第6話 迷路ー崩壊

空に立つ。当然、初めての経験だった。

こんなことは二度とない、と言うよりリベルしかできないだろう。これは原理などないのない正真正銘の不思議な力。こんな力が僕にあれば、多分ハッキリと決めることができる気がする。そんなリベルの力を羨ましく思う自分がいた。

「俺は自由になれる素質がある。なんだと思う?」

何の前置きも無く急にそんなことを聞いてくる。多分リベルは、そういう奴なんだといい加減に慣れてきたため勝手に納得する。

「そんなの……」

性格、そういい出そうと思ったが寸前で引っ込む。恐らくリベルは、人間とは別の生き物だ。

にわかに信じられないが一瞬にして浮く、人の記憶を忘れさせるなんてものを見せられたらそう納得するしかない。

夢だと言われた方が信ぴょう性があるくらいだ。

では何者なんだろう。見た目は、人間そのもので角も尻尾もない。僕が知っている化けの中で当てはまるのは、

「答えは『時間』、そしてリベルはヴァンパイアなのか?」

「エクセレント!が惜しい。最初は、正解で2つ目は不正解です。まあ私は、最初が聞きたかったのですから良いでしょう」

楽しそうに笑いながらリベルは答える。

「そう『時間』です。人間には、解くことができない縛り。私には永遠の時間を持っています。不老です」

「さて、『時間』という縛りを持つ人間のあなたは、何ができるでしょうか?考えられますか」

これには、さっきよりも要点を得られない。これがリベルの言いたい『自由』なのだろうか。

僕は答えることが出来なかった。

「答えは『行動』です。今のあなたには答えることができないと思っていました」

その圧に思わず身震いする。いつの間にかこの状況も忘れ、ただリベルの話の真剣に聞いていた。

「行動をしなくては何も起きない。あの盗みを見ましたが、あれは本質的には何もしていない。それはあなたにはわかっているのではないですか?」

ずけずけと土足で核心へと入っていく。これが的を得ていると自信を持っているのだ。

僕も分かっていたのだろうか。これしかないと目を逸らしていたのでは無いのか。

あれは、現状からは一歩も動いていないことに。ひたすら現実を変えようとせず勝手に変わると期待をして、そんな中身のないことをひたすら行って自分を傷つけていた。

「この場所からは逃げることは出来ないのだから、一度腹を括って自分に聞いて見てもいいんではないですか?」

リベルは、僕に近づいてくる。そしていつの間にか下がっていた僕の顔を無理やりあげた。

「最後に私から言えるのは、『自由とは視界が広い』こと。選択肢に障害は、実はないのです。」

僕の目には、リベルと何も無い広々とした空が映っていた。

夜明けが近いのか青と黒が重なりその景色に思わず感動する。

この時間が自由なのだと勝手に思ってしまった。

なんて素敵なんだろう。

これになりたいと僕は強く一歩を踏み出す。そんな気がした。

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