BENと便の晴れ舞台

石田 悠翔

第1話高校生活の終章

僕は、今までも、緊張して失敗してきた。


とくに、お腹を下して、


いま僕は、学園祭のクラスの出し物の前、トイレにこもっている。 腕時計は十一時を指し


ている。十一時十分には劇が始まる。


だがこの腹にいる怪獣は怒りを収める気配がない。 それどころか座りすぎて、お尻が痛い。


「くそぉ。」


別にいま下痢だから、それにかけたわけではないが、右手を握り、 かべに打ち付ける。


ピーンポーン


そこには、絵にかいたような赤いボタンを押している自分の手があった。


そして、意識が吸い込まれる。


一瞬、意識が飛んだ気がするが、まぁ気のせいだろう。


視界にある腕時計は、長い針は、一と二の狭間をゆっくりと進んでいる。


それを見て、焦り、尻を拭き、急いでトイレを後にする。


クラスの劇の演目は、桃太郎。 僕はその主役である。


舞台裏に滑り込み、ぎりぎり間に合った。それと同時に舞台の幕が上がる。 「桃から生まれた桃太郎。そしてさんとばあさんに育てられ成長し、犬とサルとキジを


連れ、鬼を倒しましたとさ。」


その、この物語は、鬼を倒したその後、つまり、後日談である。


「桃太郎は、その後、もう地上は制覇した。 次はワンピースがラピュタを探してすべてを


支配してやる。」


と、村人に威張っているところを犬に見られて、それを止めようと大は動き出しました。 「桃太郎が最近ウザく てきたから、そろそろ懲らしめて殺らないとね。」


「そだねー。」


イチゴを頬張るサルは、一つ提案をした。 「桃太郎の尻に刀突き刺すのはどうかな。」


「そんな、十八禁のBLみたいなの、いやだよ。」


「いや、指すのは桃太郎の刀だから。 桃太郎の鬼の血が染み込んだ、妖刀鬼刃だから」


「誰に何を突き刺すって。」


サルは野生の本能に従い、怯える。


「も、ももたろう?」


「あぁ、そうだよ、お前らも、キジと一緒に夕飯にしてやるべきだったな。」

 

 本性を表したな、この悪覚め。」 桃太郎は腰の刀を抜き、構える。


君から脳の団子を受け取らなければよかったよ。」 「こちらも、貴様らなど早々に切り捨てていればよかったよ。」


犬とサルは吠える。 桃太郎への威嚇として、


しかし、桃太郎は、その狙いに気付かなかった。背後から忍び寄る。 髪の長いお婆さんに。 握られた包丁は、桃太郎の、つまり、僕の尻に突き刺さった。まぁ、おもちゃだから、切 れはしない。しかし、知らぬ間にひいていた便意を呼び起こし、ダムを決壊させるには十分 な威力だった。


随分と迫真の演技だなぁと客席から歓声が上がるが、もう、遅かった。


すでに大惨事である。


BENがある便があぁ、 心の中で叫ぶ。


「こうして、桃太郎は改心し、村に一生をかけ、尽くすことを誓ったとさ。おしまいお しまい。」


放送とともに幕が下りる。 しかし、終わったのは、僕のパンツとプライドであった。

 

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BENと便の晴れ舞台 石田 悠翔 @Ishida1210

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