第4話 世界大会②
「資金集めは素材関係のミッションが効率いいかなー」
昨日の広場のミッションカウンターに移動して、コンソールを叩く。
ツグミのアドバイス通りSPクエストの欄から『軍資金ミッション(中級)』を選択する。
『中級で大丈夫? 初級からの方がよくない?』
オペレートしてくれるツグミが心配そうな声を上げる。
「一回やってみたいんだ」
『今の機体性能だと、ギリギリかな……頑張って!』
一気にバーニアを吹かして、出撃する。
戦場に出てすぐ敵機の反応、遮るもののない荒野にチュートリアルと同じ機体、ザレンである。装備はマシンガン、数は三機。
先手必勝、さっきの仕返しも兼ねて、地上に着地する前に攻撃する。
今回はバスターライフルを装備してきた、グレイスの初期装備のライフルよりも一・六倍長い砲身から放たれる熱線が三機の内一機に直撃する。
直撃した一機は消滅し、付近のいるもう一機もその余波で爆散する。
着地と同時に最後の一機をレーザーブレードで一閃し、真っ二つにする。
第一陣は片付けた、続けてレッドアラートとともに第二陣が出現、今度も三機のザレン。規則正しく並んだ三機の機体、一番右の機体はバスターライフルよりも巨大で肩に担いで撃つタイプの長距離射程ライフル、そして左の機体は巨大なミサイルを装備していた。拠点制圧用のミサイル三門を両腕に装備している。
そして真ん中は通常のライフル装備、装備について特筆すべき点はない。特徴はザレンの通常カラーは灰色だが真ん中の機体は赤い、確か赤いザレンは隊長機だったはず、ザレンに小型ブースターを追加して機動力を高めた機体。
厄介そうなのは脇の二体、あの火力を使われてはたまらない。
地面をホバー移動する三機。
――最初は、右から行くか。
バスターライフルを構える、なけなしのお金と素材でバスターライフルを改造し、リロード時間を短縮したため、二射目は撃てる。
しかし向こうもそれを理解しているようで、高機動の隊長機が前に出た。
「くっ!」
バスターライフルの狙いをつける前に、隊長機の一閃がグレイスに放たれる。
何とか反応し、レーザーブレードで一撃目は受け止めたが、さらに打ち込まれる。まずいこのまままだとやられる。
胴体に装備された小型バルカン砲で牽制する。反撃を嫌がったのか隊長機は上に飛んだ。
しかし飛び上がった隊長機の影から現れたのは大型ライフルの銃口が光り輝いている。
「くそっ!」
悪態を突きながらなんとかシールドで受けたが、さすがの大型ライフルの威力、シールドで受けても衝撃までは殺しきれずに、姿勢が乱れる。
姿勢が崩れたところで拠点制圧用ミサイル二発飛んでくる。
胸部のバルカン砲で迎撃し、巨大な爆炎が視界に広がるが、こちらへの被害はない。
好機、背部のプラズマカノンを構える。
爆炎が晴れたのと同時にプラズマカノンを照射する。
隊長機は躱したが、ライフルのザレンに直撃し、爆散させる。隊長機とミサイルのザレンを分断に成功した。
そして一気に肉薄し、ミサイルのザレンの胴体にレーザーブレードを突き刺す。
「最後だ!」
随伴機がやられた隊長機がライフルを撃ちながら、こちらに来た。
ミサイルのザレンからブレードを引き抜き、スパークするザレンを蹴飛ばす。機体が爆発し、拠点制圧用のミサイルが誘爆する。
「やったか⁉」
『まだだよ!』
ツグミの言う通り、しかし黒煙の中から、隊長機の剣が飛び出してきた。実体剣の刺突が左肩を切り落とす。
「くっ!」
何とかレーザーブレードで反撃し、隊長機に勝利する。
辛くも勝利した、しかし『Mission Complete』の文字が出てこない。
「……まさか」
またもレッドアラートから敵機の反応、隊長機、ミサイル装備のが二機、マシンガン装備のが二機の合計五機。
「このままでは……」
左腕を失い、装甲もボロボロで、残り五機の敵を相手取る――かなりまずい。
荒野を駆ける五機の鉄巨人、各々が武器を構えてこちらに接近してくる。
ささやかな抵抗とばかりに、バスターライフルを構え、プラズマカノンを起動させる。
バスターライフルで二機、残りの三機をプラズマカノンで迎撃、ギリギリだ。
バスターライフルを放ちマシンガン装備を持った二機を完全消滅させる。よし予定通り――しかし、バスターライフルを発射したのが遅すぎた。
バスターライフルを照射し終えたときには、隊長機が既にもう目の前にいた。プラズマカノンの予備動作がまだ――。
――刹那。
目の前の隊長機が何かに貫かれ、爆散する。残りの二機も天から降り注いだ光に焼かれて、消滅する。
光が放たれた方向を確認する。
それは雲の浮かぶ青空に君臨していた、流線型の美しいデザインの白銀の騎士がそこにいた。
「あれは……?」
最初のPVに出てきた、白銀の機体であり、世界大会のPVでも獅子奮迅の立ち回りをした機体であった。
何が起きたか分からず、呆然と立ち尽くす。
『嘘……』
自我が何処かに行ってしまった自分とは逆にオペレートしていたツグミの声は震えていた。
『……チャンピオン』
『ダイゴが援護に来ました』
システムが表示した名前を見て、シュウは思わず息を呑んだ。
その名はこの世界に入りたてのシュウでも知っている、この世界の頂点に立つものであった。
『え、嘘、噓、嘘⁉』
ツグミはまるで九官鳥のように同じ言葉を繰り返し、驚きと歓喜を露にする。
天に坐す白銀の機体、確か名前はセヴンスヘヴン。その流麗な支配者が呆然とする自分を見下ろしている。
「……あ」
この三十秒の出来事が脳に詰め込まれて、何も言えない。
何か言葉をひねり出そうとするが、そうこうしているうちにMission completeの文字が浮かび上がり、シュウはそのまま格納庫に転送された。
シュウとツグミはそのまま呆然としていた。
「ねえ今の!」
「チャンピオンだったな……」
いまだに興奮が収まらない。最初にゲーセンに行ったあの時、セヴンスヘヴンを見てこのゲームを始めたのだ。
そんなトッププレイヤーの姿を間近で見たのだ、手に汗握るというのはこのことか。
「なあ、ツグミ」
「どうしたのシュウくん」
「世界大会に出れば、チャンピオンにまた会えるのかな」
この世界でただ普通に遊べればいいと思っていたけれど、今分かった。
こんなに何かに熱中したのは初めてだった、どうやって勝てるかどうか、必死に考えて試して、失敗して、そんな経験今まであまりなかったから。
俺もチャンピオンみたいに戦いたい。
フレームギア・オンライン 未結式 @shikimiyu
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