キャラクターの魅力が光るほのぼの日常ものファンタジー

 事実上の隠居生活を送る魔王と、それを討伐せんとやってきた女騎士との、ちょっとおかしな共同生活のお話。

 のんびりしたスローライフの空気が楽しい、日常ものの異世界ファンタジーです。
 魅力はやはり登場人物、穏やかながらどこか掴み所のない性格の魔王と、素直で従順なあまり半ばアホの子のようでもある女騎士さん。このふたりの掛け合いというか、穏やかな日々の中で交流を深めていく様子が、もう読んでいて本当に心地よいです。やっぱりキャラクターを好きになれるお話っていいよね……。

 一見なにもしんどい要素のない、ほのぼのコメディのような路線を貫きながら、でも終盤はしっかり物語してくれるのも魅力のひとつ。
 内容そのものは結構シリアスなんですけど、でもそこに力点を置きすぎないところがなお好きです。「ただのほのぼのした人たち」では終わらないからこその魅力と、でもあくまで彼らのキャラクターが主軸にあることの嬉しさ。
 キャラの魅力と全体に漂う優しい雰囲気が楽しい、素敵なファンタジー作品でした。