終章
刹那がこの星に滞在してから一年がたつ頃にアレクは父ルシフェルと四天王や仕えていた者達を連れて国を出ていく。
アオイがここに留まってくれと頼んだが「邪神や影に操られていたのだとしても父の犯した罪が消えるわけではない。だから瑠璃王国が再建され落ち着いた今。ぼく達がこの国に残ることは許されない」と言って断った。
そして「それでも何かあったらすぐに駆け付けるし、君が寂しいというのならばたまには遊びに来るから」と意地悪く笑い旅立つ。
アレク達はかつてアオイ達がお世話になった隠れ里へと移り住みそこで後の世まで続く武家の基礎を築き上げる。
「そうしてそれぞれが新たな生活を送り、瑠璃王国は役百年にわたり倭国を統一し栄えていた。しかし四十年前に突如復活した邪神によりアオイの血をひく者達は次々と殺されていった。王や王妃を始め家臣達が必死に守った赤子と、生き残った僅かな臣や兵士達だけで国から遠く離れた地へと隠れる。そしてそのまま消息は不明とされているが誰かがかくまっているという噂もある。その後赤子は貴族の家に預けられ養子として育てられたそうだ。王から信頼されていた貴族の一人に国を譲り彼は江渡の国を作り上げ倭国から改名し日ノ本とした。それからこの国の王は瑠璃王国の王位継承者だけだと言い切り「王」と名乗るのは恐れ多いので「殿」と呼ぶように国中に触書を出した。そうして王様から国を受け継いだ殿様が君臨するようになってからこの国には破魔矢の信託が十年おきに現れるようになった。それが新たな聖女伝説の始まりである……」
刹那は神殿の中で真実が記録されていく書の内容を読み上げるとそれを閉じ書棚に仕舞う。
「……アオイ達との約束だからね。そして僕がここにいるのもまた運命。だから今度はちゃんと最後まで見届けるよ。「信託を受けし神子」と瑠璃王国の末裔の「白銀の聖女」と帝国の末裔の「光の女神」と呼ばれる少女達の旅を、ね」
そう呟くと神殿の外へと向かい歩いていく。
「……」
そして外へと出ると夜空にきらめく星々を見詰める。
「……また星が廻るのか」
そう呟き胸元で揺れる緑石に手を添える。すると淡い煌きに包まれ彼女の姿はそこから消えていた。
「……」
次に彼女が現れたのは江渡の王国の近くの森の上空。真っ逆さまに地面へと落ちている状況にもかかわらず声をあげる事無くただ無感情に流れる雲を見詰める。
「よっと」
風を切りながら急速に落下していった後軽く地面に足を着地させた。
「行こう。運命が巡り会う場所へ」
そう独り言を呟くと緑石の光が指し示すままに江渡の城下町へと向けて足を進めた。
~Another story~ 異世界から来た運命の子 ≪完≫
~Another story~ 異世界から来た運命の子 水竜寺葵 @kuonnkanata
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます