第8話ークラス分け。
ヤミーの転移魔法によってボクは再び
ガタンゴトンと揺れる中、車窓を覗けば幾つかの魔界を凄まじい速さで通り抜けていくのが見える。
海が七色に光を放つ魔界、周囲の全てが紙細工で出来た魔界、巨大なホールケーキの上にいくつものお菓子の家とジュースの雨が降る魔界。4つの太陽に囲まれ常に灼熱の炎が噴き上がる魔界。
多種多様な魔界が膨張と収縮を交互に繰り返していた。
「すごいね……色々な魔界があるんだね」
『大魔界は複数の魔界が折り重なった交点に存在する魔界だ。だから次元の境界が曖昧なんだろうな』
「なんだか似てるね、ボク達のいた魔界と」
「失礼しやす」
個室の扉を二度叩かれ、入ってきたのは車掌服を着た初老の魔族だった。
「切符を拝見しますぜ坊ちゃん」
「あっはい、どうぞ……あれその声」
『
「ご名答、あっし達
「ボ、ボクは……」
『
「あーなるほどそうでしたか」
ミミーは切符を確認すると一枚のカードを差し出した。
「マクラ理事長よりバトルに勝った魔族に渡すよう仰せつかったマジカルカードです」
「確かにマジカルカードだけど……真っ白だよ」
絵柄もテキストも全て白く塗り潰されたカード。用途もまるで分からない。
「使い方を簡単にお教えしやしょう。まずは魔導書を開いて、このマジカルカードをバトルフィールドの何処かにセットして下さい」
「?」
なんだかしっくりこない指示ではあったが、ボクは言われた通りにマジカルカードをバトルフィールドにセットした。
「セットしたよ、あとはどうするの?」
「通常のバトル同様マナカードを生成して、山札の上から一枚ドローして下さい」
『なるほど……マナカードを使ってこの白紙のマジカルカードにマナを注ぎ込むってわけだな』
「そうすればこのカードの正体がわかるってわけだね! よし! カードドロー!」
引いたカードは♣︎のQ。
鏡の魔王カリスとも縁のあるカードだ。
「マナ発生! マジカルゲート開放!」
マナが注がれたことで白紙だったマジカルカードがその正体を表した。
【大魔王候補者・エル】
【属性】:♣︎
【パワー】:2000
【スキル】: ① このカードは大魔王学園の在籍を証明するものであり、マジカルバトルにおいて使用することは出来ない。
②原則として同名カードを再発行をすることは出来ず、万一紛失してしまった場合自動的に退学となる。
③大魔王学園内でマジカルバトルを行った場合、勝敗に応じてこのカードのパワーが増滅する。パワーが0となった場合もまた退学となる。
④このカードのパワーは大魔王学園内において通貨として使用することも出来る。
【テキスト】:数多ノ魔族ヲ退ケ大魔王ト成リシ者ニ、絶対的ナ力ト叡智ガ与エラレル。
「ふむふむ……エルは♣︎クラスですか。おめでとうございやす」
「♣︎クラス?」
「大魔王学園は♣︎クラス、♢クラス、♡クラス、♠︎クラスの計4クラスに分かれていましてね。坊ちゃんはその中の♣︎クラスに選ばれたってわけです」
カードの四属性に因んだクラス分けか。マジカルカードが全ての大魔王学園らしいやり方だな。
「このマジカルカードはそのクラス分けのためのものであり学生証としての役割を果たすということか。それにこのカードの③と④のスキル……」
「相変わらず坊ちゃんは察しが良い。さすがマクラ理事長が一目置く魔族なだけはありやすね」
「大魔王学園ではマジカルバトルの勝敗が全て。このカードのパワーは勝ち続ければ上昇し負け越せば下降していく。手に入れたパワーを通貨として使用するもよし、そのまま貯蓄するもよし。しかしこの大魔王候補の証のパワーが0となった時持ち主は自動的に敗北となり大魔王学園を退学することになります」
「敗北……」
その言葉を聞いたボクの頭の中に浮かんだのは大魔王になるという夢半ばで倒れた心優しき魔族、ルビィの姿だった。
マジカルバトルに敗北したルビィはマナとなり消滅した。
そしてマクラ理事長がバトル前に言っていたこと。
『大魔王となり魔族の頂点に立てるのは1人だけ! そのためには誰であろうと蹴落とし! 欺き! 糧とする! そんな陰謀と謀略が荒れ渦巻く大魔王選を勝ち抜いた一握りの魔族だけが、古来から大魔王として魔界の歴史を築いてきたのだ!』
これらの二つの事柄を一本の線として繋ぎ合わせると退学という言葉の裏に秘めたほんとうの真実が浮かび上がってくる。
「ねぇミミー」
「……なんでしょう?」
「この学園で言う退学ってさ……候補者が死ぬことを意味してるんじゃないの?」
自信はあった。
あの戦いを経験した後ならマクラ理事長の放った言葉の意味を肌で体感した今なら自然とそう思えるからである。
大魔王学園はそういう世界だと。
「フッ……僅かな証拠からそこまで大魔王選のシステムを理解するとは」
ボクの突飛な推論に対し、ミミーはニヒルな笑みをたたえて答える。
「やっぱり……そうなんだね」
「しかしそれはこの大魔王選における氷山の一角に過ぎやせん。またそれ以上のことはあっしに答える権限もありやせん。ただ坊ちゃんがその先の真実を知りたいというなら手段は一つだけです。もう皆まで言わんでも分かりやすね?」
「……」
「もうすぐ大魔王学園に到着しやす。お忘れ物落とし物のありやせんように」
そう言い残しミミーはいなくなった。
『見えてきたぜ……あれが大魔界学園』
天空に浮かぶ巨大な島。
そのど真ん中に浮かぶ巨大な古城は大魔王の住まう大魔王城を彷彿とさせる外観をしていた。
運命が動こうとしている。恐ろしいほどの速さで。
ボクはマジカルデッキを取り出し二枚のカードを掲げる。妖精王・マリーゴールドそして妖精王・グラジオラ。
ルビィの魂の宿ったカード達だ。
心優しき魔族、ルビィ。
君の意思はボクが引き継ぐ。
大魔王になるのは……このボクだ!
期待の裏に秘めた不安。
不安の裏に燃え上がる闘志。
ボクはマジカルデッキを握り締め、運命の奔流に身を投じた。
異世界カードバトル!マジカルモンスターズ! 鳳菊之介 @soleilbrilliant
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