最終話 だから生きる 

 潮村において村人の役割は大きく分けて三つある。

 一つは漁師。男衆の七割近くがここに属し、日々、村近海の魚を捕まえに船を出している。

 二つ目が牧畜。小規模の牧場を囲い、主に乳を搾ることを日課としている。

 最後が祭事。多くの女集が属する神事を司る役割。

 それぞれの役割において当主がおり、それらを束ねるのが村長の役割とされている。当然、神守は祭事に携わるものとして成り立っているが、その立ち位置は特殊であった。否、特別であった。まず祭事の当主から下される命令を聞く必要がなくなる。神守は神に直接仕えるものであり、神守に命令を下せるのは神に限られるからである。逆説的に、神守に命令を下したものは自らを神と言っているようなもので、村においてそれは禁忌を犯すに等しい行いとなる。これは村長にも当てはまる。村長も神守には命令できず、ただ促すのみとなる。では神守は襲名したその時から身勝手が出来るのかと言えばそうではない。神守には神守の役割がある。

 神の居城にて神に仕えること。

 唯一つの役割であるか、唯一無二の仕事とも言える。神守に任命された日から三日以内に神守は神の居城へと移住しなければならない。

「それで、神の居城はどちらに?」

 村長の家、重役達が相談事を行う特別な部屋の中、村長と二人で向き合い、ツカサは一番知りたかったことを訊く。

「その答えを聞いた後、お主は村人の誰とも話すことが出来なくなる。無論、神の居城の在り処が外部に漏れないようにするためじゃ。わかった上で訊いておるか?」

「はい。お世話になった方々への挨拶は済ませました。家にも何も残しておりません。今からでも、神の居城へ行けるつもりです」

 神守に任じられた日から二日目、ツカサはその二日間で身辺の整理を行った。手伝いをしていたキリクの家に今までの礼を言い、会うことは出来なかったがシイナに手紙を書いた。ヒイラギの墓の世話を人に託し、家の物はほとんどを処分した。

「ただ、住んでいた家は、少しの間でいいので残しておいていただけませんでしょうか」

「うむ、わかった」

 あの夜以来とんと姿を見せないあの猫が、ひょっとした戻ってくるかもしれない。そのとき、何もなくなっていたら流石にかわいそうだと、ツカサは思ったのだ。もしかしたら、そう思いたかっただけかもしれないが。

 ともあれ、ツカサにはもうこの潮村に大切と思えるものは何もなくなっていた。唯一残されたものが、ずっと欲していた神守の座だった。そして、それが手に入る。

「やり残したことはございませんので、教えていただけますか」

「承知した」

 肯いた村長は壁に立てかけられていた板を床に置く。部屋の隅に置いてある水桶から一掬い水を取ると、それをいたの上に撒いた。染み込んだ水が板の上に模様を浮かび上がらせる。

「これは」

「地図じゃ。ここが今わしらがいる所。ここがわかるかの」

 村長が沿岸部の一つを指差す。

「わかります。確か海岸の切れ間に洞窟があったような。狭くて満ち潮の際には入り口が沈むので危険だから近づかないようにと親に教わりました」

「さよう。その洞窟こそが神の居城へ至る道の入り口じゃ」

 洞窟の入り口に置いた指を西に動かす。

「真っ直ぐ、道なりに進めば二手の道に分かれる。その道を壁面伝いに東へ進めば神の居城に着く。さして時間はかからぬであろう。西側の道へは決して逸れてはならぬぞ。そこから先は水面下に没する場所じゃからの」

「わかりました」

「では行け。その戸を出てから先はもう誰とも口は利けぬ。その覚悟ができたならーー」

 村長の言葉が終わる前に、ツカサは立ち上がり、部屋を後にする。

 敷居を跨ぐ寸前、

「覚悟ならとうにできております」

 と、小さく呟いた。それがツカサが潮村で交わした村人との最後の言葉であった。

 村長の家を出て、直ぐに見知った顔に出くわした。痩せた顔に鋭い目つき。一度はその目に殺意を向けられたこともある。シイナの父親だった。偶然か意図的か、ツカサが村長の家を出てさして離れてもいない場所にシイナの父親は佇んでいた。ただ目だけは何かを伝えるように力強くツカサを見ている。

「――っ」

 口を開きかけて、シイナの父親はその口を一文字に紡ぐ。

 ツカサは目を外す前に頭を下に向けた。謝罪か会釈か頷きか、ツカサ自身も答えは曖昧なままその場を去る。わかっている。わかっていた。

 砂浜に出ると風がツカサの頬を叩いた。生まれてから何度も繰り返し触れていた感触なのに、とても特別なもののように感じる。名残惜しいと思っているのは風か、自分か。薄く笑って砂に足跡をつけ始める。黄昏を迎えた水平線に金色の道ができ、その上を男衆の船が滑るように進む。もう暫く時間が過ぎれば、彼らは船を岸に寄せる。ツカサは幼い頃その時間がとても楽しみだった。戻ってくる船の一つに父が乗っていたから。それを見つける度に母と笑いあっていた。空の色が変わるのをいつも見ていた。母が神守になり、父を失ってから、久しくその空を見つめることはなくなっていた。

 長く伸びる影に目を向け、一歩ずつ力強く歩く。昔よりも深く沈む砂浜は、それでも昔よりも早く進めるようになっていた。進んだ先に、海岸岸壁を伝う道と、丘の上に向かう道の二つが見える。何百、何千と進んだ道とは別の岸壁への道を選んだ。

 道の途中には襲撃に来た切谷村の船を弓で狙った場所がある。近くにある海神の死骸を使った装置も、日が出ているうちに見るととても陳腐なものに思えた。更に先にはその海神を殺した場所がある。上に目をやれば、シイナが海へ落ちた崖が見えた。シイナは元気にしているだろうかと、ちらりと脳裏を過ぎった感覚をツカサは頭から振り払った。自分にはもうそんな資格はないのだから。シイナもそれを望んでいない。

 その先に崖の切れ目がある。潮目が早く船では近づき難い場所であり、先が少し高い岸壁になっているので、徒歩ではわざわさ来るような場所ではない。陸地からも死角になっており、事実ツカサも村長から教えられるまでこの場所を知らなかった。大人二人分の高さ程しかない洞窟がそこから伸びている。奥に光は届いていないが、松明を用意することは村長に禁じられていた。

 ツカサは洞窟に一歩入り、黄昏の入江を一度見て光に背を向ける。

 中はじっとりと湿っており、足元は不快にぬかるんでいた。そして何故か洞窟の外よりも温度が高い。一歩入るだけでツカサの額に薄く汗が出た。

 気持ち悪い。

 洞窟の一歩目に感じたものを押し殺しながらツカサは歩く。

 暫く進むと足元のぬかるみはなくなったが、その代わり光も届かなくなった。怖いと思い、それと同時にどうでもいいとも思った。この先にある場所がどんなものかと、ずっと思ってきた。神の居城がどんな場所かとずっと憧れ、焦がれ、焼け付くように思ってきた。

 それなのに今ツカサが抱くのは、この先に何があろうとどうでもいいという思いだった。何であろうと、着きさえすればどうでもいい。歩む足に力はないが、歩む足に迷いもなかった。

 どれほど歩いたか、ツカサは暗闇の中手に触れる壁だけを頼りに前に進み続けた。足元は少しずつ歩きやすくなり、ついには平らなうねり一つない感触へと代わる。触れる壁も徐々に凹凸が減り、気を抜けば滑ってしまいそうなほどに滑らかになった。

 足元の感触も、手で触れる壁の硬さも、ツカサが一度も経験したことのないものだった。初めての感覚にツカサは足を滑らせる。バランスを取ろうと手を突いた際に、袂から父の形見が転がり落ちた。

家には何も残したくなかった。だからこれを持ってきた。

「そう言えば」

 父の形見に軽く触れる。カシナを埋めた夜に見た淡い光がまた点灯した。これで少しは歩きやすくなる。そう思い、ツカサは父に感謝した。

 苔むした匂いが徐々に静謐なものに変わり始め、生き物の生臭さをまったく感じなくなった頃、暗闇の先に小さな赤い光が見えた。

「――何なの」

 呟き、歩みを強める。

 光は徐々に強くなり、暫く歩くと景色は鈍い赤一色になっていた。丸い透明な筒が赤く光っている。それが等間隔に並び、奥のほうまで続いていた。先ほどまで触れていた壁は土でも木でもなかった。矢じりに遣う石のように滑らかで、とても冷たい、鈍い灰色をしていた。床も同様で壁と床の間には切れ目がなく、ツカサは自分が鉛色の筒に閉じ込められているかのように感じた。

 壁には模様がある。スズメバチに似た色で、生理的忌避感を誘うような模様であった。自然にできたものではないということをツカサは直感で理解した。模様の意味そのものはツカサの知る限りでは理解できなかったが、決して好ましい意味であるとは思えなかった。不安を駆り立ててくるような印しはそこらの壁にたくさんある。

 更に奥へと進むと、真っ直ぐだった床が段差を持って下っていた。村にある社には木でできた登りの段差があったが、それをこの場所は灰色の素材で作っていた。下りの段差も壁には赤い光が灯り続けているので足を踏み外すことはないが、ツカサは何故か地面の底を抜かれたような不安定な気持ちになった。

 奥へ、ひたすら奥へと進み続ける。

 段差は途中で途切れ、また平坦な道となった。

 そしてツカサは見つけた。恐らくは目的の場所であろうそれを。

「扉、かしら」

 一見行き止まりに見えるそれは、壁や床と同じ素材で出来た扉であった。

 事前に村長から聞いていなければ道を間違えたと勘違いしていたかもしれない。取りあえずは、来るべきところへ来れたことにツカサは安堵する。村長の話しによれば、後は扉が開くのを待つだけ。

「色々あったなぁ」

 床に座り込み、ツカサは呟く。今までのどれもこれもが大変で、何もかもが不合理で、それでも何とかこの場所までこれた。来たいと思えた、唯一残った願いの中で。

この場所にさえ来れば、思い残すことは何もない。

そんな心持のツカサがいる場所で、

「駄目だよ、ツカサ」

 ぽつりと、言葉が反響した。

「――!」

 自分以外の声が聞こえたことに驚き、ツカサは跳ねるように立ち上がった。

「えっ」

「駄目だよツカサ。君はここにいちゃ駄目だ」

 赤い光の中をツカサに向けて進んでくる。薄暗いせいか目は光を反射して赤く染まっていた。

「ヒック。どうして」

 会話を禁じられたことも忘れて、ツカサは驚愕の声を上げた。あの日以来姿を見せていなかった猫の姿がそこにあった。

「ツカサを止めに来たんだ。その奥には行かせない」

「何を言っているの。それに、ヒックあなた今まで何処にいたの」

 混乱するツカサには答えず、ヒックはツカサの隣をすり抜け、扉の前に立った。

「もう一度言うよ。この奥には行かせない。来た道を引き返すんだ、ツカサ」

 四足で床を踏みつけ、頭を低くし、ヒックは唸り声を上げた。初めて向けられるヒックの敵意にツカサの混乱は増すばかりである。

「ヒック、そこは神の居城なのよ」

「知ってるよ。だから通さない」

「もう直ぐ扉が開くの」

「知っているさ。絶対に通さない」

「村長に言われたの。扉が開いている時間は短いって」

「それは知らなかった。でも通さない」

「それを逃すと次の神守を選ぶまで待たなきゃいけなくなるのよ。それに、次も私が選ばれるかはわからない」

「そうだね。だからこそ通さない」

「何で邪魔をするの」

「…君のためだ」

 一歩、ヒックへと歩を進めた瞬間にヒックの爪がツカサの足に食い込んだ。鋭い痛みにツカサは反射的に後ろへと後ずさる。その一度だけで、ヒックが本気でツカサを妨げようとしていることがわかった。

「私のためだと言うのなら、そこをどいてよ」

「駄目だね。それは駄目だ」

「何故?」

「言えない」

「どうして」

「それも言えない。君が知る必要はない」

 ツカサは顔をしかめる。苛立ちが、足の先から頭の天辺までツカサを満たした。急に現れて、好き勝手言って邪魔をする。何なんだこいつは。

 苛立ちのまま、もう一度ツカサは一歩を踏み出す。呼応するようにヒックは爪を繰り出した。ツカサは先ほど足を横に出し、伸びてきた爪を迎えるように足を振る。爪はツカサの足に食い込むが、与えられた反力でヒックは後ろに飛ばされた。

「行かせない」

 更に一歩、踏み出すツカサに壁を蹴って跳ね返ったヒックが飛び掛る。猫の俊敏さは人間であるツカサの動体視力を遥かに凌駕する。

「うっ!」

 腿の内側に激痛が走り、ツカサは思わず膝を折る。低くなった顔にヒックの尾が鞭のようにしなって打ち当てられた。

 瞬間、視界が真っ黒に染まる。涙で見え隠れする光を何とか捉えようとツカサは目を見開く。

「絶対に、行かせないよ」

 ヒックは再度、確認するように言った。

「どうして」

 痛みと怒りから溢れる涙を振り落とし、ツカサはヒックの姿を見据える。そして気付く。

 ヒックの背後で扉が開き始めていた。

 軋むような不協和音にヒックも背後で起こっている事象に気付いた。

「開いたね。どれくらいの時間開いたままなのかはわからないけれど」

「どいてよ。そこ、どいてよ」

「駄目だ、絶対に行かせない。次は尾じゃなくて爪で打つ。ツカサの片目を潰してでも止めるよ」

「なら、やってみなさいよ」

 屈めた姿勢のまま四足獣のように駆け出す。

「馬鹿」

 ヒックの呟きと共に、ツカサの顔に激痛が走った。

「っっっああぁぁぁ!」

「大丈夫。瞼を切っただけだよ」

 片方の爪にツカサの血を滴らせ、ヒックは毛づくろいをするようにそれを舐め取った。

 赤い光よりも尚赤く、ツカサの視界は朱色に染まる。

 膝で立ち、床に片手を着きながらツカサは正常な目でヒックを睨みつけた。

「どうして、どうしてよ。何であんたはいつもいつも大事な時に、あんたは!」

 ツカサは叫ぶ。あらん限りの思いを込めて。

「海神のときは心を決めた私を馬鹿にするように現れて、私の覚悟をどうでもいいものみたいに手放して。カシナは勝手に殺すし、後始末は私に押し付けて共犯にさせる。一人でいられたのにシイナを私に近づけさせて、結局私が駄目にした。ヒイラギさんも、ヒックと一緒に助けてくれたのに私が、私の行動があの人を殺した」

 気付けばヒックへの言葉は自分自身への悔恨に変わっていた。止まらない。今まで必死でせき止めていた感情が止まらない。常に纏わせていた大人びた雰囲気は既になく、年相応の少女としてのツカサが泣いていた。

「だから私は行くの。これだけなの、私にあるのは。神守になるっていう願いだけ。だから、邪魔しないでよ」

 崩れ落ちた少女を見ながら、ヒックはヒックで苦しんでいた。全てを知ればこの少女は壊れてしまうかもしれない。しかし、壊してでもこの少女を止めなければいけない。だとしたら、できることはもう一つしかない。

 意を決し、ヒックはツカサに近づいた。

「この先にいけば君は死ぬんだ」

 ヒックの言葉にツカサの体はびくんと跳ねる。

「この先にあるのは君や村の人たちが信じている神様の居場所なんかじゃない。この先にあるのは、ただの過去から未来への負債だけだ」

 クキナから引き出した情報を元にヒックはこの場所を割り出した。割り出して、見つけて、そしてそれが思っていたものとは遥かにかけ離れたものだということを知った。

「今の君たちにはどうしようもないもので、僕にだってどうにもできないものなんだ」

 地下の深く、海の傍という立地。分厚いコンクリートに囲まれた施設。そして通路の至るところに警戒色で示されている警告表示。ツカサには模様としてしか見えなかったそれに、ヒックは心当たりがあった。かつていた場所の文献に載っていた技術の一つ。あの場所からここに来るまでの熱量源として、一つの候補として挙げていたが、制御の複雑さと危険性を鑑みて却下したもの。

 核分裂の熱量を使う技術。そしてそれを行使する際に出る副産物。

 潮村の人達が神の居城として崇拝するここは、その副産物を閉じ込めておくための施設だった。

「強力な毒が空気中に漂っているようなものなんだ。この先に行けば、三日と持たず君は死ぬ」

 ヒックの後ろで開いている扉は、入れば帰って来れない地獄の蓋である。

「だから君をこの先に行かせるわけにはいかない」

「ここから先に行くと死ぬの?」

 俯いたまま、ツカサは呟く。

「そうだよ」

「ここから先では生きていけないの」

「そうだ」

「ここから先には、生きている人はいないのね」

「…そうだ」

 ツカサの顔から雫が落ちた。赤い証明に照らされたそれが血なのか涙なのか、ヒックには判別できなかった。

「やっぱり、お母さんはもう生きてないのね」

「知ってたんだね。知っていて君は」

 やっぱり、と少女は言った。それだけでヒックはツカサが覚悟していたことを悟った。

「知っていたわけじゃないの。何も知らなかった。この先に毒があるだなんて知らない。けれど、だけれど、私のお母さんは例えどんな立場になろうとも何年も娘を放置するような人じゃない。それだけはわかる。生きている限り私に会いに来てくれる。それだけはわかっていたの、それだけは」

 だからこそ、母親の姿が二度と見られないものとなったことをツカサは悟ったのだった。

 ヒックはそれをツカサに伝えたくはなかった。それでも、それを知った上でなお踏み出す足があるというのなら。

「ツカサ、ここから離れよう。扉の先に君が行く必要はない。母親のことは気の毒だが、神守の役目も結局は海神への生け贄となんら変わらない。ただの大いなる思い違いだ」

「そっか」

 気の抜けたような返事をしながら、ツカサは立ち上がった。うち腿から血を流し、血涙を滴らせ、立ち上がった。

「わかったわよ」

 その言葉とともに、ツカサは扉へ向かって足を進めた。

「わかってないじゃないか」

 諦めたものだと思い込んでいたヒックは、ツカサの行動に一歩出遅れる。

 人と猫では大きさが違う。一端先に行かれてしまうと、引き戻す術はない。それでもヒックはツカサの足にしがみついた。

「行かせて、ヒック」

「駄目だって。何の意味もない」

 ヒックを足に纏わせたままツカサは歩を進める。

「意味ならあるわ。少なくとも、村にとっては私は神守のままでいられる」

「それに意味がないって言っているんだよ、分からず屋!それでどうなる。ただ犬死してどうなる」

「じゃあどうすればいいの!何をすれば私は、この世界にいていいの」

「――ツカサ」

「家族がいない。友達もいない。私を大切に思ってくれる人も誰もいない。後残ったのは神守の役割だけ」

 半歩、扉のふちに足をかける。ヒックのしがみつく右足はまだ扉の手前。

「だったらやらなきゃ駄目じゃない。これくらいは果たさなきゃ駄目じゃない。そうしないと、もう私には何も残らない。いていい理由もいたい理由も何もーー世界には何も」

「世界は他にだってある!」

 苦し紛れにツカサの足に噛み付く。痛みか言葉か、それとも他の何かか、ツカサは足を止める。半分だけ扉の先に入り、半分だけ扉の手前に残ったまま、足を止めた。口を離してヒックは叫ぶ。叫ぶことに意味があるかなど関係なかった。叫ばずにはいられなかった。

「僕もだよ。僕も全てに裏切られてここにいるんだ。最初に話をしたときに言ったよね、僕は空から来たって。空の上、大地と星の間には僕達の住処が浮かんでいて、そこには僕みたいな奴がいっぱいいる。そこにもツカサ達が言うところの神様への信仰ってやつがあった。僕はそれを信じてた。信じるように育ってきたからだ。ある日ささいなことで僕の親はいなくなった。信仰のためにいなくなった。誇らしくさえ思ったよ。でもそれから、そこでは僕の居場所なんてなくなった。役割も何もなかった。どうしようって思った。どうすればいいかを神様は教えてくれなかったから。友に助けられていなかったら僕はそこで終わっていただろう」

 友、の言葉にツカサは反応した。自分にはないものをヒックが持っていると思ったから。

「友達がいるのね」

「ああ、いた。そいつも信仰のために死んだ。そいつが神様を信じていなかったから、神様の使いを自称する奴らに殺された」

「――。」

「それから僕は疑ったんだ。神様ってやつを疑った。そして確かめたくなった。神様本当にいるのなら、僕達を作り出した存在がいるのなら、その顔を見てみたいって。どうしてあんな歪んだ仕組みにしたいのか見てみたいって。だから僕はここに来たんだ。この大地に、下りてきたんだ」

「ヒックがカシナを殺した後に話した創造主」

「そうだよ。その創造主さ。故郷の文献にはこの大地全てが神様の庭だと記されていた。この大地そのものが、言うなれば神の居城だと」

「でもヒックの神様はここにはいない」

「だったら、よかったんだけれどね。残念ながらそうじゃないんだ。僕はもうとっくに神様を見つけていたんだよ。だけれど、誰が思う?僕達の故郷を作った神様が、いつの間にか滅んでいただなんて、誰が想像できるって言うんだ」

 ヒックの声は、いつのまにか叫び声から呻くような声に変わっていた。

 一切の手入れがされていない文明の跡地。環境にとってどれだけの影響を与えるか、途方もない計算と演算が必要なこの場所においてさえ、近くに生活しているのは文明程度のとても低い人類であるという事実。それらが導き出す結論に、ヒックは至っていた。

「会ったら一発ぶん殴ってやろうと思ってたのに。どうしてあんな世界を作ったのか問いただしてやろうかと思っていたのに、作った張本人の方が先にいなくなるなんて、そんな理不尽どうすればいい。――だから一緒なんだよ、ツカサ。僕も全てを失ってる」

でもだからって、とヒックは言う。

「でもだからって、僕は役割を得るために死んだりなんか絶対にしない」

 再度ヒックはツカサに爪を立てる。

「君は僕だ。僕は君だ。だから、死なせたくないんだ」

「ヒック、貴方が何をいっているのかさっぱりわからない」

 ツカサの足が動く。

「わからない、わからないわよ。貴方賢すぎるのよ。自分勝手なくせに。何度も私を助けたくせに、急にいなくなって、戻ってきたと思ったら邪魔をして」

 もう一歩、ツカサの足が動く。

 扉とは反対へと、来た道へと動く。

「これから生きていくのなら、私どうすればいいの」

「一緒に考えようよ。僕は賢いしツカサは強い。何とかなるよ。もしも、潮村にいられなくなるというのならしょうがない、世界はこの村だけじゃない。何処にだって行っていいんだ」

「…うん」

 零れ落ちてくる雫が涙であることは色や匂いを気にせずとも、ヒックにはわかった。暖かい雫がヒックの上に降ってくる。どうすればいいかの答えをヒックもツカサも持ち合わせてはいない。それでも、どうにかしようという気持ちにはなっていた。


 *


「それじゃあここから出ようか」

 ツカサから流れる雫が止まった頃にヒックは声をかけた。

「うん…、うっ」

「どうしたのツカサ?」

 歯を食いしばるツカサの顔をヒックは覗きこむ。

「どうしたって言うか、足が」

 ヒックが噛み付き爪を立てた足はぼろぼろだった。

「あー…ごめんね」

「謝らないでよ」

 心配そうに見上げるヒックの頭を撫でようとツカサは手を伸ばす。そのとき、伸ばした手の袂から、父の形見が落ちた。かつんと無機質な音を上げて落ちたその機械に一人と一匹は一瞬目を奪われた。

 そのとき、空間全てが弾けたような轟音が鳴り響いた。

 ヒックは余りの大音量に一瞬意識が飛ぶ。頭を振り、残響を振り払って辺りを見回すと、ツカサの足から多量の血が出ていた。ヒックが立てた爪でも、付き立てた牙のせいでもない。足首の付近を穿つ穴があった。

 ほのかに焼け焦げた匂い。

「あっーーうっ、あああ」

 起きたことが理解できないまま、送れたように襲ってくる痛みにツカサが顔を歪める。堪えきれず膝から崩れ落ちた。

「な、何が」

 あふれ出るツカサの血、その匂いを掻き消すほどに鼻につく匂いをヒックは感じ取った。

 匂いの元は扉と反対方向、来た道の先。その先から、匂いと音が近づいてくる。少し地を擦る様な足音と共に現れたのは、村長だった。

「村長、どうしてここに」

 気付いたツカサが問いかける。村長はそれに答えず、手にした黒い塊をヒックに向けた。

「化け物がおるのう。人の言葉を理解し、神の御使いをかどわかす。醜い醜い化け物じゃ」

「言ってくれるね、御老人」

「ツカサもツカサじゃ、こんなものに騙されおって。その足の傷は罰だと思え」

「何が罰だ、何様のつもりだお前は」

 ヒックが声を荒げると同時に、村長はヒックに向けた手に力を込める。金属音と共に、先ほどと同じ爆音が轟いた。

「ほう」

 村長は感嘆の声を上げる。視線の先にヒックはいなかった。

「当たらぬか」

「僕はそれを知っている。それが銃だということを知っている。金属の塊を高速で打ち出すんだろう。知ってるさ、僕は何でも知っているんだ」

 ヒックが喋る途中にもう一発、しかしそれも当たらない。

「猫の速度を舐めないで欲しいね。あんたが引き金を絞ろうと動き始める頃にはとっくに別の場所さ」

「やはり化け物だのう」

 楽しそうに、こけた顔で村長は笑う。

「どうして、どうして貴方がここに」

 倒れたまま苦しそうにツカサが訊く。足の傷口は服の切れ端で縛り上げていた。

「どうして、はわしが訊きたいのう。どうしてお前は扉の向こうへ行っておらん。栄えある神守の役目を果たそうとせんのだ。せっかく扉を開いてやったというのに」

「開いた?」

 ヒックが訊く。

「開いたと言ったのか。そうか、ここの開閉はあんたが操作していたのか」

「そうじゃ。それこそ村長の役目。神の居城に不埒な輩が入り込まぬよう監視する。そして相応しいものが村から出ずればここへと導く。大切な役割じゃ」

「村長、私はーー」

「わかっておる。わかっておるよ神守よ。そなたは一時この化け物に騙されただけじゃ。唆されただけじゃ。直ぐに目を覚まして差し上げる。神守の為に働くのもわしの役目じゃからのう」

 二発、三発、繰り返し銃が火を噴く。

 ヒックは引き金を絞る瞬間の村長の視線、そして挙動から打たれる先を予測し体を跳ねさせる。並大抵の集中力ではない。ヒックのそれは人よりも遥かに速い初速ではあるが、だからといって弾速を凌駕できるわけではない。先に動いているから当たらない、それだけなのだ。一瞬でも遅れれば命はない。

「面倒だのう」

 繰り返し響く轟音にもヒックは慣れ始め、村長に飛び掛る機会を伺っていた。言葉で解決できる段階でないことをヒックは理解していた。村長の目には、故郷で出会った狂信者達と同じ光が宿っていた。猫と人、まったく違い生き物なのに、瞳に宿る禍々しい光は一緒だった。

 こうも似るものか。ヒックは辟易した気持ちになる。創造主、神、神守、いつもそれだ。ふざけるなという思いと共に、村長の放つ銃弾をかわす。

 次の発射と共に襲い掛かる。そう決めて、一歩深く踏み込んだ。

「やめてください、村長。その子は私にとって大切な友です」

 痛みに膝を付きながらツカサは訴える。

「私は、私は神守の役目を降りたのです」

「ふふ、ははははは。降りる?できるわけがなかろうが。神守は役目ではなく存在。この村に出ずる神の片鱗じゃて。よいよい、もう黙っておれ。直ぐに終わらせる」

 そう言って村長はもう一度引き金を引いた。

 反動で反る腕にヒックは飛び掛る。

 ヒックは勝ちを確信していた。村長の技量では連続して銃を正確に放つことができない。既に跳躍しているヒックの速度には追いつけない。そう考えていたからだ。そしてそれは予想通りであった。次の弾丸は間に合わず、引き金を絞るより先にヒックが銃に取り付き、引き金にかけられた指を噛み千切った。

「ふん」

 村長は銃ごとヒックを放り投げる。空中に浮かされたヒックではあるが、脅威は感じていなかった。武器を奪い取ったからである。

 しかし、ヒックの誤算はそこにあった。

 銃を放り投げる為に捻った体の勢いのまま、村長は胸元から短刀を引き抜いた。老人とは思えぬ踏み込みで、空中に放り投げられたヒックへと一息に襲い掛かる。

「くっう!」

 抱えた銃を盾にして、ヒックは短刀の初撃を防ぐ。しかし、返す刀には対応できなかった。

「うああ」

 短刀は黒毛の尾に切り込んだ。薪を二つに割るように、先端から付け根付近まで尾が裂ける。

 どくどくと流れ出る血を感じ、ヒックは命の危機を悟った。

「お主らをわしの村に返すわけにはいかん。ツカサは神守の役目を果たせ。そこな化け物は即刻死ねい」

 村長の目に灯る狂気の光が一層強さを増す。だが、その瞳に理解できないものが写った。

 危険を一身に感じたまま、ヒックが笑った。

「これ、なんだろうね」

 ヒックが咥えて示したものは、小さな箱型のものだった。

「それは!」

「当たりだ。そこの扉の開閉を操作する機械だね。」

「返せ!」

 村長が先ほどよりも尚早く短刀を振るう。それをヒックは大きく後ろに跳躍して避けた。村長は更に追いすがろうとするも、村長が一歩踏み出す間に、ヒックは十歩は離れている。

 どれだけ技量があろうとも、どれだけ卓越していようとも、村長は老人である。迎撃は得意でも、追うことは得意ではなかった。直ぐに息が切れ、足元がおぼつかなくなる。

「返すのじゃ。それは貴様のような化け物が触れてよいものではない。村の宝であり、村長の尊厳だ」

「それはただの特権意識だよ。特別なものを持って特別な気持ちになっているだけさ」

「もうよい」

 狂気の灯っていた村長の目から光が消えた。ヒックはそれを見て息を呑んだ。漆黒の瞳の中に、光のない意思を感じたからである。

 村長は床に転がっていた銃に手を伸ばす。

「それは僕に当たらないって知ってるだろう」

「ああ、貴様には当たらんだろうの、じゃが」

 村長は銃口をツカサに向けた。

「お主に当てるのは造作もないの。ツカサよ」

 村長は銃口を向けたままツカサの傍に寄る。そして、ツカサの髪をもち、引きずり始めた。

「何をしているんだ」

「扉の向こうでツカサを撃つ」

「は?」

 ヒックは驚きの余り。その場に立ち尽くした。村長はツカサに神守の役目を果たさせるためにここにいる。それだけは間違いなく、であるならばツカサを殺せるはずがない。脅しとしても機能しないその行為に、しかしヒックは恐怖した。先ほど村長の瞳に見た漆黒がまだ見えているからだ。

「あんたにツカサを殺せるわけがないだろう」

「よいのじゃ。どうせ変わらぬことだからのう」

「――変わらない?」

 銃口を向けられたまま、引きずられながらツカサが声を出す。ものの仕組みはわからずとも、今の状態がとても危険であることは、ツカサも理解していた。でも今はそれよりも気になることがあった。

「変わらないとはどういう意味ですか」

「そのままの意味じゃ。神の居城の中で死にさえすれば、死に方などどうでもよい。神の力で死ぬか、わしの力で死ぬかの違いだけじゃ。大事なのは、神守が神の居城の中で死ぬ、その事実だけじゃ」

 その言葉に、引きずられるままになっていたツカサは壁に手を伸ばした。取っ掛かりを探し、村長の力に抵抗する。

「貴方は、知っていたのですか。この先に行けば死ぬことになるとーー知っていたのですか。知っていて、私の母を、お母さんを神守に命じたのですか」

「当然であろう。毎回誰が片づけをしていると思おうておる」

 村長が扉をくぐる。引きずられながらツカサは扉の内側を見た。扉の内壁には、何かで引っかいたような痕が無数にあった。それがかつての神守達の痕跡であることを理解し、怒りとともにツカサは叫んだ。

「ヒック!」

「任せろ」

 ヒックの声と同時に、扉が閉まり始めた。

「馬鹿な」

 村長はヒックがツカサを助けるために自分に襲い掛かってくるものだと考えていた。そこを迎撃するつもりであったのに、ヒックが取った行動は村長の考えとは間逆で、ツカサを見捨てるに等しい行為である。開閉操作機が外にある状態で扉を閉じられるのはまずい。村長は内側からの開閉方法を知らない。

 焦りとともにツカサを放し、振り返って扉に向かい駆けた。

 と、その時、村長の頭の上を何かが通過した。そして後方から、金属音が鳴り響く。村長がヒックに目を向けると、先ほどまで咥えていた開閉装置が見当たらなかった。

 何が起きたかを理解し、村長はまたもや進行方向を変える。今度は神の居城の奥へと駆け出す。開閉操作機を扉の内側に置いたまま、扉が閉まってしまうのもまずい。

 音がした場所へ駆け寄り、村長は金属の箱を手に取った。

「…これは」

 村長が拾ったものは扉の開閉操作機ではなかった。材質は似てはいるが、まったく別のものだった。触れると淡く発光した。

「私のお父さんがくれたものよ」

 村長が手に取ったのは開閉操作機ではなく、ツカサの父の形見だった。

 ツカサの声に村長が振り向くと、ツカサが扉の開閉操作機を持って笑っていた。今にも閉まろうとする扉の向こうで笑っている。

「死ぬまで神に仕えてろ」

 ヒックがそう言い終わると同時に、神の居城の扉は閉まった。重く分厚い扉の向こうで何がどうなっているのか、ツカサにはもうわからない。わかりたいとも思えなかった。

「それ、どうするの?」

 ヒックがツカサに訊く。ツカサの手には開閉操作機が握られている。

「もちろん、こうするのよ」

 ツカサはあらん限りの力で手に持つそれを扉に叩き付けた。無機質な音と共に開閉操作機は砕け、床に散らばった。

 こうして居城の神は死んだ。



朝焼けの海岸線を一人の少女が歩いていた。日は昇ったばかりではあるが、既に村の皆は働き始めている。水平線に浮かぶ船の群れの中に自分の父親の姿を探すが、太陽に照らされた影だけではわからなかった。

砂浜を過ぎ、丘の道を登り始める。前はその先に一人の少女が住んでいたが、今は誰もいなくなった。残った家は森へ向かう者達の休憩や宿泊に使われ、二日と日を置かず人が出入りしていた。その家の扉の上に花で作った冠が置いてある。所々不器用な作りのそれは、枯れて朽ちる度に作り直されていた。今置いてあるものも少しくたびれ始めている。

また作り直さなければ、と少女は思い、かつてのこの家の主の顔を思い出していた。


村の墓地に大柄な男が一人立っていた。かつての友人に近況を報告するために訪れたのである。漁師としてしか生きてこなかった自分が村長などという大役に任命され、どうにかこうにか仕事をこなせているという有様。威厳を保つために回りに愚痴などを零すこともできず、十日に一度は必ずこの場所へと足を運んでいた。

大切な人を守る為に命を掛けた友人は、男にとって憧れでもあったが、村長となった今では軽々にそんな行為もできなくなった。反論もせず、ただ自分の言葉を聞いてくれる友人に、大柄な村長は今日も愚痴を零している。


潮村と切谷村の間には森が広がっている。丁度お互いの村から等しい距離の場所に、少しだけ森が開けた場所がある。薄い木漏れ日とたまに月明かりが照らすその場所は、互いの村人にとって立ち入ることのできない場所となっていた。

忌み嫌われる二人の眠るその場所には、二つの石が立てられている。誰がそれを設置したのか、誰がそれを知っているのか、どちらの村の住人に聞いても答えはわからない。しかしその石は綺麗なまま保たれていた。


 暖かい日差しを浴びながら、ツカサは目を覚ました。

「おはようヒック」

 隣に転がるヒックの腹をぐりぐりと撫で回す。鬱陶しそうにヒックは尾をびたんと打ち付けた。村長に切られた尾は二つに裂けたままで、喋らなくとも化け猫と呼ばれるようになっていた。

「おはようツカサ、元気だね君は」

 にへらと笑いながら、再度眠りに就こうとするヒックをツカサは抱え上げ、水桶に放り投げた。

「にゃー!」

 猫らしく声を上げ、ヒックは水桶から飛び出す。

「何するのさ」

 慌てふためくヒックを見て、ツカサは笑い転げていた。

 年相応の振る舞いをするツカサにヒックは諦めたようにため息をつく。

「それで、今日は何処に向かうの?」

「うん、それを昨日から考えていたの。潮村を出てからはあてどなくふらふらしていたけれど、そろそろ私達も大きな目標を持つべきだと思ったの」

「嫌な予感」

「ヒックの持っていた地図によると、私達はこの小さい島のこの当たりにいるのよね」

「そうだね。東寄りにいたかな」

「それじゃ、まずは北を目指しましょう。北から島を渡り歩いて、こっちの大きな大地に向かうのよ」

「わーお」

「ヒックの探してる文明ってやつも、行き道の何処かに残っているかもしれないわよ」

「だといいけど」

「というわけで、出発よ」

 簡易な荷物を纏め上げ、ツカサは歩き始めた。道中の大変さを想像し、辟易しながらもヒックは着いていく。

 諦め、間違い、憧れ、決断した少女は、今日も次の場所を探して歩き続ける。

 挑み、挫折し、抗い、覚悟した猫は、今日も友と一緒に歩き続ける。

 神を殺した一人と一匹の旅はようやく始まったところであった。

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猫の神様 無秋 @chocomike

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