桃太郎に東京二十三区を混ぜてみた
二〇二〇年。東京都中央区に山田太郎、山田花子という、履歴書の見本になりそうな名の夫婦がいた。
太郎は千代田区へ柴刈りに、花子は江東区の川へ洗濯に行った。
花子が川で洗濯をしていると、港区のスーパーマーケットで販売されていた桃が、巨大化して流れてきた。
結局、花子は桃を持ち帰り、太郎が斧(杉並区で購入)で桃を割った。すると、中から赤ちゃんが「足立区! 足立区!」と泣いて叫んで現れた。
赤ちゃんは「桃太郎」と名づけられ、大切に育てられた。
桃太郎は小学校を卒業して台東区に引っ越した。そして間もなく、鬼による事件が多発。東京都は混乱に陥った。
「鬼たちのアジトは練馬区にあるみたいです。退治しに行こうと思います」
桃太郎の意気に二人は押され、花子は荒川区で購入したきび団子を渡した。
家を出発した桃太郎は、文京区で犬、北区で猿、板橋区でキジと出会い、仲間にした。
桃太郎たちは豊島区で休憩した後、新宿区で買い物、中野区で再び休憩して、ついに練馬区にたどり着いた。
「やっと……やっと着いた。戦いが終わったら渋谷区でパーティーでもしましょう」
「こんなときに何を言っているんですか! しっかりしてください!」
目黒区生まれの犬の言葉に、世田谷区生まれの猿がものすごい剣幕で怒る。品川区生まれのキジが「まあまあ」と仲介に入った。
桃太郎たちは気を取り直してアジトを探す。しかし、鬼の気配はない。
詳しく調べてみると、どうやら鬼たちは、江戸川区から少し離れた先の「鬼ヶ島」に住んでいるらしい。桃太郎たちはがくりと項垂れた。
桃太郎たちは徒歩で大田区まで移動、船で鬼ヶ島へ向かった。
鬼ヶ島に到着した桃太郎たちは、各区から集まった二十三人の鬼と対峙。死闘の末、勝利をもぎ取った。勝利のパーティーは渋谷区……ではなく墨田区で行われた。
桃太郎に現代のものを混ぜたらおかしなことになった 田中勇道 @yudoutanaka
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