戦で家族を失った少女『ベル』。最後に残された兄の『アラン』すらも失いそうになった時、偶然に出会ったのは銀色の魔法使い『シャンタル』と、同行者の傭兵『トーヤ』だった。傷を癒しつつ4人が交流していく中で、ベルとアランの兄妹は己が進むべき道や運命を、自ら選ぶ時が近付く――。
『黒のシャンタル』シリーズの外伝作品ですが、本編開始前の前日譚ということで、ひとまず独立した物語としての感想をお送りします。
まず非常に読みやすく、テンポの良い文章でした。それでいてこの世界の文化(飲食や入浴や治療など)がリアリティをもって表現されていて、最小限の描写で場面を明確に描き出すテクニックは、素晴らしいの一言です。
最後まで疑問に思ったり違和感を持つことなく、スムーズに読み進められました。そうした内容にするのは、基本的なことでありながら小説において重要なポイントです。それを為し遂げているのは、実にお見事でした。
そしてそれはキャラクター像においても同じことが言え、ベルやアラン、シャンタルやトーヤはそれぞれ個性があって魅力的だと感じました。
ちょっとした台詞や行動だけでも人柄が垣間見え、中編の内容でありながら彼ら4人に愛着や興味を持つことができました。これも簡単なように見えて、高度なテクニックがないと難しい離れ業です。
全体的に丁寧さや優しさに満ちており、この作品を読んで興味関心を持った人には、是非とも本編を読んで頂きたい。本編への誘導として、合格点の『エピソード0』だったと思います。
ただあえて指摘点を挙げるとするのなら、旅立ちの物語としては印象的なドラマや大きな見せ場がなく、そこが惜しいかなと感じました。
丁寧なのは良いことですが、逆を言えば地味で平坦な内容です。アランが傷を癒し、ベルと共に覚悟を問われ、そして仲間になる。兄妹の内面はシッカリと描かれていましたが、テーブルで向き合って話し合って「じゃあ仲間ね」というのは、人生を変えるほどの劇的な出会いや、壮大な旅立ちとまでは言えません。
作風の問題もあるとは思います。ですが何か大きな事件や山場を4人で乗り越えた末に、それぞれの必要性を実感して仲間になる流れの方が、『小説』としては自然だと感じました。
とはいえ、文章やキャラクターが魅力的なのは間違いないです。シャンタルの秘密や、今後の4人の冒険や行く末など、非常に興味や関心が持てる内容でした。
私は異世界ファンタジーと言うジャンルが苦手です。
主人公は何故かスキルと言う特殊能力を持っておりチートなものもあります。
しかし、この作品に登場する人物達は1人を除いてスキルは持っていません。
皆、普通の人間として自分で考え行動します。
そして私が1番お伝えしたい事は作品のリアリティです(^^♪
それは物語の世界観や舞台設定や人物描写、その思考にまで及びます。
特に人物描写では各人物を見事に描いています。
この作品は外伝として描かれています。
私は本編の第1部から読み始めましたが、
その中にベルと言う幼い少女が登場します。
この子は口が悪くてお転婆ですが、とにかく可愛いのです(^.^)
それでこの子の視点で描かれた外伝があるとの事で読み始めました。
この作品を読んで少しでも興味を持たれた方は、
ぜひ本編もお読み下さい。
損はさせません(*^^)v
私は異世界ファンタジーやその読者の方を否定している訳ではありません。
人にはそれぞれの価値観があります。
私は他人の価値観を否定するつもりはありませんし、自分の価値観を押しつけるつもりもありません。
これを読んで不快に思われた方には謝罪いたします。
これは私が勝手に書いたもので、作者の方には関係ありません。
その点だけはご了承下さい。