後編
急に
「ふぁぁ。起きてるよぉ」
聞こえる
途端に棚の中から次々と、本が
何もないはずの天井からリフトが
彼は
「おあおうぅ、銀川くん」
「おはようございます。っていうか、
杏士は抱えていた本を棚に戻していく。
館長はパジャマの上から
「……ねぇ、僕の朝ご飯はぁ?」
「着替えが先です」
これが、毎日の
初めの
館長の
杏士は棚からフランクドッグの入った紙袋を手にとると、
「今日は大事な視察ですからね。
「ふぁふぁっえうっへふぁ」
彼は今、『分かってるってば』と言ったのだろうけれど、早々にフランクドッグにかぶりついたから、
館長は、仕事では
けれど食べ物を見つけると、気が
初めて彼に
司書たちから気を付けるよう言われていたにも
杏士は
今回も視察場所にカフェがあるから……、はしゃぐだろう。
杏士の
この「人間より人間らしい」
『空が好き』
幼い頃の「
自分でも気づかないまま「夢」というものに
『銀川くん。その願いは、君にとって本当に大切なことなの?』
館長の
しばらくは、彼の
「食べ終わったら、
杏士は本を棚へと戻しながら、コーヒーを一口飲んでは
「あのねぇ、朝のコーヒーは僕の
館長はそう言って、指を一つ
すると、其処此処に置かれていた本が
中央に
複数あるディスプレイの映像は止まって、
杏士は切り替えるように、ジャケットの
「さあ、館長。今日は四階の
「えぇー。
館長は
杏士は溜め息
「
彼と同じく魔法使いの司書数名が、昨日、やらかした館長を
おかげで、
館長は目を
「……僕?」
杏士は再び溜め息を吐いた。
「あなた以外、誰がいるんですか」
「だって!
「『だって』じゃ、ありません!」
「やだぁー! 銀川くん、
「怖くて
杏士は
「行きますよ。時間に
そんな彼の姿に、杏士はなぜだか
杏士はもう片方の手で、自身の
「……これ、あげますから。早く泣き止んでください」
杏士は『
「……ありがと。銀川くん」
涙を止めた館長に、杏士は
四階のギャラリーを抜けた、扉の前。
杏士はもう一つマドレーヌを取り出して、館長に
幸せそうに食べている彼のネクタイを直しながら、杏士は声を
「よく
杏士は館長の口の
館長は
「さあ、銀川くん! 行こーう!」
「
杏士は、扉を開ける。
ミュージアムの魔法使い 水無 月 @mizunashitsuki
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