2月15日②
冷たい床に寝転がる。日も暮れてきたしあと10分だけ待ってみようか。彼女はそう思った。部屋の前を足音が通っていき床から体を引きはがすと、辺りは真っ暗になっていた。いそいそと起き上がり玄関を出ようとして寝癖がついていないか気になったが、電気も通っていない部屋では確認しようがなく彼女は部屋を後にした。
部屋の目の前に立ち久しぶりに話しかける事に緊張を覚えながら、彼女はインターホンを押した。就活のように思考をまとめていると、大きな音と同時に1人の男が戸から顔を出した。「初めまして。隣の隣に越してきた矢野です。今年から社会人になります。よろしくお願いします。」という言葉と引っ越しそばを相手に押し付ける。言ってから、就活のような自己紹介をしてしまったことに恥ずかしさを覚え、彼女は頭が真っ白になってしまった。たぶん方言も交じってしまったはずだ。
多少の沈黙を破ったのは、湯が吹きこぼれる音であった。彼は慌てふためき、矢継ぎ早に挨拶をして扉を閉めてしまった。
仕方なく部屋に帰る過程で彼女は反省をしながら彼の言葉を思い出そうとしていた。「お礼をするとか言ってなかったっけ、まあいいか。」そう呟いて彼女は荷物を取りに部屋に戻った。
おとなりさん @wookey
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