第3話 『YASUKE-ヤスケ-』:Netflixオリジナルアニメ
弥助とは、織田信長に登用された黒人奴隷で、後に侍となった経歴を持つ人物だ。
日本史好きならまず知らない人はいないであろう有名な人物だが、その弥助を主人公にして製作されたのが、Netflixオリジナルアニメ『YASUKE-ヤスケ-』だ。
なんと制作は「呪術廻戦」などと手がけたMAPPA。こいつぁ期待ができるぜ!
今回はそんな『YASUKE-ヤスケ-』を視聴したので、感想を書き殴っていきたいと思う。
なに、安心して欲しい。
久しぶりのクソアニメだった。
ストーリー:★☆☆☆☆
ヤスケは、本能寺の変の後、とある村に異国の船頭として身を潜め、20年間ほど飲んだくれた生活を送っていた。
そんなヤスケだったが、彼を師と慕う少年と、体の悪い少女:
咲希には秘められた能力があり、その能力を狙って「闇の大名」が襲いかかってきたのだ。
侍として生きる気力を無くしていたヤスケだったが、咲希と触れあう内に彼女を守るために再び刀を佩き、「闇の大名」との戦いに挑む――。
というのが、ざっくりとしたストーリーだ。闇の大名には正直笑った。「闇の大名」の手下には「闇の将軍」もいるから安心して欲しい。
さてこのストーリーだが、既にお気づきの方も多いだろうが、日本人が手がけた脚本ではない。
監督はラション・トーマスというアメリカ人脚本家で、ヤスケと同じ黒人の方だ(特定の人種を揶揄するつもりは全くない)。
そのため、「外国人から見た戦国時代日本」ということで、好き放題やっている。
巨大ロボットがいる。
陰陽師がばかすか異能力を使う。
刀がガッツの大剣みたいに斬れる。
シャーマン、熊に変身する女、ボンテージスーツを着た死神みたいな姉ちゃん。
もう闇鍋。
個人的にはそういう闇鍋は嫌いじゃないのだが、今作はぶちこみすぎてる。何をどう重視しているのか全くわからなかった。せめて鬼武者くらいのバランスが欲しかった。
また、主人公のヤスケに関しても、終始受け身でただただ物語に巻き込まれていくだけとなっている。
強いことは強いのだが、「ヤスケピンチ→咲希が能力使って解決」のワンパターンで構成されているので、はいはいまた能力で何とかするんでしょ、と思えて盛り上がりが全く無い。
ヤスケの掘り下げ方も中途半端に終わっていて、彼が最後どうして旅に出たのかも含めて描写が全く足りておらず、消化不良で終わる。
描きたい要素をぶち込みまくった挙げ句、何一つ満足に美味しくできないで終わってしまっていた。
そんなものだから作品のテーマも見えず、制作陣の狙いが透けて見えているようで終始気分が悪かった。それについては後述する。
世界観にも広がりが見えないため、徳川はどうしたの? とかいろいろ疑問符ばかりが出てくる。
ヤスケと咲希を中心として描いているくせに、戦場などは無駄にマクロの視点にするものだから、バランスが取れていなかった。
歴史に深く関わらない人物たちなら、城下町ひとつくらいの規模がちょうどいい。SEKIROとかね。
キャラクター:★☆☆☆☆
キャラクターに関しては、これも要素をぶち込みまくっていて、しっかり描けていなかった。
道中敵対するキャラクター(シャーマンなど)の外人たちとタッグを組むのだが、ほとんどキャラクターが描写されないまま、速攻で死んでいく。何の感情を抱けないまま散られても、「ふぅん」としか思えない。一瞬、自分がサイコパスなんじゃないかと錯覚した。
主人公のヤスケは何もしない無気力マンだし、咲希は強気なのか弱気なのかシーンごとに違っていて、まるで演じているかのようだった。キャラクターに演じさせているように感じさせてはダメだ。
振り返っても記憶に残るキャラクターがいなかったのは、エンタメ作品――とりわけアニメ作品としては厳しい。
正直、覚えているのが「闇の大名」くらいしかいない。名前が安直すぎて覚えた。闇のwww大名www
作画:★★★★☆
ぬるぬる動く。すんごい動く。
ただ日本のアニメではなく、アメリカのアニメだ。
そのため、どこで止めてもカッコいいような画風になっている(アメコミがそう)ので、普段見ているアニメを想像すると全く違う。
止め絵を多用して、とにかく終始「カッコイイポーズ」を決めまくるのがアメリカンアニメなので、慣れていないととにかく見るのがしんどい。
しかしキャラクターの殺陣は素晴らしいので、一見の価値は間違いなくある。
逆に言えば、ここしか見る価値はない。
演技:★★☆☆☆
榊原涼子さんが出ていたから、★2つです。
なんていうAmazonのクソレビューをかましたところで、彼女が演じたキャラクター以外の演技は、個人的にはあまり好きにはなれなかった。
ヤスケと咲希の声優さんはどちらもほぼ初めてという感じで、感情移入が少しし辛い。
たまにベテラン声優さんが出演しているのだが、みんなポッと死んで退場していくから判断する前に消えた。
結果、残るのは棒読みに近いヤスケと咲希のみ。辛い。
下手な方のジブリ映画、細田守作品を許容できるなら、受け入れられるとは思う。
僕はどっちもあんまり好きじゃないのだけど、もっと下手くそな演技を何度も聞いてきたから受け入れられた。
主題歌:★☆☆☆☆
なんでOPがテクノミュージックやねん。
時代と作風に全く合っていない音楽がやかましく流れる。
作風に合わせるつもりが全くないようにも感じられ、不快だった。Netflixにスキップ機能が無かったら発狂していた。
問題点
ここからは問題点を述べたい。まだあるのかと思っただろう。すまない。
ヤスケだが、僕が見た感じ、どうしても裏に「黒人を主人公に据えた歴史ものを作りたい」という思惑がちらついた。
アメリカでいうところの社会的弱者である黒人を主人公に据えて描くことで、「Netflixはちゃんと人権にも配慮していますよ?」と訴えているような気がしたのだ。
どうも好かん。
ヤスケの境遇は確かに世界的に見ても稀な人生なのかもしれない。その人生をエンタメとして描くのは面白いだろう。
ただ、その道具として使った挙げ句、ここまでの駄作に仕上げられるのは我慢ならない。
何故、ヤスケでなければいけなかったのか。
何故、日本の戦国時代でヤスケが信長に仕えたのか。
その掘り下げが全く無かった。それを掘り下げることこそが、ヤスケという人物をより魅力的に世界へ発信できただろうに、しなかったのは怠慢以外の何物でもない。
「YASUKE-ヤスケ-」なんて大層なタイトルをつけているが、別にヤスケじゃなくてもこの作品は成り立つ。森蘭丸でも問題なくヤスケの役目が務まってしまう。
ヤスケでなくては描けなかったもの。
それを描いていない時点で、僕は監督を信頼できないし、「YASUKE-ヤスケ-」を世界へ配信したNetflixに失望を禁じ得ない。
少し厳しい意見となってしまったが、「YASUKE-ヤスケ-」は見るに値にしない駄作として、今回は筆を置かせていだたく。
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