【前章『一之線・苛』】

「肝試しって何すんだよ」


さっさと終わらせて帰りたかった。

帰る、つっても、俺にはもう帰る場所なんざ無いが。

クソババアが死んで、俺の身元はババアの親に移った。

認知症を発生したボケ老人どもで、自分で金ェ使ったのに俺が盗んだと言いやがる節穴どもだ。

中学に上がってからは一回もあのボケどもの家にゃ帰ってねぇ。

顔が良いから同級生とか上級生の女の家を適当に回ってる。

小銭稼ぎで、最近はOLとか看護師、保育士をやってる女の部屋で過ごしてるが。


「神社の中に入って祠にお参りすんだよ」


そばかすの汚ねぇ顔をした運転手が口を挟んで来やがる。


「テメェには聞いてねぇよボケ」


顔を真っ赤にして暴言を吐いてきそうだったが無視した。


「一番手はお前だ、八峡。携帯電話を預かるぞ」


眼鏡が手を伸ばして来た。


「は?」

「なんでテメェに渡さなきゃならねぇんだよ」


別に俺の携帯じゃない。

俺に貢いだデブ女がくれたモンだ。

趣味が悪いからピンク色の携帯電話を持って来やがって。

それと俺とプリクラで撮ったシールを携帯電話のバッテリーに点けてやがった。

気色悪ィから速攻で剥がして捨てたが。


「肝試しだぞ?」

「中に入って連絡を取られたら困るだろ?」


知るか。

俺のモンをお前が預かるのが意味分からねぇって言ってんだよ。


「早くしろよ」


デブが口を挟んで来やがる。

無視して俺は眼鏡を睨み続けた。


「黙れデブ」

「臭い息吐いてんじゃねぇよ」

「胃袋が腐ってんだからよ」


俺はそう言って舌打ちをする。


「なんだ八峡」

「怖いのか?」


「あ?」


俺は突拍子も無くそう言われて怒りを覚えた。

誰が何を怖がってるって?

クソが、ボケカス共。

俺は憤りを感じて歩き出す。

どうするか、なんて、決まりきった事だ。


【素直に従う程に俺は馬鹿じゃねぇ】

https://kakuyomu.jp/works/16816700426335346360/episodes/16816700427036031066


【面倒だがさっさと終わらせてやる】

https://kakuyomu.jp/works/16816700426335346360/episodes/16816700428168073550

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