エピローグ
──5年後。
僕たちはとある墓地に来ていた。
「泉咲麗子」の名前がある墓の前に立ち、花を筒に差し込み、お線香を上げる。隣にいる彼女は、静かに目を閉じて手を合わせた。僕もそれに続く。
僕は今、とても幸せだ。こんなの、中学生の頃には想像もできなかった。
君が僕にくれたものはとてつもなく大きくて、感謝してもしきれない。もう、お礼をすることもできない。
だからせめて、毎年君の命日に、ここに来ることにしたんだ。
──ねえ、君の思いは、誰かが伝えるべきなのかな?
返事が返ってくるわけもなく、目を開けると、彼女が笑顔でこちらを向いていた。
「じゃ、行こっか」
「そうだね。ここ砂利道だから、気をつけて歩こう。……もう君だけの身体じゃないんだから、さ」
「あはは。そっちもね」
僕たちは、手を繋いでゆっくりと歩き出した。
君は、僕の中にいる。それはきっと、心臓を移植されていようがいまいが関係ない。
僕が生きている限り、君は僕の中で生き続けるだろう。
どくんどくん。
僕の心臓は、今日も高鳴る。
君は、僕の中にいる 千代田 晴夢 @kiminiiihi
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