一度死んだけど生き返って夫のもとへ
コウキシャウト
一度死んだけど生き返って夫のもとへ
突然ですが私、生き返りました。不運にも結婚直後、私は夫と共に交通事故に巻き込まれ、夫は軽傷で済んだものの私は不運にも、帰らぬ人となってしまったのです。しかし事故から少し経ってから私は甦り、信じてもらえないかもしれませんが今や空も自由に飛べるようになりました。幽霊かと思うかもしれませんが、壁や障害物を通り抜ける事は出来ませんし、黒い長髪でもなく、当然白いワンピースも着てません。何故かやたらとお腹が空くのが気になりますが。
風に乗り新鮮な空気を吸いながら早速夫の元、つまり生前二人で住んでいたアパートに向かいましたが、窓から見る限り夫が居る気配が全く無い。もしかすると、引っ越しの最中かも。そう、夫とは亡くなる直前も引っ越しの話をしており、引っ越し先の下見も行い住所も知っていた私は早速記憶を頼りにそこへ向かったのです。
住んでいたアパートよりもずっと立派なマンションの目の前には引っ越し業者のトラックが何台も停まっており、トラックと部屋を何度も行き来しているのであろう業者の人々が爽やかな汗を飛ばしてます。これはもしかすると・・?
幸いな事に開いたままの自動ドア、青いシートに覆われた廊下を通り過ぎ、業者の方には「お世話になってます」と一応小声で挨拶し、エレベーターに彼らと一緒に乗って降りればすぐ近くに夫、そして私が住むはずだった部屋が有りました。夫はまさに引っ越しの最中で、自動ドアと同じく開いたままのドアの向こうからは少し懐かしい夫の声が・・。素晴らしいタイミング。
所狭しと置かれた段ボールで渋滞する廊下を通り抜け、声が聴こえるリビングに私は向かいました。目に見えるのはダンボールを抱えたり家具を置く2,3人の業者の人・・・そして、夫の背中。もうすぐ逢える。怖がらないでね、決して幽霊なんかじゃないし、私はちゃんと生き返ってあなたの元に帰ってきたんだから。寂しかったでしょ?
パチン!
「あれ、どうかしたんですか?」
「いや~蚊が近づいてきたので」
「すみません、搬入作業でドア開きっぱなしですもんね。すぐ終わらせます!」
(ちっきしょ~、今度はちゃんと人間に転生してあんたの所に帰ってくるから!)
一度死んだけど生き返って夫のもとへ コウキシャウト @Koukishout
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ネクスト掲載小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます