第9話 『万引き犯じゃァァァ』
「それじゃあ、改めて店内の見張りをしますか」
「ああ、そうだな」
気持ちを切り替えた二人が一斉に振り返ると、入り口からすぐのところに、迷彩服を着た男が匍匐前進して店内に入ってくる様子が見えた。
「かしら? 見ましたか?」
「ああ、見た。幻覚じゃないよな。サイタマ」
「山田です。俺はヒーローじゃありません。それよりも……」
二手に分かれ、迷彩服を着た男が入っていった棚から挟み討ちにする。
二人が手で合図をしながら、ゆっくりと匍匐前進をする男を見ると、男の背中には迷彩柄のエコバッグがあり、そこに大量の武器が詰め込まれている。
そして男はバレているとも知らずに、店に並べられた手榴弾をエコバッグの中に詰めていく。
万引き犯を見つけた二人は合図をし、同時に飛び出した。
「さぁ、見つけたぞ、万引き犯! 観念しろ!」
アキラの声に反応し、迷彩服の男は体をびくつかせる。
そして挟まれているのを確認すると、観念したように立ち上がった。
「ありゃりゃ〜、見つかっちゃいましたか〜」
男はヤクザの二人に比べれた小さくそれにひ弱に見える体付きをしている。
やる気のなさそうな顔をしているが、顔は整っていてハンサムだ。
「それで俺を見つけてどうするんです?」
迷彩服の男はエコバッグを手にフラフラと立っている。
しかし、向いている方向は出口、アキラのいる方向だ。
「そ、そりゃ〜、警察に……」
「ヤクザのお兄さんが何言ってるんですか? それにこの店は非合法。警察はまともに動きませんよ」
それを言われたアキラは後退る。しかし、店内の古びた懐かしみある風景を見て、男を睨んだ。
「ああ、そうだな。だから俺がこの店を守るんだ。この店はあの婆さんの店だ。あの婆さんの店で悪さをするやつは俺が許さねぇ」
アキラは拳を握りしめる。
アキラの姿を見たスキンヘッドは感動しながら、アキラの意思に添えるように背後からの男の退路をしっかりと潰す。
アキラの表情と行動を見て、迷彩服の男は呆れたように言う。
「あ〜あ〜、めんどくさい人たちだな〜」
そして男はエコバッグを振り回し、そして空中に投げ飛ばした。
「な! あの中には……」
「大量の爆薬だよ……。守れるものなら守ってみなよ」
男は嫌な笑みを浮かべる。
一つ二つの爆発なら何故かこの店ならば耐えられる気がする。しかし、サンタクロースの袋並みに詰め込まれた爆発は、流石にこの店を吹き飛ばしかねない。
「ウォォォ!!」
アキラは走る。走る。エコバッグに向けて、しかし、それを分かっていたかのように、迷彩服の男は前に立ち塞がろうとする。
男を倒すのは容易に感じる。しかし、倒してからではエコバッグが地面にぶつかってしまう。
アキラの迷彩服の男がお互いに手の届く距離に近づいた時。突然迷彩服の男の姿がアキラの視線から消える。
「こんやろ! あなたは爆弾を! 俺がこいつを止めます」
それはスキンヘッドの男の声。スキンヘッドが迷彩服の男を殴り、足止めをしてくれたのだ。
アキラはその隙に2人を通り過ぎ、そしてギリギリのところでエコバッグをキャッチした。
「あ、危なかったぜ」
ギリギリのところでキャッチできたことで、二人は安堵する。
「ええ、良かった…………ってあれ!?」
しかし、スキンヘッドの男が爆弾に気を取られているうちに、いつの間にか迷彩服の男は姿を消していた。
「すみません。俺のせいで奴を逃しました……」
「良いんだよ。この店を守れただけで」
万引き犯は逃したが、この店を守れた。それだけで二人には達成感があった。
そんな二人の前に一人の男が現れる。
「オウ? ナンですか、コレ? ご飯ですか?」
それは表で客引きをやっていたジョナサンだ。お昼が近づき休憩に来たようだ。
「いやコレは爆弾だ。触っちゃ……」
アキラが説明する前にジョナサンはエコバッグを手にする。
「チョウドお腹ガ空いてたンデス」
そう言うとジョナサンはエコバッグに入った大量の爆弾を口の中に放り込んだ。
「え……」
そしてジョナサンが齧ると同時に、辺り一面は吹き飛んだ。
【後書き】
ジョナサン!! 何やってんだ!!
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