第5話 花火大会

[まえがき]

本編700万PV達成、感謝SSです。ありがとうございます。

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 以前、冒険者学校を開設するにあたり、生徒たちの切り札にするべく爆弾を製造したが、生徒たちの成長が予想以上だったため、結局作った爆弾を生徒たちに持たせることなく爆弾は文字道理俺の収納庫にお蔵入りしてしまった。今後使うことはありそうにないと思っている。


 それはそれとして、火薬、爆薬の製造ノウハウはアスカが持っているわけで、遊ばせておくのはもったいない。


「なあ、アスカ、来月になったら花火大会でもしてみないか?」


「いいですね。それでは花火の製作に必要そうなものを商業ギルドに発注しておきます」


「商業ギルドだとあまり揃わないんじゃないか?」


「火薬関係は前回同様揃うと思いますが、花火にいろいろな色を出すための金属塩は難しいと思います。量はそれほどでもありませんから、そこらへんはマーサに頼んで、ソルネ4で作ってもらいましょう」


「おっ、その手があったか。

 あとは、花火見物用に女子には浴衣ゆかたと俺用には甚平じんべいが欲しいな」


「マスターは男ものの浴衣でなく甚平ですか?」


「やっぱ、そうだろう。それに俺が浴衣を着るとよくて温泉の浴衣か、ただの寝巻になるんじゃないか?」


「分かりました、明日にでも生地を購入して、人数分の浴衣とマスターの甚平を作ってしまいましょう」


「それも任せたよ。あとは、縁台とスイカか。スイカは甘いのがあればいいけど、甘いスイカはなかなか手に入らないよな」


「縁台はただの木の椅子ですから簡単に作れますが、さすがに甘いスイカは無理なのでそこは我慢してください。買ってきたスイカを井戸に入れておけばそれなりに冷えるでしょう」


「そうだな」




 アスカと花火大会の話をして10日経った。2日前に花火の材料がすべてそろい、アスカはその翌日1日で花火200発を作り上げたそうだ。縁台はゆうに及ばず浴衣も甚平もその前に完成している。浴衣の着方もアスカがみんなに講習した。



 アスカの作った200発の花火は俺が収納庫に保管している。花火1つの大きさは直径30センチほどの球型なので結構デカい。


 花火大会では打ち上げ花火を打ち上げるのだが、俺自身どうやって花火を打ち上げるのか分からなかったので準備完了と言ったアスカに聞いてみた。


「アスカ、打ち上げ花火はどうやって打ち上げるんだ?」


「普通は筒の中に火薬を入れ、その火薬に火をつけて大砲のように撃ちだしますが、面倒なのでわたしが導火線に火をつけて投げ上げます」


「大丈夫なのか?」


「今回作った花火は、直径で300メートルは広がりますから、最低でも150メートル、見た目を考えれば300メートルは打ち上げる必要があります。ということですので、秒速80メートルほどで投げ上げるだけなので簡単ですし、その程度で花火の本体は壊れませんから大丈夫です」


「アスカがそう言うんだったらそうなんだろう。

 だけど、それだとアスカは花火大会の見物ができないじゃないか?」


「それは仕方ありません。

 そうですねー、それならペラに投げ上げさせますか?」


「いや、それもかわいそうだぞ。

 そうだ、あらかじめ火のついた花火を収納しておいて、400メートルくらいの上空に排出してやろうか? それくらなら俺も花火を見ながらできる」


「その手がありましたね。上空からある程度落ちたところで爆発するよう導火線を調節してしまいましょう。火薬事故は起こらないでしょうが、念のため南の川原にいって作業しましょうか?」


「そうだな。そこで火をつけてどんどん俺が収納していけばいつでも花火ができるものな」



 そう言うことなので二人そろって屋敷を出て、いつもの川原に駆け足でやってきた。この程度のランニングでは息も切れない自分が怖い。


「マスター、マスターが収納庫から花火を出したら、わたしが導火線を切り詰めます。本体内の導火線は秒速5センチで燃焼するようにしていますから、花火本体の表面から真ん中までに火が到達するのに3秒で到達します。表面から外側に出ている導火線は秒速1センチで燃えます。

 あまり本体に近いところで点火すると危険ですから、5センチは導火線を伸ばしたいので、マスターは花火が8秒落下する距離分高く排出してください」


「8秒で何メートルになる?」


「空気抵抗もあるので、200メートルと思ってください」


「ということは、高さ300メートルで爆発させたいから、排出位置は高さ500メートルってことだな」


「そうなります」



「じゃあ、俺は花火を俺の左手に排出するから、アスカはその花火の導火線を切ってくれ。

 導火線が短くなったら俺がファイヤーで点火して収納していくから」


「了解」


 そこから二人で流れ作業的に火をつけた花火を作っていったのだが、なにせ俺の自慢のファイヤーでは導火線になかなか火が着かず、30分ほどかかって何とか200個の花火に火をつけることができた。





「これで花火の準備は終わったわけだけど、花火を排出する高さ500メートルとというのが目分量だと難しいな」


「それでしたら、マスター。そこらの石を収納して適当な高さで排出してみてください。わたしが高さを測りますから、それで500メートルの感覚を掴めるでしょう」


「確かにな。

 まずは石を拾って、500メートルはこれくらいかな? 排出」


「マスター、今のは200メートルでした。今のだと地面で爆発します」


 アスカの言葉と同時くらいにさっきの石が川原に落ちてきた。


 練習していてよかった。大惨事になるところだった。


 それから何度かトライして、


「マスター、今の高さがちょうど500メートルでした」


 排出して15秒くらいで石が川原に落っこちてきた。


「じゃあ、もう一度やってみる」


 もう一度先ほどと同じと思える高さに石を排出した。


「今回も500メートルでした」


 アスカから合格点を貰えたので、


「じゃあ、最後に本物の花火でテストしてみよう」


「そうですね」


「いくぞ。そーれ!」


 排出してきっかり8秒で花火が爆発した。昼間の花火なので色とりどりどころか音と煙だけだったが成功したようだ。


「マスター、うまく大空に色とりどりの花が咲きました」


 アスカの高性能な目だと色とりどりどりに見えたのか。いいなー。とはいえ、本番になればまだ199発残っているからな。


「それじゃあ、屋敷に帰ろうか」


「はい」





 花火大会当日。


 その日は王宮からはリリアナ殿下とお付きの人、冒険者学校からはペラ以下生徒たちも呼んで盛大に花火大会を開催した。当初夕食後だからスイカでもあれば十分と考えていたが、結局、テーブルも多数用意して飲み放題、軽食だが食い放題で花火大会を開くことにした。


 日が暮れたあと、いきなり王都の空に大輪の花が咲き、遅れて大きな音が轟いた。何事かと思って家を出て、夜空を見上げていると、次に夜空に大輪の花が咲いた。王都民は花が咲くたびに『おうー』という声を出すため、王都全体がうねったとのちの人が伝えたとか。



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真・巻き込まれ召喚。 ショタアス探検隊 山口遊子 @wahaha7

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