私の色
AzukaBan👜
第1話
「アンナ、これは赤色よ」
お母さんはいつも目の見えない私に色を教えてくれた。
目の見える世界では林檎の色は赤、レモンの色は黄色だという。
しかし、お母さんは色の表現に困っていることも多々あった。
お隣のおじさんからメロンを貰った時
「アンナ、この色は緑?じゃなくて、白っぽくて黄緑で」
スイカの時もそうだった。
「アンナ、この色は赤と黒なの。でも赤と黒が混ざってるんじゃなくて交互にあって、交互っていうのは」
お母さんが慌てふためくと私はいつも笑った。
可愛らしい母親の姿もそうだが一番の理由ではない。
それは"色が認識できている"から笑っていた。
いつから認識ができるようになったか定かではないけど、ある日を境に私の世界には色と形がわかるようになっていた。
「アンナ、お母さんが言っている色は参考なの。あなたが手に取った時に感じた何かを大切にして」
色の教えをした後、お母さんは毎回この言葉で締めていた。
そのおかげでスイカの模様もわかった。
認識できたきっかけは小学4年生になった頃、お母さんが500色鉛筆を買ったことだと思う。
鉛筆を私に持たせ
「これはね、えっと、舞妓はんの藤のかんざし色よ」と教えてくれた。
私は爆笑した。
「お母さん、笑かしてるでしょ」
「本当よ!そう書いてあるの、他にもアラスカ生まれの新鮮サーモンの色とかあるわ」
始めた頃は単純な色の名前だったけど複雑な名前に変わっていった。
色を楽しむというよりお母さんの言うヘンテコな名前を毎日楽しみにした。
500色を教えてもらい終わる頃には、色鉛筆に触ると感覚の世界でその色は弾けた。
快感と言えばいいのか、私はその感覚に夢中になり色んなものに触った。
スイカを触れば赤と黒が弾ける。
虹が描かれた絵本に触れば七色が弾けた。
私は色を理解したんだ。
感覚の糸と糸が結ばれて私の世界には色という概念が生まれた。
私の色 AzukaBan👜 @azukabanchandeth
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