健康をもたらす陰謀論(びょ〜き)
@HasumiChouji
健康をもたらす陰謀論(びょ〜き)
首謀者と見做された
だが、科学の専門家ではあっても、犯罪の専門家では無い以上、
「あのねぇ、センセ……あなたがSNSに書いた事を読ませてもらいましたが……二言目には『正義は危険』『正義は暴走する』とか言ってる人が、何て真似やらかしたんですか?」
「私達がやったのは、正義の暴走じゃありませんよ。悪意の暴走です」
「はぁ?」
この教授様は、現在、世界的に流行っているνππνウイルスを「ただの風邪だ」と主張しているか、何かの陰謀論を唱えているか、さもなくば間違った愚かしい対策を唱えている……とSNS上で言われている(実際は、そうは思えない)野党議員やジャーナリストを拉致監禁して、「教育」と称する洗脳を行なったのだ。
もちろん、犯行メンバーの中には、科学の専門家は何人も居たが、洗脳の専門家は居なかったようで、被害者への洗脳は失敗した。……被害者ほぼ全員が、ノイローゼとパニック障害を発症したが。
冗談じゃない。「νππνウイルスなど、ただの風邪だ」「νππνウイルスの流行や危険性など、科学者によるデッチ上げだ」と云う陰謀論を、どこの国でも一定数の連中が信じているような御時世に、本当に科学者達が陰謀を企てていたなんて事が明みに出れば何が起きるか、って想像力すら無かったのか?。
「そもそもですが……ストレスを受けると病気に罹りやすいと言われてますが……何故だと思います?」
「はぁ? 何の事ですか? 貴方達が起こした事件と関係が有る話ですか?」
「ええ。……ストレスを受けるとは、体や脳が臨戦態勢になるようなモノです。一時的・短時間で済む筈だった臨戦態勢に常時なっていれば、体が無事で済む筈が有りません。『長期的な健康』よりも『今のこの異常な状況から逃れられれば良い』と云う事を優先する状態に長期間置かれるようなモノですので」
「ええっと……それで……」
「現在、世界的に流行しているνππνウイルスは、他の病気に比べて、このストレスの影響が大きく出るのです。流行が始まってから2年目に、ある論文が科学雑誌に投稿されました。例えば……マスクをすれば、νππνウイルスに感染しにくくなる。この事は確かだ。しかし、何故か、
「へっ? 聞いた事が有りませんよ、そんな話」
「ええ、世界中の科学者が協議して、この件に関する研究を続ける一方で、この論文の掲載を取り止めたのです」
おい、待て、本当に「科学者達による世界的な陰謀」が有ったのかよッ‼
「そして判明したのが……
「はぁっ⁈」
「こんな事が許せると思いますか? 私も科学者です。人間社会の善悪など、自然現象や科学的事実からすれば、何の意味も無いモノだ。それは十分に理解しています。人間社会の約束事など自然現象や科学的事実などからすれば無意味な人間社会の約束事に過ぎない……だが……科学そのものさえも、自然現象や科学的事実からすれば、人間が生み出した他の無意味な思想や学問と同程度には、無意味だったのですよ。
「え……ええっと……その……」
「刑事さん、もし、貴方が、
「で……貴方が、政治家やジャーナリストを拉致した理由は……」
「決ってるじゃないですか。科学的な思考が
……何てこった。
しかし……警官としてやるべき職務の範囲を超えているが……この
「ところで、貴方の共犯者が誰かを調べる為に……貴方のSNSフォロワーの事も調べたのですが……」
「それで……」
「貴方の主張の是非はともかく、貴方の性格に問題が有る事は、御自分でも自覚されていると思いますが……」
「まあね……」
「そのせいか、貴方をかつてSNSでフォローしていたが、今はブロックしている人が少なくないようですな」
「それが何か?」
「どうも、貴方をかつてフォローしているが今はブロックしている人達の方が、今でもフォローしている人達より……ええっと良く判んないんですが、『統計的に有意』とか呼べる程度には……
「残念ですが、それは仕方ありません。科学的思考が出来る事そのものが、罹患した場合の重症化や死亡のリスクを上げます。
……。
…………。
……………………。
何て、こった……。
もし……ストレスを受けていない者ほど、νππνウイルスに耐性が有るのなら……人類の中で最後まで生き残るヤツの候補は……この教授かも知れない。
そして、そうなっても、この教授は……自分が、何故、νππνウイルスのせいで死なないかに気付かないだろう。
クソ、こいつは本当に、超頭のいい超馬鹿野郎だ……。
こいつは……見聞きした事を、自分の思い込みに沿った形に「翻訳」ないし「改竄」する能力が有るらしい……。
待て……なら、こいつが今まで言った事は、どこまで信用出来るんだ?
そして、これからの取調べは……一体全体、どうやればいいんだ?
健康をもたらす陰謀論(びょ〜き) @HasumiChouji
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます