「用向きを伺いましょう。お受けするもしないも、それ次第」

 じっとりとした時代小説や、伝奇小説のような雰囲気を持つ一作です。
 物語は、日比谷稲荷近くの源助長屋に、おそろしく当たる八卦見がいると聞いて尋ねた一人の男を中心にして始まります。
 助六と名乗る男の妙に妖しい魅力を孕んでいるところや、作品全体をじっとりと覆っている湿った空気、こういう時代の長屋という場所に漂う程よい不潔感がしっかりとした筆致で描かれていて、読んでいて世界にぐっと引き込まれます。
 色鮮やかな描写や、なまめかしい描写、そして、タイトルにもなっている「蛞蝓うらない」がどのようなもので、一体助六と名乗る男は何者なのか、彼の元を訪ねた武家の男はどんな目的だったのか……。
 作品を読んで楽しんで欲しいなと思います。
 ジメジメとして暑い季節に読むと、ちょっと涼しい気持ちになれる作品でした。

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