6話

 愛咲は21時を過ぎても、いまだに帰っきていない。

 ……実は、俺と一緒に暮らすのが嫌すぎて出て行っちゃった? いやいや、流石にそれはないか。愛咲はまだ中学生だし、いくあてもないだろ。


 にしても中学生、それも可愛い女の子がこんな遅くまで出歩いているとなると、少し説教する必要があるな。何かあってからじゃ遅いからな。


「……た、ただいま〜」


 こそこそと入ってくる愛咲。

 結局帰ってきたのは22時を少し過ぎた頃だった。


「おう。お帰り。それより、こんな遅くまでどこ行ってたんだ?」

「……実家に行ってました」

「そ、そうか。でも、もう少し早く帰って来れなかったのか?」

「……ごめんなさい。実家に行ったら、お父さんたちの匂いが微かにして、安心しちゃって。少し横になるだけって思ってたら、ついさっきまで寝ちゃってました」


 そんな事を言われたら、怒るに怒れなくなっちまったじゃねーかよ。


「そ、そうだったのか、ま、まぁ次からはこんなに遅くまで出歩くなよ? 遅くなる時は連絡してくれ」

「……スマホ持ってないです」

「……まじか。なら、土曜日に買いに行くか!」

「でも、スマホって結構高くないですか? ……申し訳ないですよ」

「そんなの気にすんな。むしろ連絡手段がない方が困るし。それに今時の中学生って携帯持ってるの当たり前なんだろ?」

「それは、そうですけど」

「なら、友達と連絡するのにも必要だろ? というか、今までどうやって連絡とってたの?」

「……私、友達あんまりいないんですよね。友達と遊びに行く事もなかったですし、スマホ必要なかったんですよね〜」


 笑いながら言っているが、全然笑えないんだが。え、なに。こんなにコミュニケーション能力高いのに友達ができないのか? しかも客観的に見ても可愛いのに? リア充だと思っていたんだが。


「意外だな。てっきり友達も多いと思ってた」

「そ、そんな事ないですよ! 全然友達いないですし。極めて仲良い人っていっても2・3人くらいですかね?」

「そ、そうか。ま、まぁ友達は量より質だから、いいんじゃないか?」

「ですね!」

「まぁそーゆー事で、スマホ買いに行くのは決定な」

「わかりました!」


 スマホ買いに行く事が決定したまではよかったが、なんか精神的に疲れたんだが。

 今の会話からも愛咲って闇抱えてる感じがビンビン感じるんだが。

 もしかして、いじめられてる?

 ……いや、これだけの会話だけでいじめと断定するのもだめか。もう少し様子見てからだな。


「そんじゃ、飯食って風呂入ってこい。俺はもう寝るからよ」

「えっ? もう寝るんですか?」

「明日も仕事だしな。どうかしたか?」

「もう少し、お話したかったぁ〜って」

「……ご飯食べてる間だけだぞ?」

「うん! ありがとっ!」


 愛咲がご飯を食べている間、会話は途切れる事はなかった。

 ご飯も食べ終わり、愛咲がお風呂に入っている間についさっき買ってきた布団を広げる。

 やっぱり毎日ソファーで寝るのは無理があるしな。疲れなんて取れないし流石にそれはまずい。

 今日からぐっすり眠れる、そう思いながら俺は眠るのであった。





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

社畜な俺とアイドルになった彼女 〜本物の家族になります〜 こめっこぱん @komekkopan808

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ