ステージ1─1の雑魚弱スライム、同情されて世界最強のパーティメンバーに育てられまくる

@toyase

第1話 冒険者認定試験一日目

今日は待ちに待った、冒険者認定試験の日。今まで師匠達の元で地獄のような訓練を受けてきた僕だが、未だに冒険者への道は遠い。

冒険者────魔物との戦闘を経て、自らを昨日より強くする。限界を超えて魔物と戦う僕の憧れ。


「師匠、今日の認定試験の内容はなんですか?」


「今日の認定試験は闘技場での実技試験です。何度も言いますが、必ず手加減を忘れないでください………試験監督を怖がらせないように気をつける事!!」


「で、ですが師匠!!

 僕程度が戦うにはまだまだ実力が足りません………僕が手加減をするまでも無いでしょう。最悪僕の防御結界が弱すぎて殺される可能性すら─────」


「はぁ。

 まぁ実際に戦ってみればわかることでしょう。貴方は今まで誰から特訓を受けていたのですか?

 しっかりと思い出してみてください。」


 訓練────僕の師匠、世界最強の冒険者パーティ『究極ひひいろ』の皆んなとの擬似戦闘。そう、毎日の訓練はダンジョンで行う。ダンジョンでの死は、一時的なものでしか無く、ダンジョンで死んでも魂は保護されて元の場所へと帰る。


 僕はそこで毎日のように師匠に殴り、蹴られ、ミンチにされてきた。

 ただただ師匠達に一撃入れようと頭をフル回転させて、ひたすらに考える。

 魔法を打っても無効化され、物理攻撃に転じても逆にボコボコにされる。


「ふ、ふふふひひひ!!

 師匠達は確かに人智を超えた存在ですね。僕程度では到底及びません。」


 身体が震える、恐怖だ。

 毎日のように殺されてきた僕には、師匠への恐れと死への恐怖がこべりついている。

 想像するだけで泡を吐くほどだ。


「それだけわかっていれば大丈夫でしょう。

 試験監督は我々『究極ひひいろ』に比べれば雑魚同然です。手加減を、忘れないでくださいね?」


「はい!!」









「ここが試験会場………だよね?」


 武具を着た冒険者志望の猛者達がばっこしている。

 (皆んなムキムキで、なんか凄く強そう………)


「あぁ!?

 いつから冒険者ギルドはこんなガキを雇うようになったんだぁ!?」


「へ?

 ぼ、僕!?」


(怖い…怖い…怖い!!

なんで僕、怒られてるの!?)


「なんだぁ?

 お前男かよ………手前みたいなガキが冒険者になれる訳ねぇんだから、さっさと立ち去りやがれ。」


 え………もしかして僕、喧嘩売られてる!?

 そんなに僕って弱そうに見えるのかな。確かに僕は身長低いし筋肉量も少ないけど──────


「僕だって冒険者になりたいんです!!

 貴方に言われる筋合いなんてありません。」


「オメェ、状況わかってんのか!?あぁ!?

 この剣鬼ゴルグ様に逆らったこと、後悔させてやるよ!!」


 本気のパンチ………それも加速のスキルを乗せてある打撃!!


(かわせるか!?

いや、よく見ろ僕。こんな打撃─────)


 師匠の剣戟に比べれば遅すぎる!!


「〝暴食王の右腕グラトニー〟」


 男のパンチをギリギリのところでかわした僕の拳が、男を完全に捉える。

 僕の力が付与された渾身の一撃………流石に顔面に食らえば只では済まない筈!!



「………なっ!?

 俺様の攻撃をかわした!?」


《警告です。加護の首飾りが9999ダメージを代わり受けしました。残り20001ダメージで加護の首飾りが破損します。》


(な、なんだ今の闇の拳は………俺の加護の首飾りがダメージを代わり受けしなかったら、それこそ一撃で殺されていたぞ。)


(う、そ………僕の拳を受けて無傷!?

いや、僕の眼力では追えない程の速度でかわしたのか?)


「さ、流石は剣鬼というだけはありますね。僕の攻撃を受けて無傷とは………僕もまだまだです。

 貴方のおっしゃる通り冒険者になるには、僕は弱すぎたようです。」


「え、いや!!

 き、君は充分強いと思うぞ………君が心配で少し試させてもらった。君の強さは冒険者になるに充分だ。試験に励むと、いい…………」


(こんなガキに構ってられるかっての!!

命がいくつあっても足りねぇよ………)


「そうだったんですか!!

 やはり冒険者の皆さんは凄いです………僕の想像の遥か上を行く。尊敬します!!」


(や、やめてくれ!!

そんな輝いた目で俺を見るな!!俺はただ単にお前を脅して認定試験から消してやろうと思ってただけなんだ………姑息なクズなんだよ。)


「ゴルグさんも、昇進試験頑張ってください!!」


「は、俺が昇進試験??

 俺は認定試験を受けに来ただけで………」


「冗談はよしてください剣鬼ゴルグさん………僕には全てお見通しです。ゴルグさんは昇進試験を受けるついでに僕に冒険者の世界の厳しさを教えてくれた、凄い人なんです!!」


(や、め、ろ!!

俺はそんな凄い人間じゃ無いんだ!!お前を陥れようとしただけなんだ!!)


「もし、冒険者試験に受かったら、またご指導お願いします!!

 それでは─────」



「去っていったか。」


(うーん。俺、冒険者になんの諦めようかな?

村に戻って親父の鍛冶場を継ぐか………)


「とんだ災難だったな………これからは誠実に生きよう。」


「それは良い判断です。

次元断裂ディメンションブレイク〟」


《警告です。加護の首飾りが破壊されました。ダメージの代わり受けが発動しません。》


「なっ………!?

 一瞬で20001ダメージだと!?」


「リンに何か有れば貴方もらとも冥府へ送って差し上げようかと思いました、が………結果的にリンの為になりましたので今回は見逃して差し上げましょう。

 今後とも、リンの害になることは控えるようにお願いいたしますよ?」


「あ、アンタは………アンタ達は何者なんだ!!

 さっきのガキといい、アンタといい強さの桁が狂ってんだよ!!」


「私たちはパーティ『究極ひひいろ』─────世界最強の冒険者パーティと言われる者です。

 リンはその中でも新人ですが、既に戦闘能力は私を超える………ちなみに、リンの保護者である私も『究極ひひいろ』のメンバーです。名をリューズ・メリル、覚えておいてくださいね。」


「リューズ・メリルって、あの龍殺しのメリル!?

 そんな奴らがなんでこんな田舎の冒険者ギルドに………」


「それには特に理由も無いんですが、強いて言うなら………リンの故郷だから、ですかね。」


「はぁ。もう俺、認定試験受けんの辞めようかな。」

 

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