第5話 『チート薬師のスローライフ~異世界に作ろうドラッグストア~』

「チート薬師のスローライフ以下略」は、小説家になろうで連載され、現在は書籍化・コミック化もしている人気作品だ。


2021年7月~2021年9月までの夏アニメ枠でアニメ化されて放送されていたので、見ていた人もいるだろう。


今回、そんな「チート薬師のスローライフ」のアニメを12話+オーディオコメンタリーの13話まで全て見終わったので、感想を書き殴っていこうと思う。



ストーリー:★☆☆☆☆


主人公のレイジ(本名:桐尾礼治)は、現代日本でブラック企業の社畜営業マンとして働いていたが、突如として異世界転移し、そのまま居座った豪胆な男である。


異世界転移する際に授かったのは、「鑑定」と「創薬」のスキル。それらのスキルを駆使して、異世界にドラッグストア「キリオドラッグ」をオープンさせ、客の悩みを解決していく、というストーリー。


ストーリーに捻ったものはなく、どれもレイジが作る薬によって解決する。


レイジのスキル:創薬によって、同じようなアイテムを集めて毎回同じ調薬シーンを見せられてハイ解決! で終わる。


レイジが創薬する薬は、現代社会で言えば「冷えピタ」や「日焼け止め」「栄養ドリンク」など、どこかで見たことがあるもの。


読者との共起性は非常に高いが、意外性が無いのに加えて創薬シーンに何の捻りもないから、ストーリーへの面白さが全く感じられなかった。


キャラクターの悩みも、ストーリーが進んでいると「はいはい、あの薬を作るんでしょ」と予想でき、それがそのまま描かれるため、意外性は皆無。


まさに「山なし、落ちなし、意味なし」のヤオイを体現しているストーリーだった。


ノンストレスという点で言えば、近年見たアニメの名でもぶっちぎっている。何しろ、一話前のストーリーが思い出せないほど薄っぺらいのだ。


作業しながら見るには、ベストなストーリーだった。


ただ、ストーリー構成で意味がわからなかったのが、主人公のスキルやバックボーンが説明されたのが、最終話である12話だったという点だ。


主人公が異世界転移していたのは何となく理解していたのだが、何のスキルを使っているのか全く描写されないので、何か勝手にダンスしていたら薬を作れるやべー奴としか認識できなかった。真っ先にスキルの説明せいや。


作品を知っている前提でストーリーが進むので、初見に対して親切心が欠片も感じられないのは、断言しておく。



キャラクター:★★☆☆☆


キャラクターに関しては、可も無く不可も無く。普通すぎて記憶に全く残らなかった。


主人公のレンジは、主人公としてフラットな立場にいるのに加え、クレーマーな客にはビシッと言う場面もあるので、好感が持てる。


ヒロインはふたりいるのだが、幽霊のミナ、人狼のノエラは好みがわかれるだろう。


特にノエラは意図して子供っぽく描かれているので、薬を勝手に飲んで事件を起こしたりする場面が非常に多い。


子供らしいといえばらしいのだが、幽霊のミナは100年以上生きていてノエラと同じように試薬品を勝手に飲んだりするのだから、店員としての常識がなさ過ぎて非常にイライラした。


物語のためにキャラクターを動かしているような印象も随所にあり、薬を扱うからこその注意を主人公のレンジが全く気にかけていないのも気になった。


「チート薬師のスローライフ」で唯一評価できたのは、魔王だ。


どれもこれも魔王=美少女。主人公に一瞬で惚れるチョロイン。


そんな構図に飽き飽きしていたからこそ、魔王が男の子であるだけで好感を覚えた。魔王も子供っぽいのだが、聞き分けが良かったりと物語をそこまでかき乱すわけでもなかったので、いて欲しい時にいると良い味付けにしてくれる調味料のような存在だった。


魔王以外は、主人公が何の苦労もなく作った薬で解決しただけで惚れていくので、気持ち悪かった。情緒が不安定すぎる。


惚れる場所、あった……?



作画:★★★★☆


明らかな作画崩壊は見られなかった。


全体的に、スローライフらしいのんびりとした作画なので、作画崩壊していても許容できる作風だったのも影響している。


アクションシーンは全く無いので、そういう意味でも作画に対して期待するものは無い。



演技:★★★★★


13話のオーディオコメンタリーで聞いたのだが、主役の3人以外はコロナ禍の影響で別取りだったらしい。


それを合成して1本に仕上げたそうなのだが、キャラクター同士の掛け合いが実際にできない中で違和感なくキャラクターが話していたのは本当に凄い。


非の打ち所がないくらい、素晴らしい。



主題歌:★★★★☆


OPとEDともに「チート薬師のスローライフ」の世界観を表現した曲だった。


主題歌を聴いていると、今すぐ草原に行って飛び込みたくなるような、そんな元気をもらえた。気分はネスタリゾート神戸。



総評:原作を知っている前提でストーリーが進む、あんこが入っていないどら焼きみたいなアニメ


「チート薬師のスローライフ」は原作を知っている前提で進むアニメだ。


販促目的として考えた場合も、まず間違いなく資金回収できないレベルの出来となっている。


視聴者のことを考えたら、このストーリーラインで世に出したのは異常な判断とすら思えてくる。


ストーリー構成は、他のアニメでも見られる手法なのだが、効果的に作用しない作品である「チート薬師のスローライフ」で使うべきではなかった。


アニメとして考えた場合は、1話を見て楽しめたらOK、ダメなら離脱。そんな作品だった。

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アニメを過ごす日々~クソアニメと良いアニメ~ あさき れい @asakirei

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