第6話 日本と世界の塩の図鑑 塩245種類の効果的な使い方、食材との組み合わせ方~塩を魔力資源に見立てて~

 第六回は【日本と世界の塩の図鑑 塩245種類の効果的な使い方、食材との組み合わせ方】である。今回は珍しく読んで字の如くとは言い難い。


 一見すると料理本に近い系統のように思えるが、内容はむしろ学術的だ。とは言え、カラーイラストは豊富で堅苦しい表現もない。身構えずに気楽に読める本である。


 これまでの五冊は汎用性の高い本をチョイスした。この辺りで少し限定的な本を紹介してみようと思う。とは言え、賢明な書き手の皆さんであればこの本からこれまで紹介した本と同様の学びと閃きを得る事が出来るだろう。


 内容は解説の豊富な塩の図鑑だ。この本を読んで初めて知ったが一口に塩と言っても形は豊富で、粉のような物もあれば小人のピラミッドのような物、丸い物に色のついた物と実に豊富な種類がある。宝石図鑑に似て目に楽しい。


 今回これを取り上げた大きな理由は塩の製造方法をファンタジーに取り入れたら面白いと感じたからだ。大抵の異世界は魔力が存在し、それらを用いた魔導機械が存在する作品も珍しくない。問題になるのは燃料だ。鉱山から魔石を掘り出したり魔物が魔石を落すという設定の作品は多いだろう。


 筆者は本書を読んで、海から塩を採るように魔力の宿った塩を採取し燃料として用いる世界を想像した。通貨は魔力の宿った塩を混ぜた硬貨で、含有する魔量量で価値が変わる。給料を意味するサラリーはラテン語のサラリウムで、塩のお金を意味する。原点回帰というわけだ。


 本書には塩の製塩過程が詳しく記載され、それだけでも一読の価値を感じた。図鑑としての価値も高く、市販されている様々な塩を写真付きで解説している。皆さんのキッチンに置いてある塩も見つかるかもしれない。産出場所の情報は魔石の鉱山のような産出地を想像するのに役立つと感じた。


 個人的に面白いと思った塩は【アラェア 火山赤土塩】というハワイの塩だ。こちらは赤褐色のザラメ状の塩で、噴火の際に飛び散った火山土壌の赤土を海底から集めてよく炒り、ハワイの塩とブレンドして作ると言う。赤いのは土に含まれる酸化鉄によるものだそうだが、由来と色からどうしても火属性をイメージしてしまう。このように、産地によって属性の違う魔力を宿した塩――砂金をイメージして魔砂とするのもいいかもしれない――を出してみたら面白いかもしれない。


 今回は筆者の設定が語りが多くなったが、他にも読者諸君のイマジネーションを刺激し、面白いアイディアを呼び起こしてくれるネタは豊富だと感じた。随所に挟まる塩と食に関するコラムも一見の価値がある。


 塩の産出地や製塩方法も多様である。本書のテーマから逸れた紹介の仕方をしたが、食をテーマにした小説を書いている方には特におすすめだ。本書を読めば塩に対する知見が深まり、説得力のあるディープな表現が可能になるだろう。


 巻末には塩を使った豆知識が載っており、蚊に刺された患部に塩を盛って少量の水を垂らして擦り込むと浸透脱水の効果でかゆみ成分が抜けるという。この季節には非常に実用的だ。ファンタジーでは解毒の応急処置として使えそうである。ただし、掻きむしった後では文字通り傷口に塩になってしまうので要注意である。


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 この企画を始めたのには下心があり、筆者が執筆中の異世界転移物【ジ・アースヒューマンファンタジーショー! 全裸中年に優しい異世界ギャルは実在した!? ワナビ中年の俺が宇宙人に拉致られて異世界で勇者をやるそうです!】の読者を増やしたかったからである。


 ご興味のない読者の方は特に有益な情報はないので無視していただいて結構。ご興味を持っていただいた読者の方は読んで頂ければ幸いだ。内容は一風変わった導入から始まる一見するとテンプレ風の異世界転移物である。大抵の作家が自分の作品は一風変わっていると思っているだろうから、実際にそうであるかは読者の感性で確認していただきたい。


 筆者の内面が多大に反映されているかどうかは分からないが、ちょっとエッチな内容である事だけはここで触れておく。

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