②
「という物語を、休憩をいただいている時に書いてみたのですが。いかがでしょう、ご主人様」
「いかがと言われても」
魔法薬研究の手伝いの合間に、まさか物語を書いていたなんて。我が帽子ながら、その行動力はすさまじい。というか、物語を書くにしても、どうしてホラー? もっと……こう……主人との心温まるエピソードとか……。
「……あなた、もし私が新しい帽子を買ったら、私を殺そうとするの?」
「……? どうしてそんなあり得ないことを? 私は、ご主人様の所有物でございます。私の幸せは、ただ使われることではなく、おそばにいられることです。それなのに、ご主人様の不利益になるようなことをして、一体私に何の得がございましょうか」
「……そっか。それならいいや」
ほっと胸をなでおろす。彼女に限ってあるはずがないと分かってはいるのだが、物語があまりにもリアルすぎて不安になってしまった。
……まあ、そもそも、この子以外の帽子なんて、私に必要ないのだが。
「さて、ご主人様。そろそろ私は魔法薬の効果が切れてしまうのですが、何かお申し付け等ありますでしょうか?」
私の顔を覗き込みながらそう尋ねる彼女。私と同じ顔のはずなのに、どこかが違うような気がする。もしかしたら、双子の妹って、こんな感じなのだろうか。今は主人とその所有物。でも、いつかは…………なんてね。
そんなことを思いながら、私は彼女に申し付けを一つ。
「この後、晩御飯の買い物に行く予定だから、付いてきて」
「はい。かしこまりました」
笑顔で返事をする彼女。次の瞬間、彼女の姿は消えてしまった。後に残るのは、見慣れた三角帽子。大切な、大切な、三角帽子。
「じゃあ、行こうか」
私は、彼女を頭にのせ、買い物に行く準備を始めるのだった。
三角帽子の幸せ takemot @takemot123
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