<短編11>初めてのマイカー

初めてマイカーを購入した時、どんな気持ちになるのだろう?


それほど車が好きって訳でもない彼は初めてのマイカーを持て余していた。

最初は白のFCを買う気でいたのだが。父がトヨタ系列で勤めている為、トヨタの車にしなさいと選択肢を狭められたものだ。

その中でも際立った赤色のSW20は学生時代に憧れたフェラーリを彷彿させるものであり、次第に惹かれていった。しかしどんな車であるのか知らずに、見た目で選択した事を後悔するのは後になってからだった。


真っ赤に映えるSW20が納車されて初めてステアリングを握った時。新車の香りが鼻腔を刺激し、興奮も相まって心躍ったものだ。


だが目的も何も持たずに、購入した赤いSW20は普段の足からデートカーとなり、彼女も作れず振られた腹いせに車の遊び仲間たちの中に入っていく。


佐「今夜峠に行こう!楽しいぞ」

陣「オーケイ!初めての峠なんで、お手柔らかに」


陣は飛ばしている佐の車について行くのがやっとで、車の挙動が怪しく危険な状態であった。

峠といった場所を走った事も無い人が走り慣れる人について行こうというのは無理というもの。


案の定、緊張の限界が切れて思い切りガードレールに突っ込んでしまったのだ。


「……」


ショックで放心状態となった陣は免許証を破り捨てようかという衝動に駆られたが、運搬車に運ばれる破損したSW20を眺めて思い留まる。


「そうだな……まだ始まったばかりなのだ……」


全損した車が退院してきた時、「走り屋」としてドラテクを磨く事を誓うのだった……

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桜俊 <短編集> 桜俊 @ohshun

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