第7話 もう迷わない

「大丈夫でしょうか?」

一人の男がおばあさんがバックから落とした食材などを拾いあげている。

僕もそれに続いていくつか拾い上げる。

「衛生面では、まだ問題ないと思います。」

そう男はおばあさんに言うと、僕の方へ戻ってくる。

「あの方の食材には、少し手を加えたので問題ないですよ。ついでにその重さも。」

そう小声で僕に言う。どちらも僕が気にしていたところだった。

「少し意外だな。あなたは、もっと周りを見ずに気ままに行動するのだと思っていた」

何より自分を優先し、他人の不幸なんて関係ない。例え人の心にも土足で暴れるようなやつではないのか。

「それは違いますよ。確かに俺は自分の自由に基づいて行動するが周りを見ないわがまとは違う。他人にも気を遣うさ」

似合わない言葉を言う。

「今日は、君の門出です。それを見届けるのもその証拠です」

そう今日は、僕の旅立ちの時。まあそんなことを言えば聞こえはいいが実際は家出だ。

リベルの話を聞いたあの後、僕がしたいことを見つけた。元から頭の中にはあったのかもしれないが、リベルに会わなければ行動しなかっただろう。

それは親元を離れ、勉強をし会社を作ること。幸いか経済知識、コミュニティ力、そしてお金など必要な物は全て持っている。親の行動も盗みまがいなことをせずとも僕が目を光らせとけば迂闊に行動が難しくなるはずだ。そしていずれは

「親の会社を引き継ぐ?」

それを話したあの時、リベルは聞き返した。

「そう。両親は、闇商業の隠れ蓑として表向きの会社があるんだけどそっちを乗っ取って大きくさせる。そうすれば闇商業なんていらなくさせることができる思う。」

それを聞いたリベルは、腹を抱えて笑いながら

「いいなぁ、そいつは自由だ」

もう一度言うが、これはリベルがいなかったらこと。もしかしたら、いやきっと僕は囚われ続けていただろう。

だが、こいつは自由があるということを教えてくれた。

「最後に一ついいか?」

「ええ、なんですか?」

もうリベルと会うこともないかもしれない。なら最後に気になることがあったのだが、どうやら快く承諾してくれたようだ。

「リベルは、実は女性なんじゃない?」

そう言うとリベルは、一瞬だが心の動揺が見れた顔をした、気がする。最後に少し仕返しができただろうか。だが、すぐに元に戻ると

「それは違います。正解は、どっちもです。 自由なものに性別もありませんよ」

一人称がたまに変わっていたのはそういう事かと納得すると電車が到着する。

「じぁ僕は、いくよ」

親には、今ある僕の考えを書いた手紙を置いてきた。もう後に戻る気はない、前に進むだけ。

「楽しみにしています」

リベルは、そう言うと消えていく。多分周りには存在すら認識されていないのだろう。それくらいはできそうだ。

リベルは、僕の話を自由だと言った後にこういった。

「俺は「寿命」が無いから縛られないと言った。つまり、無限ではないが時間がある生きている今は、みんな『自由』なのさ」

僕は、その言葉を聞いて安心した。

何故なら僕も自由な存在だから。

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