第一章 第肆話

天空で光る夕日が山の影に消え始める。 空は少しずつ、少しずつ、暗くなってゆく。 5時のチャイムで家に帰る子供のように、その光景で私は初めて足を止めた。 激しく呼吸する。 整えた髪は跡形もなく乱れ、汗が顔面を洗い流すように流れてゆく。息切れし、汗も滝のように流れている。 だけど、私は疲労感なんてものを感じず、 野山を駆け登ったような気分だった。

どうせなら、このまま走り続けたい。 どこかで倒れ死ぬまで、走り続けたい。 辛く私の心はそう願っている。

後ろに振り向き、遠くに見えるアパートまで歩いた。


片っ端から一階の知らない人の部屋の扉を開けようとする。 開かない。これは想定内のことだ。 私は倉庫に向かう。 木造の倉庫のドアにはカギはかかってない。暗い倉庫の中には何かもわからないものが散らばっている。 「これだ!」 私は角に放置された錆びかかった斧を手に取る。

この世界には私しかいない。 理由はないけど、私の勘は断言してる。 「だから。。」斧を片手に私はさっきの扉の前に立つ。 「何をしてもいいんだ!」私は強く斧を扉に投げおろした。丁番がカラスのように砕け散って、ドアがバタンと倒れた。 私はドアを踏み倒すように部屋に足を踏み入れた。

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東京の地平線 輝空歩 @TS_Worite

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