第5話 認めよ、これが恋!

自分が田中に恋をしていると、解ったリコ。恋とは、こんな形でやってくるのか?理解不能だった。教科書の漫画を思い返しても、リコと同じ恋などなかった。それどころか、、、、


リコ(普通なら、告白してきた人を好きになるんじゃないの?田中が告白してきたのは、別の人、伊集院 陽の想い。なら、伊集院の事を好きになるならまだしも、、、なんで、田中なんよ??。。。)


そんな事を多々考えるリコだったが、なぜか、田中とも、勿論、陽とも会えば目が合うのは変わらなかった。


リコが田中を見るから目が合う。。。それだけではない。


相手である、田中もリコを見るから、つまりは互いに見ているから、自然と目が合うのだ。。。


そんな事がずっと続き、ある時、陽は他所の土地へと転校してしまい、彼とは出会わなくなった。。。


陽はリコに自分の想いを自ら伝える事もなく、何も無かったかのように居なくなっていった。


これで、目が合うのは田中だけになり、リコは、少しずつ自分の気持ちを認め始める。只、内側の気持ちは誰にも言えずにそのまま、中学3年に上がることに。。。


その頃にはやっと乙女らしく、クラス替えも普通の女子が思う事をリコも思えるようになっていた。


リコ(同じクラスにならないかな。。。)


やっとリコの内側は他の女子に追いついた瞬間だった。


だが、残念な事にまたもや隣のクラスの所に田中の名は載っていたのだ。中学時代三年間リコはただ一人の男子に心を振り回され、かき乱され、ようやく、これが初恋と解り気持ちの上では落ち着いた。


中学生最後の年、リコの周りでは相変わらず誰の事が好きか。この話題は尽きなかった。ある友人は先生に恋心を抱き、またある友人はテレビ等のアイドルなどに心を奪われたり。


それでも、リコは自分の気持ちは誰にも言えなかったのだ。その理由は本人リコにもわからず、恥ずかしいからなのか?それとも、それを言えば後どうなるのかを恐れての事なのか。。。


そんなリコに一人の友人が卒業前にこんな事を言ってきた。


かりん「リコちゃん、私な田中と話してて、「好きなんだけど。」って言われたんよ。「誰を?」って聞いたら、「かりんを」って。。。」


リコは小さなショックを覚えた。。。

(あぁ、、そうだったんかぁ。。私じゃないんだなぁ。。。)


りこ「そうなん?。。。」


そう、一言友人に返した。。。


そのまま卒業を迎え、リコは田中とは最後までずっと、言葉を交わす事もなく、只、目だけが合う。。。卒業式最後の日も同じだった。。。


その頃、県立の高校の合格発表があり、卒業したリコは新聞の一覧から彼の名前を見つける。


リコ「あった! 合格してる!やっぱり、頭が良かったもんね。。。良かったね。。。」


独り言をいい。微笑んでいた。。


それから、リコは田中とは全く会うこともなく、高校生になり、しかも、女子高だった為、リコにとっては最高の学校生活になったのだ。


しかし、胸の奥にはずっと、田中が隅っこにいる事もわかっていた。


高校時代、リコは男嫌いと称され、心配した友人が、リコを半無理やり、男子と会わせたが、全く上手くいかなかった。成り行きでいっとき、その男子と付き合う事にもなったか、身体が拒絶反応を起こし、ご飯も食べられなくなると言う、、、なんとも。。。その友人こそが、中学生の時にリコに言ってきた、かりんだった。


そう、このかりんはリコの気持ちに当時、薄々と気がつき、あの時リコにカマをかけたのだ。。。ただ、リコからの返事があっけなく、只の一言だった為、リコにその気はなかったのか?と疑問は残っていた。


それにしても、リコの男嫌いを何とかしなくては!みたいな気持ちが湧いたのか、事ある事に男子を連れてきては、リコに慣れさせようとした。つまりは、彼氏を作る作戦だったのだ。かりんは男子の友人が男子高にいた為、その関係で男子をリコに宛がろうとしていたのだ。


それも、そうだろう。リコはかなりかわいい容姿だったからだ。女子高に入学してクラスメイトから次々に言われたものだった。


「リコちゃん、、かわいいなぁ、、彼氏いるん?、、、え?居ないの?、、もったいない!、、、」


入学当初、こんな事ばかり言われたのだった。。。


高校時代リコは結局成り行きから一人の男子と付き合う事に。1年も満たないまま、終わってしまうが、リコにとっては、いい経験だったのかもしれない。好きと言う気持ちは無くとも、なんとなく、かりんが連れてきた彼と一緒にいた。。。


高校3年になる頃、奇跡的に入れたこの女子高には、付属の短大があり、そこへ、リコは行きたかった。


相変わらず、勉強は苦手だった。受験シーズンに家の近くに小さな神社があった。


何を隠そう、この神社の神様こそ、リコを今の高校に合格へと導かれた神様だったのだ。


日頃から参拝していたリコは、次なる短大へ向けて、お願いしていた。


そして、絵馬を書き、その絵馬を沢山置いてある所に、同じように置いた。


絵馬には、いろんな所から参拝者があり、皆同じように、合格祈願が書いてあった。。。



リコ「皆、同じなんだね。。。私も頑張ろっと!」


そう、言い立ち去ろうとした時、一枚の絵馬が目に止まる。



リコ「あれ??、、、これって?、、」


思わず手に取った。。。


その絵馬には関東の国立大学の名前が書いてあり、最後に願い主の名前が記されていた。


そう、あの田中の名前が記されていた。


暫くその絵馬を離せず、ずっと手に取り見ていた。。。


リコ「国立。。。凄いなぁ、、相変わらず頭いいんだね。。。合格できるように、願ってるよ。。。」


リコはぽつりとそう言いながら、1つの小さな奇跡みたいな出逢いにこんな事を思った。


(こんな、小さな神社に?しかも、彼のお家は此処からはかなり遠いはず。。

よく、この神社の事、知ってたなぁ。。)


それくらい、小さな、隠れ家のような、知っている人は知る。みたいな神社だったのである。


彼がその国立大学に合格したかはわからないリコだが、この神社での出来事はずっと忘れない。。。。


最後に大人なったリコを少し。。。


短大を出て、働くようになり、恋人と言える男性とも出逢い、普通の女性が歩くであろう道を歩いてきたリコ。


ちょっと普通ではないとすれば、あの時の初恋をおばちゃんになった今でも、大切にしている事だろうか。。。


決して、淡い初恋ではなかったが、それでも、リコを成長させてくれた、たった1つの恋には違いない。。。

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初恋 中筒ユリナ @ariosu-siva

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