寿命コーディネーター

結城彼方

寿命コーディネーター

 俺の仕事は寿命コーディネーター。死にたい人間から寿命を奪い、長く生きたい人間に売りつける。それが俺の生業だ。

 今日は“買い”の仕事。決して気持ちの良いものでは無いが、これも仕事だ。待ち合わせ場所は夜の静かな公園である事が多い。売り手は最後くらい静かに安らかに逝きたいだろうし、俺も人気が無いほうが助かる。

 そうこうしている内に売り手がやって来た。年は35歳くらの女性だ。寿命を売りたい理由を話すかどうかは売り手に任せているが、今回の売り手は話したいワケがあるようだ。

 聞けば大学卒業後、今のB社に長い間勤めてきたが、劣悪なブラック企業で精神的に限界が来て退社したらしい。そして劣悪な環境から脱出し、冷静さを取り戻して彼女は気づき、絶望したそうだ。彼女が本当に望んでいたものは、家庭を築くことだったこと。そしてその夢の実現が今の年齢からでは難しいこと。

 話を聞いた俺は彼女に尋ねた。「本当にいいですか?」彼女は涙を流しながら頷いた。俺は彼女の手を握り、残りの寿命を奪い取った。彼女は眠るように死んでいった。

 翌日、俺は“買い手”と会う予定があった。買い手との待ち合わせ場所は昼時のカフェである事が多い。そして今日会うのは新規の顧客。しばらく待っていると買い手がやって来て自己紹介を始めた。


「どうも!B社で代表取締役をやっております黒山です。」

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寿命コーディネーター 結城彼方 @yukikanata001

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