「という物語を、休憩をいただいている時に書いてみたのですが。いかがでしょう、ご主人様」


「いかがと言われても」


 魔法薬研究の手伝いの合間に、まさか物語を書いていたなんて。我が帽子ながら、その行動力はすさまじい。というか、物語を書くにしても、どうしてホラー? もっと……こう……主人との心温まるエピソードとか……。


「……あなた、もし私が新しい帽子を買ったら、私を殺そうとするの?」


「……? どうしてそんなあり得ないことを? 私は、ご主人様の所有物でございます。私の幸せは、ただ使われることではなく、おそばにいられることです。それなのに、ご主人様の不利益になるようなことをして、一体私に何の得がございましょうか」


「……そっか。それならいいや」


 ほっと胸をなでおろす。彼女に限ってあるはずがないと分かってはいるのだが、物語があまりにもリアルすぎて不安になってしまった。


 ……まあ、そもそも、この子以外の帽子なんて、私に必要ないのだが。


「さて、ご主人様。そろそろ私は魔法薬の効果が切れてしまうのですが、何かお申し付け等ありますでしょうか?」


 私の顔を覗き込みながらそう尋ねる彼女。私と同じ顔のはずなのに、どこかが違うような気がする。もしかしたら、双子の妹って、こんな感じなのだろうか。今は主人とその所有物。でも、いつかは…………なんてね。


 そんなことを思いながら、私は彼女に申し付けを一つ。


「この後、晩御飯の買い物に行く予定だから、付いてきて」


「はい。かしこまりました」


 笑顔で返事をする彼女。次の瞬間、彼女の姿は消えてしまった。後に残るのは、見慣れた三角帽子。大切な、大切な、三角帽子。


「じゃあ、行こうか」


 私は、彼女を頭にのせ、買い物に行く準備を始めるのだった。

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三角帽子の幸せ takemot @takemot123

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