第4話

〈村松〉

 ペースの錯乱したテスト準備の巻き返しを図ろうと襟を正す振りをする。カメラの存在に気付かせたくなかったけど失敗した。先程の行為以上に凄烈に飛び出て行った恵子ちゃんはモニターで放映されていないことから喫茶店などで時間を潰すか絶望して家に蜻蛉帰りしているかな。荷物が一つ寂しく佇んでいるのは後で忘れ物ボックスに入れておくとしよう。

 そんなことより。

 やばい、恵子ちゃんが可愛すぎる。行為もそうだけど監視を理解した瞬間のあの蒼褪めっぷり。辛いだろうなぁ恥ずかしいだろうなぁ。今頃頭抱えて眼球穿り出して青空に向けて放り投げているだろうな。それを私がキャッチしたい。思考が脱線事故でお詫び申し上げるくらい愛らしい。

 はぁ恵子ちゃん。何だか君に釣られて私も興奮してきたよ。あぁはぁ。影響受けやすいのは私だったか。勤務中なのにどうしてくれるの。ねぇ恵子ちゃん責任取ってよ。私の仕事が手に付かないのは恵子ちゃんに原因があるんだから。んふ。大丈夫、ここにはまだ誰もいない。私は毎度早いから直ぐに済む。恵子ちゃんの勇気に倣って脚を伸ばす。裸にはならないけど、うへ。あぁ声くらい出そうかな。ん、んんっ、うわ、あ、あ、空高く飛びそう、は、んぐ、「ぬぁぁっ」はぁ、はぁ、はぁ……ふぅーっ。

 入口を振り返ると、恵子ちゃんが見ていた。

 電撃が走ったのは私の方だった。今度は逆に見られた。恵子ちゃんは私の察知に気付くと再度駆け足に去って行った。

 あぁ、チューター生活が終わった。

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オナバレッタ 沈黙静寂 @cookingmama

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