東亞の覇者

__2089年5月2日 帝都経済新聞


―革命広場前にて大規模なデモ活動―

メーデーに合わせての決起か―


昨夜東海省(中華連邦)革命広場前にて発生した暴動を受け、英連邦は「人道的見地から容認できない」としつつも、「我々とは政治社会体制及び価値観を異にする中華の国内問題。対中非難にも限界」と指摘。これに対し日本政府は「大変遺憾である。西側諸国等に対中制裁措置等の検討を強く所望する」と対中方針を改めて世界へ発信しました。


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何故こんな事に...


旧オサカ行きの便をじっと見つめ、私は頭を抱えた。この憂鬱な原因はただ一つ、身の丈に合わぬ依頼内容のせいである。


「同志斉藤、おめでとう。君は先月の活躍が中央の目に留まり、オサカでの活動が認められた。大まかな活動内容は、本部の視察を兼ねた治安維持活動...つまる所デモ活動の収束、だ」


新合衆国が建国され早数十年。


アメリカ合衆国の崩壊を合図に開始された第二日中戦争は国家の分割統治と言う結果で終わりを迎え、その国土は新合衆国、中華連邦、ソビエトに分たれた。


延命に延命を重た老龍は、ついに息絶えたのだ。


その後に行われたのは、分たれた各ブロックによる永遠とも思えるような代理戦争である。

大国の思惑により数十年と小競り合いを繰り返した結果、同胞たちは僅か4400万人にまで減少。


つまるところ、我々は絶滅の危機に瀕している。

どうやら世界もそれを歓迎しているようで、我らに救いの手を差し伸べる者は誰一人として現れない。


過去より引き摺った言動第二次世界大戦の結果だろうか?


それにしては、余りにも惨たるものであるが...


「…クソっ」


何故殿下は我らを見放したのか。

何故世界は見て見ぬふりをするのか?


悪態を吐く他、無かった。

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