第10話 [みんなで食べる晩御飯は美味しい①]

 —猫宮視点—


 時は夕方、場所は自分ちの風呂場、そして私はシャワーを浴びている。


 って冷静にTPOを確認してる場合じゃない!

 ついつい空音くんの手料理に目が眩んで一緒に夜ご飯を食べる約束をしてしまった!!

 ちなみに私の部屋に運んでもらうのは流石に図々しすぎるからやめた。流石にねぇ……?


「はふぅー……」


 頭と体を洗い終えた私は湯船に浸かり、天井を見上げていた。

 学校のみんなは「男はみんなケダモノ!」と言っているけれど、空音くんはそんなことしないだろうと直感的に思った。

 私はお母さん譲りで勘がいい方、だから自分を信じることにする。


 と言うか、そんなことは実際どうでもいいのだ!

 のあとから私は心臓がずっとバクバク鳴っていて治る気がしない。


(う〜〜! 本当にこれなんなんだろう……)


 あの時空音くんに助けられてから、なぜか心臓の鼓動が早くなって顔が真っ赤になったし、顔を直視するのがままならなかった。

 これが何なのかが全くわからない。

 病気? 不整脈? わからない……。


「あ……ちょっとのぼせてきた……」


 うーんうーんと考えていたらさらに体温が上がった気がする。知恵熱だろうか。

 私は完全にのぼせる前に風呂を出て、着替えて、ドライヤーで髪を乾かした後にキンキンに冷えた麦茶


「ぷはーっ! さて、と。この服装変じゃないよね……」


 私の今の服装は真っ黒なパーカーにジーパンを履いている。

 シンプルイズベストって言うし、多分大丈夫だろう。


 私は家にあったお菓子を袋に入れ、空音くんの部屋の前へとやってきた。

 私の下の階ということは知っていたけれど、私の部屋の真下だった。


「お、落ち着け私……深呼吸を……ひっひっふー。って、これ腹式呼吸だ……」


 数秒で気持ちを整え、私はインターホンを押した。

 するとドアがガチャリと開き、中から空音くんが出てきた。


「いらっしゃい、入っていいよ」

「お、お邪魔します……」


 靴を脱ぎ、中へ入る。

 リビングは男の子が一人暮らししているとは思えないほど綺麗な部屋だった。


「ご飯はまだ作ってる途中だからそこのソファにでも座ってテレビでも見ててくれ」

「う、うん」


 私は言われるがままにソファに座り、テレビを見始めようとしたのだが、部屋の隅にある仏壇が目に入った。


「あ……」


 そこには空音くんの面影がある男の人だった。

 その人は空音くんより男らしい顔をしていたのでお父さんなのだろう。


 ——そうだ。空音くんは一人暮らしで、お母さんが仕事で家を空けていると言っていた。

 お母さんが家にいないなら、お父さんが家に残って二人で生活するはず……。

 だけど……いない。

 ——だから、一人暮らし。


 私はチラッと横目で料理をしている空音くんを見た。


「ふんふんふふ〜ん♪」


 空音くんは鼻歌を歌いながら料理をしていた。

 学校で見たことがないくらい上機嫌だ。


 私は気になってしまった。

 一人でご飯を作って、一人でご飯食べて、一人で寝て、一人で朝起きて……。


 ——寂しくないのか。


 だけど空音くんにとっての“地雷”ってものかもしれない……けど気になる……うーん。


 私は悶々とした気持ちを抱えながらソファに座っていたが、いつのまにか眠りについていた。





 私は暗闇の中にいた。

 だがが私の鼻を刺激し、覚醒させようとする。

 カリッとして何度でも噛みたくなるような感触。それだけに収まらず、中からじゅわーっと溢れ出す肉汁。

 あの人類が生み出した最高峰の料理……。

 そう——


「ハンバーグ!!!」

「お、ナイスタイミングで起きたな。ちょうど料理できたから食べれるぞ」


 目を開けると、机の上に料理を運んでいる空音くんの姿があった。

 というか、いつの間にか私に毛布がかけられていた。


「ご、ごめん……夜ご飯作ってもらってるのに寝ちゃって……」

「ご飯の時はちゃんと起きるって、なんか猫みたいだな」

「う……むむむぅ……」


 反論できない……。

 だって本当のことを言われたから。


 私は少し眉をひそめ、頰を膨らましながら席へ着いた。

 だが目の前に置いてある料理を見てさっきのことはどうでもよくなった。

 机の上の料理が全て輝いて見えるのだ!


「じゅるり……」

「猫宮さん、よだれが垂れてるよ」


 ニヤニヤと笑いながらそう言ってきた。


「わ、忘れて……」

「そんじゃあ食べようか」

「うん……!」

「「いただきます」」


 まずはメインのハンバーグを箸で一口。


「うっ……うんまぁぁい!!」


 な、なんなんのこれは!?

 今まで食べてきた様々な料理店のハンバーグを一気に押し退けて堂々の一位に成り上がった!

 こ……これは本当に美味しすぎる!!


 私は白米とハンバーグを食らいまくった。


「おいコラ、猫宮さん。野菜を避けるな」

「う、バレた」


 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄


明日は投稿お休みします!

もしかしたら明後日もできないかも……。


すみません!!m(_ _)m

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猫被りが出来てない猫宮さん 海夏世もみじ(カエデウマ) @Fut1

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