戻せていないことがある。
俺はどっちと最初にやったのだろう。
二人との行為が激し過ぎて、二日酔いのような感覚に陥った。
ハッキリとわかったのは、二人と深い関係を築いてしまったこと。
「うん? あんた?」
「ザック……。むにゃ」
もう一つは、女という狂暴なものは手懐けられないこと。
起き上がりが可愛く見えても、昨夜? 何日経った? あの甘美な目つきに舌を出して涎を垂らしていた顔が脳裏に焼き付いている。
というより、この二人が一番の魔物なのでは?
「「おはよう、あんた(ザック)」」
少なくとも、もうこの二人から襲われないように気をつけないとな。
――おはようございます。ルーチェ様、魔王様――
そう言うと、二人に抱きしめられた。
まるで、上司がモンスターで俺がそれをテイムしているみたいじゃないか。
……に、しても――、
「「これからも、よろしくねッ!」」
この二人、エロ可愛すぎる……ッ!
堕天使様の部下のテイマー @WaTtle
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