第2話・幽霊の噂

「・・・朝か」

カーテンの隙間から差し込む日差しを見ながら、ゆっくりと目を開ける紗沙。

ゆっくりと体を起こし眠気がまだある中、ベッドからゆっくりと出る。

「ふわぁ」

小さなあくびをしながら、洗面所へと向かう。

「おっ、紗沙~おはよう!」

洗面所に到着すると歯磨き途中の父が出迎えてくれた。

「おはよう、お父さん」

親指を立てて歯磨きを再開する父の隣で、自分も歯磨きを始める紗沙。

親子で仲良く歯磨きをする光景、これも日常における”あたたかさ”だ。

「よ~し!歯磨き完了だな!」

白く輝く歯を鏡越しに見る父、そしてニカッと笑う。

(朝から元気だな~)

歯磨きをしながら、鏡越しの父の眩しい笑顔を横目で見る紗沙。

「ご飯出来たわよ~」

「は~い!今行くよ~」

母の声が聞こえてきた、それに答えるように父が返答する。

「紗沙も準備出来たら、来いよ~」

洗面所から出て行く父が振り向き、声を掛けてきた。

紗沙は歯磨き中だったので、鏡越しに父を見ながら親指を立てて返事をした。

歯磨き等を終えて、自室にて着替えを終えた紗沙。

「おっ、準備出来たのか?」

準備を終え、自室を出たら既に朝食を終えた父が家を出る所だった。

「もう仕事行くの?」

「おう、今日も頑張ってくるぜ」

親指を立てて、ニカッと笑う父。

「いってらっしゃい」

微笑みながら、手を振りつつ仕事へと向かう父を見送る紗沙。

「おう、行ってくる」

ガチャ、バタン

ドアを開けて仕事へと向かう為、家を後にする父。

「紗沙、ご飯よ」

リビングの曇りガラスのドアを半開きにして、自室前で立ちつつ

父を見送った紗沙に声を掛ける母。

「うん、ありがとう・・・お母さん」

朝食を食べにリビングへと向かう紗沙、彼女のいつもの朝だった。



「ねぇ、知ってる?最近出没するアレ」

「知ってる、知ってる!確か最近だと体育館裏に出たんだって~」

「マジで~!コワ~イ!」

教室前の廊下で楽しそうに立ち話をする女子生徒2人。

その会話を聞いていた教室の窓際の後方の席に座る紗沙と

その前の席に座る明里。

「アレか~、最近噂になってて凄いよね!」

紗沙がいつも飲んでいたジュースを登校時に購入し、それを嬉しそうに

飲みながら話す明里。

「アレ?」

紗沙が廊下から聞こえてきた会話の内容について詳しく知っているであろう明里に

聞き返す。

「そうそう、アレ!つまり幽霊ね!」

明里が得意気に人差し指だけを天井に向けながら話す。

それは、最近学校の敷地内で度々目撃される”和服の少女”の噂だった。

「幽霊なの?それ」

紗沙は得意気に話す明里に質問した、明里は待ってましたっと

言わんばかりに答え始める。

「そう!一瞬で消えたり、気が付くと居なくなっているんだよ!」

明里は目を輝かしながら楽しそうに話す。

「しかも!授業中や放課後の校庭や体育館でも出没したんだって!」

「そうなんだ・・・」

テンションが違う2人の会話だが話している話題は同じだ、こういう会話の温度差を

常に感じる紗沙は相手に対し、空気を合わせられない事を申し訳なく思うのだった。

「・・・これが”和服の少女”の噂だよん!」

気が付くと、いつの間にかちょびヒゲを付けて噂を熱く語っていた明里の話が

幕を閉じていた。

「・・・ありがとう、明里」

「どういたしましてだよ!」

微笑みながらお礼を言う紗沙と元気に返答する明里、テンションに天と地の差がある2人だった。

ガラガラ

「おい、お前ら席に着けよ~」

教室のドアを開け、先生が入って来た。

「あっ、先生だ!」

気が付くとお昼休み時間が終了していた、明里は急いでちょびヒゲとジュースを鞄に

しまい込む。

他の生徒達も急いで自分の席へ着席したり、授業の準備をしたりしていた。

(・・・和服の少女か)

そして午後の授業が始まる中、紗沙は噂の少女の事を考えていた。

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二人の心 瑞希 綵 @ayanosora

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