新兵器完成


「これさぁ……カマキリの刃を引っ付けて両刃にするのはどうだろ?」


「おっ! それいいな! でも先端の強度が問題になりそうだ」


「先っぽがしならないためにニックのテントーから推進機構持ってきたらどうだ? どうせぶっ壊れてんだし取っ払ってもいいだろ」


 僕達はワイワイガヤガヤと新兵器を開発し続けた。

 自動操蟲じどうそうちゅうから必要な素材を剥ぎ取るのは中々悪夢になりそうな光景だったが……それでも楽しさが上回っていた。


「面白そうなことやってるじゃないか! 僕も混ぜて欲しいな」


 更にそこに新しい男子が加わる。

 彼はテントー二番機のパイロット、ヒューイ。

 ニック曰くそれなりな操縦技術と誰とでも仲良くなれるチームに必須の縁の下の力持ち。

 そんな彼もこの魅力には勝てなかったようだ。


 最初は、それ戦場だと危なくない? なんて言ってた彼だったが……。


「ねえ、どうせならさ、この武器……光らせようよ」


「……!!」


 この通り、一時間もしないうちにすっかりバカになってしまっていた。



 まだまだ開発は続く。

 工房に響き渡るハンマーを打つ音と男達の楽し気な声。


「おーいバカ共ー、私が言うのもなんだけどちゃんと休みなよー」


 ネイトの声が聞こえるが、それでも止まらない。


「みんなー! 軽食持ってきたよー! 蛙肉のホカホカ巻き!」


 ポロンが持ってきてくれた軽食で元気を取り戻し、更に開発に没頭する。

 共食いしてた気もするがこの際気にしないことにしよう。


 そして二日が経ち……。



「か、完成だ……!」


「これが俺達の……最高傑作!」


 僕達の熱意の結晶がスポットライトを浴びるかのように朝日に照らされている。

 元の世界で言えば、竹刀がサイズ感としては最も近いだろうか。


 だが、この世界ではそれですら余りにも巨大。

 妖精の彼らからすれば、高層ビルのようなものだろう。


 刀身はカマキリの刃、柄はあらゆる衝撃に耐えられるようにダンゴ虫の甲殻をいくつも重ねた特殊装甲だ。

 実装できるアイデアは全て詰め込んだ。


 あとは、とびきりの魔力を通せばこの剣は覚醒をす……あれ? 魔力?


「……ねえ、僕さ、魔力、ないよ?」


「え?」


「いや、僕の元のボディは魔力、全くないよ?」


「なっ……!!!」


 僕たちは打ちひしがれた。

 何故それに気付かなかったのか……。

 この二日間は一体なんだったのか……。

 まるで砂漠にふと見えたオアシス。

 僕たちの夢は手が触れた途端に、ふと消えてしまったのだ。



「なんだこりゃ? すげーな」


 嗚咽をもらしていた僕達に呑気な声がかかる。


 彼は、前回の戦いで魔力を使い果たして寝込んでいたパイロット班のエース、ニック。

 この二日間ですっかり回復したようだ。

 それは良かった……のだが、僕はあることに気付いた。

 顔を上げるとギア、ナット、ヒューイの三人も顔を上げていた。

 どうやら彼らも気付いたようだ。


「なあ、これお前らが作ったんだよな? いいなぁ、俺も目が覚めてりゃなぁ……」


「ニック!!! 頼みがある!!!」


 4人の声が重なった。

 やはり同じことを考えていたようだ。


「魔力タンクになってくれっ!!!!」


「……は?」


 魔力がないなら外付けすればいい。

 丁度ニックはテントーを失って手持ち無沙汰になるはずだ。


 僕達はニックの意見は一切聞かずに再び作業に入り始めた……。




『敵襲! 敵襲! パイロット班およびヒビキ・ポロンは出撃準備を!』


 警報とアナウンスが鳴り響いた。

 とうとう三回目の防衛戦だ。

 だが今回は、勝利への自信しかない。


勇神ゆうじん様!! 来たよーっ!!」


 僕は元のボディに戻り、ポロンがコクピットに入る。


「ってあれ? わたしの座席なんか変わってる? 奥にもう一つ座席があるよ?」


 ポロンが不思議そうな声を上げる。


 そこに整備班の双子がまってましたとばかりにステレオ音声で解説を入れる。


「よく気付いたな! そう! その座席は魔力を利用するための特注席! 言わば火器管制役さ!」


「カキカンセー?」


 恐らく理解できてないポロンの前にヒューイとネイトに持ち上げられたニックが運ばれる。


「あっ……ニック……」


 ポロンの耳が赤くなったのが僕の視線からはよく分かる。

 そりゃ前の戦いであんな告白みたいなこと言われたもんなぁ……。


 当のニックはそんなこと思ってないだろうけど……。


「何が火器管制だ!? ふざけんなぁ!?」


「まぁまぁ、ほら、ニックのテントー壊れちゃったしさ」


「てめえ、ヒューイ! というかお前らの兵器開発に俺のテントー使っただろ!?」


「男ならもう覚悟決めな!! ……お、ヒビキ! 新しい服は着心地いいだろ!」


 ネイトが縫ってくれた服はゆったりとしたローブでボロボロの学生服を上手く包んでいた。


「うん! ばっちり! 何よりかっこいいし!」


「そう言ってくれるなら作った甲斐があったよ! ほらニック! 行きな!」


 新たな座席にニックが無理やりに叩きこまれる。


「さあ、行こう! ポロン! ニック!」


「……今日は三人一緒ね! よーし! 頑張るぞー!」


「こうなりゃヤケだ! 魔力タンクでもなんでもやってやるよ!」


 こうして、新兵器を携えて僕とポロンとニックは戦場へと向かったのだった。

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チートボディで戦う30日戦争 ~僕と女神と妖精と青春とサイズ差と電撃と卒業の異世界戦記~ @nemotariann

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