学生の頃は『夏祭り』って響きだけでもう恋の予感がしたものです。
学生と言っても、高校生くらいまでね。大学生ではないんですよ。
お母さんに浴衣を着せてもらって、慣れない草履を履いてね、髪も何かそれっぽくアレンジしてですよ。ドキドキしながら行くわけです。もちろん一緒に回るのは『友達』ではあるんですけど、そういう時って何かうまいこと女友達だけじゃなくて、男の子も一緒に行くことになってたりして。
さて、本作ではもうこの『男の子とも一緒に行く』というのが既に仕込まれている状態です。何せ真の目的は『恋が進展しないあの子とあの子をくっつけちまおうぜ』なんですから。
そんなこんなで夏祭りに行くわけですが……、
ターゲット、なかなか打合せ通りに動いてくれません!
もう、馬鹿!女の子が浴衣を着てきたら絶対言う台詞があったでしょ!
なんて読者はやきもきですよ。
それっ、そこだ!言ったれ!って。
でも、このもどかしいのがまた可愛いんですよね。
そんなもどかしくも可愛らしい恋のお話です。そして、実は同時進行でもう一つの恋も動き出しているような――?
全6話、15000字くらいのお話ですけど、読みごたえも十分です。
私の住む街では、去年も今年も夏祭りがなく、花火も見られませんでした。
このまま「夏」を彩る大切なピースをはめられないまま秋を迎えることに、ひそかに寂しさを感じていました。
ですが、こちらの作品を読んで、ようやく「夏」が完成したような、そんな満たされた気持ちになりました。
内容としては、中学生5人の恋物語になります。
勇気が出せず、一歩を踏み出せない子。
恋心を向けられていることに気づかない子。
どの子も純粋で可愛らしく、読んでいてつい笑みを誘われます。
初々しい、爽やかな夏の恋物語です。
お手に取ってみてください。