下衆タルト

※性病の描写がありますが参考にしないでください。然るべき機関へ受診してください。



 

               豊田 蠢陽


  



 高校生の時、付き合っていた男からお金を受け取った。

「これで足りるでしょ」

私はそのお金で、妊娠検査薬を買った。人生で初めての事で、すごく怖かった。

結果は陰性だった。私も男もホッとした。


 私達にとって妊娠するということは、大事故みたいなものだ。だから本当に安心した。


 私の友達は、男からお金を受け取って緊急避妊薬を買いに行ったって聞いた。

大事故は起こらなかったみたいで安心してた。あと、噂で聞いた話しなんだけど、本当に妊娠したかもしれないと言って親と相手の男と一緒に、産婦人科へ行った子がいるんだって。同級生じゃないっぽいから多分下の子かな?


こうやって書いてみると凄まじいね。

でも、まだあるんだよね。とっておきは先生かな。


 いつの集会か忘れちゃったんだけど○○先生からお話がありますって、紹介されて何かなぁとは思ってたんだけど、皆薄々気付いてたんだよね。○○先生のお腹が大きく膨らんでるの。

それで、その先生壇上の上で少し喋り出したら泣き出しちゃったの。泣きながら妊娠したので皆の卒業式には出られませんって。

多分こんな事を話してたと思う。

その先生、担任持ってて生徒の名前を呼んであげられないって意味だった事は覚えてる。

担任のクラスの子たちは暖かい言葉をかけていたんだけど、私と友達は苦笑いだった。


私その時泣くほどなら堕しちゃえばいいのにって心の中で思ってた。でも、後から知ったんだけど、その先生何年も前から不妊治療してたみたい。堕ろせばいいのにって本当に言わなくて良かった。

でもこれって、すごくリアルな性教育だなって思う。大人でも、ましてや先生でも妊娠過程の計算が出来ないんだって。私あの学校で1番学んだのはそれかもしれない。だって高校生になって保体で性教育なんてやったことがなかったし、中学なんか避妊具やら性病やら少しだけかすった程度だったから。

何にも知らないのに中学で早々に実践してる子もいたしね。

 先生の告白より前に、実は私の周りでもちょっとヤバイ事が起きてたんだよね。

私の友達とは別の子の話なんだ。その子も男からお金を受け取って、緊急避妊薬を買った事がある子なんだけど、当時顔とかに酷い吹き出物が出来ちゃってて、皮膚科に行って薬飲んでも全然良くならないみたいで悩んでた。

その子はいつもピルを服用してて、それで妊娠を防いでたんだって。だから男はいつも避妊具つけてないっぽくて、今までの男ともそんな感じだったらしいの。私たちにとって妊娠は大事故だから、それさえ免れらばOKってスタンスなんだよね。だから性病の事なんて考えてもいないのよ。その子が保健の先生に相談して、もしかしたら性病かもしれないって言われたみたいでさ、勇気だして親に話たみたい。それで産婦人科に行って調べてもらったら、梅毒に感染してたんだって。

私と友達はそれを聞いてすごく驚いたし、ものすごく怖くなった。私たちは真剣に考えることにした。あの子と付き合ってる男が、この学校にいて、その数人が梅毒に感染してるかもしれない。学校とは関係なく私たちが知らないだけで、既に感染してる人としてしまったかもしれない。ありとあらゆる事を友達と考えてたら、頭の中がゴチャゴチャしてきて。感染源は分からないし、誰と付き合ったかなんて表に出てこない数を合わせたら、一体どれくらいになるのかとか、パニックになった。だから考えるのをやめた。

その後から下の子を含めて、チラホラ性病に罹っている子がいるって聞いた。女の子ばかりで男はシーンって感じ。絶対男もいるよね。現に発症している子と付き合ってたんだから。怖くないのかなって思ってた。やっぱり妊娠だけはヤバイって思ってるんだよね。

私の学校は妊娠は0だけど性病はn人みたいな感じ。

 私と友達は親の目を盗んで性病検査しに行った。近くで無料で検査してくれる所があって良かった。スマホで沢山検索してたら、どれが信頼できる情報なのか分からなくて、凄く苦労しちゃった。私は友達と一緒に調べあってたからなんとかなったし心強かったけど、1人でこんなの調べてたら不安だけ増して気が狂いそうだった。私も友達も、性に関しての知識が全く無くて危ないよねって話た。


 私の友達は年上が好きなんだけどね、その時話たんだ。

「何かどの男も私の事なんて見てない気がする。体の事は気にすかけるけ言葉は言うんだけど、あれって決まり文句じゃん、皆言ってたもん」

「マジか、皆同じセリフ吐くの?」

「ほとんど変わらないと思う。ニュアンスの違い?」

「えー何それ、年上にしようか考えてたのに」

「やめなやめな!前言った男いるじゃん?」

「あー!いたね!あの男はマジでキモい!イヤすぎる!」

「私もあの時どうかしてた!」

「アレは騙されたに近くない?いつも着けてるのに、目隠しが好きでーって言った瞬間ナシだったじゃん。信頼させてからの確信犯だよ」

「まさにソレ!大丈夫って信頼しきってる時にソレやられた。マジでアレが決めてで懲りた。年下の私みたいな無知な女をどう扱えばいいか知ってるんだろうね。アレぜったい常習だよ」

「その男、怒ってくるタイプじゃなくて良かったよね」

「それは本当に良かった。私の友達の男は言うこと聞かないとすぐ怒ってくるんだって。何もかもいいなりにしないと自分の身が危険だからって言ってた。別れたいのに別れてくれないんだってさ」

「それ酷すぎる。奴隷じゃん」



「私たちってさステータス気にしすぎじゃない?」

「だってそれくらいしか気にする事ないもん」

「それは言えてる。私たち今フリーじゃん?卒業まで思い出作ろうよ。ちゃんと遊んだ事ない気がする」

「それいいかも!よく話してるクセに遊んでないw男ばっかだったからね。酷いわ」

「じゃあ手始めに、土曜日遊ぼう!」

「いいよ!私タピオカコース希望⭐︎」

「お昼はオムライスコースで♡」

















 私の友達が今度結婚するんだ。

今日まで元気に過ごせて良かったねって思ってなんとなく昔を振り返ったら、とんでもない時期があった事を思い出して、今こうやって書いてる訳だけどさ…


あの時、本当に最低だったなって思う。

でもあの時に後悔を落とさなくて良かった。


落としていたら私も友達もずっとあの時に囚われ続ける事になっていたと思うから。

自分たちでコントロールできて本当に良かった。



お幸せにね




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紙片 春野 紫音 @haruno_rhythm

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