第19話 軛村ニテ神退治ノ事(八) わらべうた
幸太は
「モドリってのはな、名前の通り山から戻ってきた人柱にされた女の事だ。村に戻ってきてもすぐに死んじまう。どれだけ介抱しても二、三日すれば事切れちまったらしい、俺はその場に立ち会う事は出来なかったが女達はみな同じような事を言いながら死んでいったと。」
僕は言葉を逃すまいと次の言葉を待った。飴屋は堪え切れず問う。
「何と、言っていたのですか?」
━その時僕は脳天に
そして…繋がった。
尋常ならざる僕の様子を見て飴屋が聞いた。玲さんどうしたのですか?、と。
その言葉に返事が出来ないまま僕は思い出していた。
わらべうたの事だ。
やまがみにとられてもどったむすめっこー かたわになってしまわれたー
おーなじことばをはーくちーのように
うーえかいなーうえかいなー
上に、神は居ない
「飴屋、うえかいな、ってさ…上に神は居ないって意味なんじゃないかな?」
口元に手を当てた飴屋は思案を巡らせている。
「嗚呼、確かに、辻褄は合いますね。上に神は居ない、うえ…か…いな…うえ"に"か"みは"いな"い。」
わらべうたは、と僕は思った。
「村八分を恐れて、おいそれとは口に出来なかったこの事実を、それでも誰かに伝えたかったんじゃないか?その人はわらべうたを作り子供たちに伝えた。いつか山の上に居る神になり代わった怪物の存在を、村長達のやり方に疑問を投げかける人々に届くように。もしかしたらそういった人達が歌を伝え続けたのだとしたら…」
幸太が僕達の顔を見据えて言った。
「それが
繋がったと僕は思った。
頭をポリポリと掻くと幸太はこう言った。
「もう夜も更けて来た、あまり遅く帰ると奴らに疑われるかもしれん。そろそろ帰りな。明日もうちっと詳しく話するからよ。次は目立たない様に来い、また家の前で大声出すんじゃねえよ。」
そう言うと幸太はフッと笑った、それは誇りを取り戻した人間の顔だった。僕達は挨拶をして別れた。
━村が寝静まった後、火の手が上がり幸太の家が全て燃え尽きた。
飴屋あやかし噺 神楽 羊 @NyasoNostalgic
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。飴屋あやかし噺の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます