第3話 反理の刃
「何ですか、これ?」
カプセルの中には何やら折れた刀の破片みたいな物が入っていた。
「さっき聞いたと思うけど、これは反理の刃と言ってね、ちょっとこっちに来てご覧。」
今の所何に使うのか全く想像がつかない。
オキミツさんの前まで行くと、左手を出して欲しいと言われたので、オキミツさんの前に差し出したのだが、
「え、?ちょ、ちょちょちょっと待ってください!」
「どうしたんだい?」
「ひとつ聞きたいんですが、これから何しようとしてます?」
「まぁまぁ、」
え、いや。
まぁまぁじゃないでしょ?
この人僕の手切ろうとしてなかった??
「鐡くん、柊ちゃん。堺くん押さえて。」
「はいはーい!」
え、なんでこの人たち協力しちゃってんの?
この人今日会ったばかりの人の手切ろうとしてるんだよ?
結局の所病に犯された今の体では抵抗できる訳もなく、手の真ん中より少ししたのところを縦に切られた。
「い、痛くない、、。」
「軽く表面を切っただけだからね、多少血は出るけど痛みはそんなにないはず。それこそ癌の痛みに耐え続けてきた君にとっては痛みを感じないも同然だろう。」
これで、何か変わるんですか?
「君の寿命を伸ばした。」
「へー。そんなことできるんですか。」
って、え????!?!?!?!?
「え、今なんて?」
「君の寿命を伸ばした。とりあへず30歳までは生きていられるようにしてあげたよ。」
「え、何ですかそれ!?」
生きられるようにしてあげた??
「え、どういうことですか!?」
「これのおかげだよ。」
オキミツさんは、反理の刃に付いた僕の血をふき取りながら教えてくれた。
「戦国武将で武田信玄は分かるよね?彼は元々戦いが強くなかったんだ。ある戦のときに、刀で切られそうになった武田信玄は自分の手を前に出して命を守った。その時に武田信玄の手には一本の線が刻まれた。今ではその線を運命線と呼ぶ。それ以降武田信玄は強くなったんだ。その時に手を切った刀の破片がこの反理の刃。その名の通り理に反する力を持った刃でね、人の手にこの刃で線を入れるとその線にちなんだ能力を得ることが出来る。」
その割には、体が軽くなった感じはしない。
「僕の体、本当に良くなったんですか?」
「私は癌を直したわけじゃないからね、長く生きられるようにしてあげただけ。要するに、病院へ行って手術をすれば100%の確率で成功するって事だよ。」
成程。
「じゃあ私は表の方行くから。鐡くん、柊ちゃん、後はお願いね。」
そう言ってオキミツさんはカフェの方へ戻って言った。
どうしよ、帰った方がいいのかな?
ここに残る理由がないしな、、。
あ、でも何かお礼くらいは。
「何か僕に出来る事ってありますか?」
柊さんは急にニコニコし始めて、
「じゃあ丁度いいわ。ここのアルバイトをしてくれないかしら?」と言われた。
アルバイトかぁ。
「それは、」
「それは難しいんじゃないかなぁ。彼見た感じ高校生だよ?」
鐡さんがフォローを入れてくれた。
「最近はアルバイトOKの高校もあるって聞くわよ?こんな所に来るのは大人しかいないから友達とかにバレることもないし、堂々としてればバレないわよ。ほら、背高いし。」
た、たしかに…。
「難しいよね?堺くん。」
鐵さんが再び助け舟を出してくれたが、
「や、やらせて頂きます。」
誘いを受けることにした。
ぺこりとお辞儀をした後、顔を上げると柊さんが「やったー」と喜んでいた。
と、いうより
「どうして僕なんですか?」
アルバイト経験は無いし、そんなに役に立てないと思うけど、、。
「事情を知ってる人の方がやりやすかったりするのよ。カフェとかも表面上ではそうしているだけで、本職は皆こっちだからね。これからは君も逃亡者チームの仲間入りだ!」
「え??逃亡者チーム!?」
聞かされてないのだが?
奥で鐡さんが哀れみの視線を向けてくる。
「あ、そうそう私たち今警察から逃げてる状態なの。政府の1番上の人たちに反理の刃の事を知られてるから。オキミツさんが命を狙われているんだよね。」
!?
もう色々起きすぎて頭がパンクしそうである。
話を聞いた感じ、『反理の刃は便利なものであると共に、とても危険な物だから処分するべき』と言うのが政府の人達の考えだそうだが、反理の刃は絶対に壊れないように作られてあって封印するか、唯一の使用者である沖 光希を殺すかの2択しかないらしい。
一瞬手放したらいいんじゃないかと思ったが、やっぱり先祖の形見か何かなのだろう。なかなか手放せず持っているといった感じなのかな?
「私は、死ぬくらいなら捨ててしまえ!って言ったんだけど、」
言ったの!?
「呪いなんだって。」
呪い?
「反理の刃を使えるのは武田信玄の手を切った武士の血族だけしか使えない。そして1度でも反理の刃の力を使ったら呪いを受けることになっているらしいの。それが、反理の刃から使用者(今で言うオキミツさん)が半径1km以上離れていると、聞き手が段々腐食されていく呪い。そして、聞き手が完全に腐食された時、使用者は絶命する。」
そんなの、死の一択しかないようなものじゃないか、、。
「1回盗まれたんだよね、政府の反理の刃を奪取することを目的とした専用の特殊部隊に。私達は『ハカ』って呼んでる。
まぁ、細かい事は後々説明するから、今日のところは帰っていいよ。明日は18時にここへ来てね。」
「分かりました。」
癌はまだ体の中にあるので、途中ふらつきながらも帰ろうとしたら、今度は鐡さんに止められた。
「堺くんちょっと待って、携帯持ってる?」
「持ってます」
「LINEのグループ招待してあげるから、そこでも色々説明してあげる。」
ポケットから携帯電話を取り出して、LINEのQRコードを見せると、グループの招待が来た。
「このアイコン誰が選んだんですか?」
鐡さんがチラチラ柊さんの方を見ている。
まぁ、この人しか居ないわな。
グループのアイコンは死んだゾンビの絵にしてあった。
家に着くと、母さんに一時間かけて手術をしたら治ることを説明した。
ややこしくなるので、オキミツさんたちや反理の刃の事については伏せておいた。
明日成功しなくてもいいから手術をしてくれと土下座して頼み込んだら多分医者の先生もOKしてくれるだろう。
肉体的にも精神的にも疲れたので、自室に戻ってすぐ僕は眠りについた。
---追記---
1話から3話までは大まかな設定をストーリーとしたものです。4話目から本編と言った感じになります。
『ハカ』VS『逃走者チーム』の逃走劇を楽しんでください(*^^*)
あなたの線 のーみん @no-min
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