第8話 結果

「や~っと戻ってこれた~」

「しんどい・・・、足動かない・・・」

「ていうかなんだよあれ、なんであんなに校舎内回らされるんだよ」

「ほんとにな。上に行っては下に行って、下に行っては上に行ってを何度繰り返したことか」

「この学校何階建てだと思ってるんだよ」

「そうやって繰り返した結果ゴールが体育館て。冗談じゃねぇぞ」

「これを作った人は間違いなく性格が悪い」

「「「「「「「だろうな」」」」」」」


 と、各々がこのレクリエーションに対する愚痴を言い合いながら1年生たちが体育館に戻ってきた。どうなっていたのかは知らないが、あの先生のことだ、どうせろくな場所に置いていないのだろう。それにここはゴールだがゴールじゃない。この体育館の中にある鍵を見つけ出さなければならない。俺達は運良く見つけられたが、次もできるかと聞かれると多分無理だろう。あんな隅で影と同化していたら見つけるどころか視ることすら困難だろう。そんなことを考えていると、元凶からの指示がだされた。


 「お~いお前ら~。ここに来ただけで満足してんじゃねぇ~ぞ~。この中のどこかにある鍵を探せ~」


 その言葉を聞いて生徒たちは我に返り、わらわらと一斉に散らばって探し始めた。


 …鍵の存在すら忘れさせるほどのキツさとはいったいどんなものだったのだろうか。


 「鍵を探すのにまだ時間がかかるだろうから続きを「あった!!!」…早いな」


 一人の生徒が発見したのを皮切りに、どんどんとその場所に人が集まってきた。


 「おーいお前らー。鍵見つけたんだったらこっちに持ってきてみせろ~。そんで終わったらグループごとに並べ~。そこの4人も並べ~」


 そうなるともう終わったようなものなので、4人にも指示が飛ぶ。


 ……なんつータイミングの悪さなんだ。まぁ仕方ない、また今度聞くとしよう。


 「呼ばれてるな。仕方ない、詞音の昔話はまた今度聞かせてくれ」


 「…はい、。」


 少し嬉しそうな顔をしながら、詞音は頷いた。


 「よし。戻ろう」


 4人は生徒達の中に混ざっていった。


 1年生全員が体育館に集まり終えた後、勝者の表彰が行われた。学年主任が話終えた後、さっそく表彰を行った。発表するのは沢尻先生だ。


 「では、このレクリエーションで1番早く達成したグループをを発表していくぞ。1番早く達成したグループは~・・・・・・」


 発表するのをもったいぶりながら、先生は生徒たちを見渡しながら一番早く達成したグループのメンバーの名前を呼んだ。


 「神崎怜・佐双蓮・須夜崎美月姫・高城詞音のグループだ!!名前を呼ばれた生徒は壇上に上がってきてくれ!」


 俺達の名前が呼ばれた途端、全員が一斉に拍手を送った。そんな中俺達は壇上に上がり、横一列に並んだ。その横に沢尻先生が、紙束を持ちながら向かい合わせに立った。それに倣い、俺達も先生のいる方向を向く。


 「一番最初の達成おめでとう。早速だが賞品を渡していくぞ。お前たちに渡す賞品は・・・・・・、学食1ヶ月無料クーポンだ~!!!これで1ヶ月タダ飯だぞ?よかったな~!」


 そう言いながら先生は順番に俺達にクーポンの束を手渡ししていく。その間、いいな~という声や視線が聞こえたり、感じたりする。


 確かに大多数の生徒にとっては貰えたら嬉しいものなのだろう、なのだろうが・・・・・・正直いらない。昼食は自分で作れるし、時間もそんなにかからない。どうしよう、いらない。・・・まぁ、誰かにあげればいいか。そんなことを考えながら、チラリと横を見てみると、蓮と美月姫も困ったような顔をしていた。普段は二人ともあまり表情は変わらないし、今も赤の他人から見れば全く変わっていないように見えるが、親しい人にはよく分かる。あいつらも料理はできるし、自分で弁当を作ってくるからこれの処理に困っているのだろう。一方で、詞音は少し嬉しそうな顔をしていた。やはり一般的な学生にとってこれは貰って嬉しいものなのだろう。


 「今年のレクリエーションはこれで終了だ。これからオリエンテーションを行うから、レクリエーションをする前の並びに戻ってくれ。」


 沢尻先生に呼びかけられ、俺達は最初の場所へと移動した。


_____________________________________________________________________


 「よし、全員並び終わったな~。じゃ、これからオリエンテーションをやっていくぞ~」


 沢尻先生の開始の言葉により、オリエンテーションが始まった。


 「まず始めに、この学園の概要について話していくぞ。この学園は、『若いころから色々なものに触れ、経験してほしい』という理事長の思いから作られたものだ。なので、この学園の敷地内には様々な分野が学べる施設が多数設置してある。開校している時は遠慮なく訪ねてみてくれ。次に、我々教師の、君たちへの対応について話しておく。我々は、君たちを信頼し、選択肢を委ねて傍観に徹する方針で活動している。たまに口を出すこともあるが、基本的には傍観者のスタンスでいる。それともう一つ、我々は受けたものは同じもので応えることにしている。努努忘れないように」


 つまりここの教師陣は、信頼には信頼で応え、裏切りには裏切りで応えるということか。なるほど。優しくも厳しいとはこういうことか。ドライだと思われるだろうがとても現実的だ。しかもこの学校では様々な分野に触れることができる。下手な大学よりよっぽど有意義に学べるだろう。やはりこの学校を選んで良かった。


 先生の話はまだまだ続く。


 「次に、今年の行事について説明していく。じゃ、行事年表を配っていくぞ」


 そう言った後、先生たちはプリントを配っていき、年間行事の説明と先生からの連絡を聞いて、今日の学校が終わり、俺達は帰路に着いた。その後はいつもの3人でそれぞれの家へ帰宅し、各々の夜を過ごし、床に着いた。


 






 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ハイスペック高校生、今日も知らずに覇道を歩む 古橋庵 @Takhasi

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ