第10話 指が蛸とか気持ち悪くないすか
朝日が差し込む室内におだやかな寝息が響く。昨日の戦闘からは想像もできないほど幼い寝顔をしている。
「眠い。」
もぞもぞと寝返りを打ちながら今日の予定を確認する。めんどくさいが日課であり、仕事上必要だ。特に資格持ちでは、だ。
「げ、今日はミーティングだ・・・」
心底嫌そうな顔をしながらベッドから飛び起きる。日課のトレーニングを怠るわけにはいかないからだ。体が資本の戦闘職では怠慢が命取りだ。
しっかりと体を動かした後部屋を出てシャワールームに行く。有資格者はかなり優遇されているのを実感する。のんびりシャワーを浴びているとシャワールーム内に音声着信が響く。
「ちっ・・・はい、晴真」
不機嫌さを隠そうともせずに通話を開始した。
「おはようございまーす!!本日のミーティングは10時から第一戦闘指揮所横の会議室で行いま・・・」
切った。わざわざ知ってる情報とシャワー中にあのキンキン声は脳に来る。
「なんで切るんですか晴真さん~!!」
強制的に通信が開始された。本部のシステムをハッキングしてまで通信をしてくる理由など思いつかないが、才能の無駄使いであることはわかる。そして腹が立ったので手元の端末で雨宮に瑠華がシステムのハッキングをしていることを連絡する。
「・・・聞いてるんですか晴真さん~?昨日の件は本当に私のミスでもうし、え?あれ?雨宮さん?あちょっといたたた晴真さんちくり・・」
通信が強制的に切れた。雨宮もたまにはいいことするもんだ。どの雨宮か知らないが。
髪を乾かして身だしなみを整えると新品の隊服を着て部屋をでる。バックパックにいろいろと詰め込んで、といっても私物なんてほとんどないのだが。
食堂に行き朝食をとりコーヒーを飲んでいると隣に誰か座ってくる。
「先ほどはありがとうゴザイマシタ」
雨宮が謎の色をした飲み物を啜りながら声をかけてくる。
「こちらこそっす。」
ぶっきらぼうにそう返すと、雨宮はくっくっっくっくと変なリズムで笑いながら携帯端末をいじる。超高速で。
「・・・指の動き超気持ち悪いっすね」
「言うに事欠いてヒドいネ?毎日モーニングコールするヨ?」
その瞬間平謝りした。
人形使いと愛しのお婆さま @sumiyosiizumo
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