蝉の声と夕暮れと安い酒と一と時
白川津 中々
■
夕暮れを窓から眺め蝉の声を聞く
ウィスキーが沁みる。安い、酔うためだけの、色のついたアルコールだが、美味い。暑さの余韻が酒の味を変えるのだろう。落ちかけている太陽も、薄水色の空も、酒をすすめる。
今日は特に何かある日じゃなかった。朝起きて、食事を作って食べて、買い物へ行き、洗濯と掃除をして、音楽を聞いて、食事を作って食べて、少し眠って、起きて、食事の準備をして、シャワーを浴びてから本を読み、そして今、酒を飲んでいる。日毎、何かに急かされ、焦り、落ち込んだり怒ったりしているが今だけは、ゆるやかな時間に心が落ち着く。
明日からはきっとこうはいかない。また、何かに急かされ、焦り、落ち込んだり怒ったりする毎日が始まる。だけど、今は、今だけは、全てを忘れて、空を見ていられる。蝉の声を聞きながら、暑さの余韻に浸りながら。
蝉の声と夕暮れと安い酒と一と時 白川津 中々 @taka1212384
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます