【過去編】永遠の夏⑰

Side 空



「お疲れ様でした!」


「はい、お疲れ様」


21時にバイトが終わった。


明日は、また先生とのダンスの練習の日だ。


僕は、意気揚々と帰宅の道を辿っていた。



「すいません、道を教えてください」


人通りの少ない通りに出たところで、道を聞かれた。


マスクをして帽子を被った男の人だ。


「あ、はい、どこに行きたいんですか?」


そう言うと男はポケットに手を入れ、紙を取り出した。


でも、それは地図じゃなかった


―大人しく付いてこい。


そう書いてあった。


一瞬理解できず固まっていると、紙と一緒に取り出したであろうナイフをチラつかせてきた。


「いいな?」


男は小声で言った。


僕は恐怖のあまり、震えながら小さくコクコクと頷いた。



僕は、そのまま、近くの古びたホテルに連れ込まれた。


その人は既に部屋を取っていたみたいで、そのまま部屋へと押し込まれる。


途中何度も逃げようとしたけど、腕をつかまれていたことと、ナイフを持っているという恐怖が、それをさせてくれなかった。


部屋の鍵をかけると、その人は僕を乱暴にベッドに押し倒した。


ベッドの周りには複数のカメラが三脚に固定されて置かれていた。


僕は、自分でもびっくりするくらい身体が震えていた。


「ひさしぶりだね」


その人はそう言いながら、マスクと帽子を外した。


最初は誰だかわからなかった。


「あれ、忘れてしまったかい?ひどいなぁ。あの日、君のお父さんと一緒にいた男だよ」


「あ、ぁあ…っ」


そう言われてハッとした。


あの日、僕の身体を撮影していたカメラ男だ。


葬った筈のあの夜の記憶が蘇り始める。


「ふふ、思い出してくれたみたいだね。嬉しいよ。探したんだよ、空くん」


その人は不気味に笑う。


「やっ、こ、来ないで…っ、家に、帰らせて…っ」


「そんなに怯えないでよ、ハァハァ、相変わらず可愛いなぁ。この日を待ちわびていたよ。君の身体を思い出して何度も抜いたんだからね。カメラ、きみが壊しちゃったらしいね。きみの可愛らしい裸がもう見られないと思うととてつもなくショックだったよ」


その人がゆっくりと近付く。


怖いよ


助けて、先生

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ピーナッツバター はる @reoreomonster

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ