第10話 設立

「父さん、僕、OBチームを作るよ」


 大会から1 カ月後。番組の放送が終わった後、新聞を読んでいる父さんに、僕はそう宣言した。驚いたのか驚いていないのか、何だかよく分からない顔をした。


「おお、そうか……。で、学業の方は大丈夫なのか」


「……………………はい」

 大丈夫じゃないことぐらい、そこの成績表を見りゃ分かるだろ。しかし僕には「はい」以外の答えは見つからない。


「まぁ、まぁ……そんな気はしていたよ。最近のお前は、昔の自分を見ているみたいだったからな。

 学業? そりゃあ学生の本分だから、学費を払っている身からすれば、しっかりやってほしいのは確かだ。だけどね、最終的にちゃんと就職してくれれば、それで良いさ。

 父さんも引退した時は、OBチームに入ってもう一度琵琶湖で飛ばしたいと思ったもんさ。結局、やらずじまいでずるずる社会人やってきてしまったんだけどな。模範的社会人としてはそれで正しいんだけどな。みんなと同じ、間違いのない人生だ。だけど死ぬ間際になって、それが面白い人生だったと思えるかと言うと、そうじゃないかもしれないな。お前はまだ若いんだ。やりたいことがあって、それをやれる環境にいるなら、やった方が良い。学業は大体何とかなるもんさ。ははははは」

「はははははは…………」

 乾いた笑い声がリビングに響く。


 まぁ。前途多難なところは多々あるけれど、とにかくやりたい方に向かって、前に進もう。まだ風は吹いている。

 僕は再び、鳥人間人生のプラットホームに立った。……いや、今はもっと手前だ。書類審査を通過した辺りだろうか。

 

 チーム立ち上げと決まれば、やらなきゃいけないことはたくさんある。まずは作業場探しからだ。

 僕は早速、SNSで呼びかけ始めた。

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さまよう夏の霊──向こう岸に行った、父と僕── べてぃ @he_tasu_dakuten

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