僕のこと

月曜日

 ドアが空いて風が吹く。タバコを押し付けられたところが痛み、心なしか焦げた匂いがする気がした。

 君は教室に入ってくるなり、顔を顰める。

僕の首元は、思いの外痛々しかったようだ。


火曜日

 僕は学校を休んだ。いわゆる無断欠席。

家から必要なものを持ち出し、ホテルに向かう。僕を止める人はきっと誰もいない。


水曜日

 学校に着くと、君がいた。君の机は、入学した日からずっとさまざまな言葉で塗り尽くされている。世間知らずな君を嘲笑う奴らがくだらない。

 これ程までにこの世の愚かさを知っているというのに。


木曜日

 君は泣いている。雨の音に埋もれるような泣き方だった。辛い、そう口に出せる君が羨ましくてたまらない。 

 涙や血のように、全てをこの雨で流せたらいいのに……そう思った。


金曜日

 昨日、結局雨は止まず、傘がない中ホテルまで帰ってきた。君は大丈夫だっただろうか。

 

土曜日

 家に連れ戻された。なぜ場所がわかったんだろう。誰にも話していないのに。


日曜日

 体のそこらじゅうが痛い。家を抜け出すと、足を引きずりながら学校へ向かう。

 僕の席に君は座ってた。何を思っていたのか、僕にはもう聞くことができない。

 

月曜日

 君はずっと、僕の主人公ヒーローでいてね。




詳細

 君はいじめられ、僕は虐待されている。

 僕が家から抜け出したことを怒った親が、

君から僕の居場所を聞き出そうとした。

 そんな僕の親の暴力に、絶対に口を割らなかった君は、学校の僕の席で死んでいた。

 君という存在を無かったことにしたくない僕は、君として生きていくことに決めた。



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主人公になりたい。 ちひつ @tihitu

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