第30話 春の過去#2

「すいませーん春さんいますかー?」


 誰だろう。

 もうお母さんが何回も追い返したから友達なんて誰も来ないはずなのに。

 

「どちら様ですか?」


 お母さんだ。

 

「春さんのクラスメイトの黒咲空です」


 黒咲空?!

 何であいつが来たの?


「すいませんがうちの春は今忙しいんです」

「そうですか。ちょっと春さん呼んでもらってもいいですか?」

「今忙しいっていいましたよね?」

「ちょっと話すだけですよ。それぐらい大丈夫ですよね。もう3週間も学校に来ずひたすらやってるくらいなんですから」


「ちょっ、ちょっとだけですよ?」


 お母さんが折れた。


「春ー! 来なさいー!」


 そして私は久しぶりに家を出た。

 と言っても玄関前だけど。


「よっ」

「何しに来たの」


「困ってないの?」

「困ってない」


 どうしても強がってしまう。

 壁から出れない。

 

 私はしんどい時、困った時、人に頼ることができない。

 悪い癖だ。

 

 ほんと私はどうしようもないほどに――。


「春ちゃん」


 こんな時でもこの人は私に構ってくる。

 私を連れ出して何するというのか。


「何が目的? 私は早く帰りたいんだけど」


 本当は帰りたくない。

 

「私にかまわないでよ」


 助けて。


「私はお母さんとお父さんの言うことさえ聞いてれば……」


 いいわけない!


 でも反抗するのも勇気なんてないし。


「本当にそれでいいの?」


 いいに決まってる。

 私さえ我慢すれば全てが丸く収まるんだ。


「もう私にかまわないでよ!!!!」


 力強く振り解いた。

 拒絶し、二度と近づかれないように。


 私は少し冷静になろうと周りを見て、驚いた。


 通学路の途中にある、川横の道。

 ここにいるのは私と黒咲空だけ。

 

 こんな時にこんなことを思うのもどうかと思うけど少女漫画のワンシーンのような、そんな雰囲気だった。


 川に映る月、誰もいなくて向かい合う二人、春の夜風は優しく吹き、この情景は何かを思わせる。


「俺はさ」


 向き合っているなか、彼が先に口を開いた。

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主人公になりたい 〜とっても可愛い嫁候補たちがいるリア充イケメンな俺はただ一人の女を振り向かせて見せる!〜 KID @kid9696

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