第12話 子供たちが危ない(その3)
花音の父と母は結城の背後に潜む邪悪な低級霊達と対峙していた。学校の裏庭でそこには、宮木と結城、花音の両親だけだ。
結城はその者達に憑依され、その表情は冷淡でかつ、異様な雰囲気でもあった。宮木は結城の表情から、恐ろしさをも感じていた。
父「我々が、普通の人ではない事、わかっているのだろう。さぁ、出てくるがいい。そうしたかったのだろう。」
そう、父が口を開くや否や結城の声を使い表情までもその者達の表情となる。。。ニヤリと笑みを浮かべながら父に向い話し始める。
霊「やはり、我らが思う通り普通の人間ではないな。。。何をしにやって来た!あの娘の方も只者ではない。だから、娘の方は仲間に任せ、お前達から離れさせた。我々の邪魔をしにきたな!邪魔はさせぬわ!」
父「邪魔をしに来たわけではない。君達の心を救けに来たんだ。」
霊「な、なに?、、救けるだと、、何の話しだ?、、、」
父「君達は闇に覆い尽くされ、自分を無くし彷徨っているだけだ。だから、その闇を取払えば元の自分に戻れる。」
父の話す事を側できいている宮木は表情をしかめていた。
宮木(闇。。。?元に戻るとは?一体どういう事なんだ。。?)母が宮木の様子を見て横から話す。
母「闇は、生きている人の心の隙間から入り込むの。それは、ちょっとした気持ちにね。」
父「そうだ。日常にあるあらゆる人の感情。それも負の感情。嫌な思いや、不安や、妬みなど、友達同士のトラブルや大人社会での人間関係など、その他にも沢山のきっかけ、ほんの些細な隙間から入り込む。」
母「そして、どんなに小さい黒い点であろうとも闇はそれを大きくし、さもその人が思っているように仕掛けてくるの。闇に捕われると、中々抜けだせず捕らわれたまま、この世を去ればそのまま、操られ本来の帰る所はおろか、自分自身を見失うのよ。」
霊は結城の身体から出てきてその姿を父と母に見せた。勿論、宮木には見えない。憑依を解かれた結城はその場で倒れる。その結城の身体を宮木が支え背後から、祐一と花音達が前に立ちはだかった。
祐一「父さん!女の子に憑依していた霊はまだいる!ここに戻っているはずだ!」
宮木が尋ねる。「中村は大丈夫なんだろうか。無事か?」
それを聞いた結城が不安そうに皆を見ていた。
みつき「せんせい。。。私は大丈夫。。です。。」
花音の後ろから弱々しく梨菜に支えられながら顔を見せる。
宮木と結城は「よかった。。。」と安堵した。
そのうちにみつきに憑依していた霊が戻り、1つの塊となり姿を現した。それは、真っ黒な塊でしかもはや過ぎなかった。おどろおどろしいその塊が父と母を飛び越え花音へと襲いかかってきた!
すかさず、花音の背後から、大きな龍が姿を出しその頭には慎太郎がいた。そして、飛びかかる真っ黒な塊に龍は向い、慎太郎が片手を前へだすとその手には刀が現れ、その刀を一気に降り下ろす。
おどろおどろしい声を上げながら龍と慎太郎を呑み込んでいった。
花音「龍神様!慎太郎様!!」
花音が不安な表情を浮かべると両親と兄祐一は「大丈夫!」と言うような表情を浮かべながら、次に各々が持つ、札、数珠をその塊に投げる。
真っ黒な塊の内側から光が見えると投げた札に光は移りその光は1つの糸のようになりながら、塊のまわりをぐるぐると巻いていく。
やがて光で覆われた黒い塊は消滅していった。光の中から龍と慎太郎は出てきた。そして慎太郎の側には可愛らしい、幼い女の子が座っていた。この子こそ、みつきにくっついていた女の子だった。そして、光の中からは、多くの魂とも言うような白い珠が宇宙高く登っていくのが見えた。
宮木と結城には眩しい光が見えており、それをぼんやりと眺めていたのだった。
慎太郎は龍神の身体から降り皆の前に姿を現した。その姿は薄っすらと宮木にも見えた気がしていた。
慎太郎「皆無事なようだね。お疲れ様。今回も無事にお仕事終了だね。
あ、この子がみつきちゃんに謝りたいんだって。なんでも、寂しくて彷徨っていたら、同じような気持ちの子をみつけたんだってさ。まるで「自分だ!」って思ったらいつの間にか、一緒に居て離れられなくなったんだそうだ。」
女の子はみつきの前に立つ。が、みつきには見えない。。。花音が様子をみつきに話す。女の子はみつきに頭を下げポツリと謝る。それを花音が話し伝えた。
みつき「怖かったけど、戻れてよかったね。」そう、言った。
女の子は皆にお辞儀をすると、そこには迎えに来ていた方々がいる。女の子の両親だった。
慎太郎「では、無事に連れて行ってあげてね。」
両親に連れられ、宇宙へと上がっていくのが花音達に見えた。
女の子「ありがとう。。。」小さく呟き、微笑んでいた。。。
辺りはすっかり陽も落ち、空には月がぼんやりと姿を見せていた。
父「今宵は三日月だな。。。やれやれ。。。皆、帰ろう。。先生達も無事で何よりだった。。よかった。」
父に連れられ花音達は宮木達に背を向け帰りかけたその時、学校の門の片隅から葵が顔を出す。
葵「もう!皆して僕を置いて行っちゃうんだもんな。どんなに、心細かったか、、、怖かったよ〜っ!」
泣きながら、花音に抱きつく。そんな葵を花音は「よしよし。。ごめん。。」そう言いながら頭を撫でた。
霊はそこら中にいる。それは良い霊もいるし、人に憑依して悪さする者もいる。。
闇とは一体なんなのだろう。。。
花音はそんな事を考えながら、家路に着くのだった。。。
小さな龍の物語 中筒ユリナ @ariosu-siva
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