第4話 『メルクストーリア 無気力少年と瓶の中の少女』

「メルクストーリア」を知っているだろうか?

2014年からHappy Elementsがサービスを提供しているスマホゲームで、京都のカカリアスタジオが開発を行っている。


癒術士(ゆじゅつし)と呼ばれる「モンスターと心を通わせて大人しくさせる」能力を持つ人々が、人間に害するモンスターを癒やし、共存へと導いている世界が舞台だ。


サービス開始から7年以上経っている息の長いサービスなのだが、2018年にアニメ化を果たしていた。


今回は、そんな『メルクストーリア 無気力少年と瓶の中の少女』を見たので感想を書き殴っていこうと思う。



ストーリー:★★☆☆☆


主人公のユウは、癒術士でありながらモンスターが怖いという少年。ちなみにタイトルのように無気力では無い。無気力はどこにいった……? というムーブを終始ぶちかます。


そんなユウは、癒術士である父がお土産でくれた「水のつまった瓶」を大切していたところ、メルクという少女が瓶の中から現れる。液状の身体をしたメルクは自分の記憶を取り戻したいと願い、ユウと一緒に旅に出る。


メルクの記憶を探しながら旅をするユウは、様々な人々と出会い事件に巻き込まれながら、一人前の癒術士として成長していく――という話だ。


ザ・王道のストーリーなので、特に捻らずとも面白くなる要素が詰め込まれている。


ではなぜ微妙な評価なのかと言うと、ストーリーが完全にワールドツアーとなっていたからだ。Gレコをワールドツアーとなじっていた輩がいたが、あれより酷い。


メルクストーリアの世界観を知ってもらうためだと思うが、新しい舞台に行くたびに世界観がガラッと変わる。ナーロッパかと思えば妖精が住むミニマム世界に行き、かと思えば次の話では中国をモデルにした国に行く。それの繰り返しだ。


スマホゲームでそれをやるのは問題ないのだが、アニメにした場合は毎回リセットされている感覚に陥るので、一気に見ると非常にストレスを感じる構成となっていた。


試しにストーリー構成担当を見てみたら、「カカリアスタジオ」とあったので納得。全てがそうじゃないが、自社のシナリオ屋に構成やらせたらそうなるわな、という見本の出来上がりなわけだ。餅は餅屋という言葉を今一度かみしめて欲しい。


また、肝心の癒術士の能力も全くわからない。何やら特殊な力を持っているのはわかるのだが、癒術を使うのは総じて主人公とモンスターが向かい合って終わり。苦労しそうな顔や表現をしても一発で癒やすから、難易度が全く伝わってこない。というよりも癒術がどんな能力なのかも説明されないので、そういうものと受け入れるしかない。


既存のファン+販促目的で製作されたアニメだろうからそこまで詳しく描く必要はないのかもしれないが、新規ファンの獲得とした時に、せっかくの魅力的な世界観を表現できていないのは大きなマイナスだと感じた。



キャラクター:★★★☆☆


キャラクターに関しては、可も無く不可も無く。普通としか言いようがない。


全てのキャラクターがどこかで見たことのあるキャラクターなので、すんなりと受け入れられる。


逆に言えば、強烈な個性を持ったキャラクターは存在しない。頭を使わずにサラッと流せるくらいでしかないので、これはこれで良い描き方だ。


ハピエレは「イラスト→キャラ紹介」と製作される流れを持つので、こうなるのも納得。


そういうもんだと理解して見れば納得できるレベルだ。期待するべき部分は何一つとして無い。



作画:★★★★☆


明らかな作画崩壊は見られなかった。


とっちらかった世界観を差別化して表現していたのは、むしろ見事。


アクションを主体にした作品ではないので、大きな作画の乱れも無かったのだと思われる。



演技:★★★★★


スマホゲームらしく、ベテラン声優さんで埋め尽くされていたので、もう演技が凄い。大好き。


非の打ち所が無いくらい、素晴らしい。



主題歌:★★★★☆


OPとEDともに『メルクストーリア 無気力少年と瓶の中の少女』を表現した曲が採用されていた。


特にEDはスマホゲームをしていると胸に来るものがあるので、原作を遊んでいるとなお楽しめるのは間違いない。


別アニメでいえば、ゼスティリアクロスに近い。



総評:原作ゲームを知っている前提で展開される薄っぺらいストーリーのアニメ


『メルクストーリア 無気力少年と瓶の中の少女』は、良くも悪くも原作ありきのアニメだ。


販促目的と考えるとなおざりな出来で、原作ゲームファン向けと考えたら良作になる。


アニメから入る場合は、注意した方が良いだろう。


スマホゲームのアニメ化が難しいのは承知しているが、それでも所見が理解できるような表現方法をして欲しかったと思わずにはいられない作品だった。



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